第3話 依頼先
「はいっ。こちらが貴社の一年分の財務データと総支出歳入情報になりますっ」
「うそ」
お相手の企業の担当のひと。イケメン。びっくりしている。
「一年分の、ですよ?」
「見ていただければ分かると思いますっ」
担当のひと。データを確認して、余計にびっくりしている。
「え、だってこれ、一週間前に渡した案件」
「がんばりましたっ」
ええと、あと。なんだっけ。あ、そうだ。
「あの。よければこのあと、個人的に」
「受けかねますっ」
仕事の依頼は断る。
ん。
「あれ。個人的に。いま、個人的にって言いました?」
「あ、ああいえ。なんでもありません」
「いえいえ。上司から言われているのは仕事を受けるなという部分だけなので」
「あ、えっと。この速さだと過去十年分のものもお願いしようかな、なんて」
「受けかねますっ」
犠牲。そう。犠牲担当の犠牲は、わたしのことじゃない。わたしに出会った、相手が犠牲になるという意味。
「そうですよね」
イケメン。しょんぼりした顔。
「で」
その顔に、わたしの顔を近づけて。
「個人的な、なんですか?」
もしかしてごはんおごってくれるの。ごはん。三人で行くよ。めちゃくちゃ食べるよ。
「いや、違ってたらすいません」
イケメンの口から。
昨日やってたゲームの名前が、出てくる。
「え」
「やって、ます、よね?」
「え。え、え?」
「あの、走り方とアクションが、たぶん。いや違ってたらごめんなさい。昨日マッチしたプレイヤーとあまりにも同じだったもので」
「あ、ええと。いや、その」
どうしよう。なんか雰囲気が違うぞ。
「よければこのあと、個人的に、マッチをお願いできればと」
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