第13話 文化の町バロスビー
若さゆえか、バロスビーの町中に入ると、二人は疲れを忘れていた。
「着いた着いた着いたぁー!!」
アルが喜び叫ぶ。
「やったねっ!!」
珍しくレネオも一緒に叫ぶ。
バロスビーの町はモーブルとはだいぶ雰囲気が違っていた。
町は壁で囲まれおり、入り口には衛兵が立って、町に入る人々を確認している。
アル達はザレア村の村人章を見せ、中に入れてもらった。
町に入り最初に目を引いたのは、幅が広く、
さらに、整然と立ち並ぶ建物は、色や形に統一感があり、一つ一つが石造りで大きかった。
「道も広えし、家もでかいし、なんて言っても人の数がすげえな」
道行く人たちが多いことにアルは息をのんだ。
よく見ると、人間以外の種族もときどき混ざっている。
「あれは人間じゃないよな?」
「ほら、失礼だから指を差さない。あれはドワーフだよ」
レネオはアルの腕を持って下げると、小声で言った。
ドワーフは人間でいうと子供のような身長だが、骨格は太く人間より筋力と生命力が高い種族である。
顔には大きな髭を蓄えて、一目で人間以外の種族の成人だとアルは分かった。
「グレスリング王国は人間が作った国だけど、王都やウォルテミスみたいに大きな町へ行くと、人間以外も結構住んでるみたいだよ」
「へえ、そうなんだ」
アルはレネオの知識に関心しながら、他にも他種族がいないか見回してみた。
町を歩く人たちは、種族だけではなく同じ人間でも多種多様な人たちがいる。
装備を見れば冒険者と分かる人たちもいれば、派手な色の服装をした女性の集団や、全員同じ柄のローブを着た人たちもいる。
アルにはそれらの人たちが、どんな人たちなのかまったく想像できなかったが、物珍しそうに見入っていた。
「そんなことは後回しにして、まずは冒険者ギルドを探そうよ」
初めての町に浮足立ってるアルを、レネオは歩くよう
「あ、ああ、そうだな。まずは冒険者登録してえしな」
二人は町の入り口から繋がっている、大通りに沿って歩き出した。
通りの両側にはたくさんのお店が軒を連ね、中にはアル達の知らない
食事がとれるお店では、テーブルが店内だけではなく外にも設置されていて、青空の下で食事をしている姿は、二人にはとても優雅に見えた。
花を売っているお店も何軒か見かけた。
店の前を通ると花の香に全身が包まれ、花が似合う町並みと合わさって、まるで異世界に来たような心地になる。
「思い出した! 文化の町バロスビーだ!」
レネオがいきなり声を出した。
「なんだよ急に。文化の町って言った?」
「そう、この町は文化の町って呼ばれてるんだよね。だからこういう刺激的な雰囲気なんだ!」
レネオは思い出したことを嬉しそうに語った。
「絵画、音楽、工芸品とか、文化を愛する人たちが集まる町なんで、そう呼ばれるようになったんだよ!」
「ふうん」
アルは分からない単語を並べられたので、気のない返事をした。
「吟遊詩人みたいな人も多いなとは思ったんだよね。色んな文化を受け入れる寛容さもここの特徴だって聞いたことある。あと、芸術家を志す人のための学校が、王都以外にはここしかないって話だよ」
アルの反応の薄さを気にもせず、レネオは語り続けた。
そういえば冒険者を目指す前、レネオがよく絵を描いていたことを、アルは思い出した。
もし冒険者を目指してなかったら、レネオはきっとその『芸術家』ってやつを志したのかもしれないな、とアルは話を聞き流しながら思った。
「ねえアル、聞いてる?」
「そんなことは後回しにして、まずは冒険者ギルド探そうぜ」
聞いたことがあるようなセリフをアルは返した。
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