煙と依存

 本来、ドッグタグというものは、軍人の戦死報告用として扱われるものだ。それをまだ生きているうちに自分のタグを他人に託すなど、本来の用途を知らない愚か者だと言われるだろう。


 だが戦争が終わったその日に、必要ではなくなる物だと言うのは理解していた。同時にそれは、別れを意味していた。だからこそ彼は異国の地へと帰るその者の手に己のタグを握らせた。


「これをいつか返しに来い、それまで待っててやる――」


 ドッグタグ。犬の札とはよく言ったものだ。タグに繋がる細いチェーンを弄びながら、これが二人を繋ぐ鎖になれば良いと思った。犬の帰巣本能とやらにも期待した。だが、その数年後。託したタグをぶら下げてきたのは、衰弱し、疲弊した、まだ幼い子どもだった。


『今度は俺が預ける』


 そんな走り書きのメモと共に。

 その子どもの名は、ナオトと言った。



 ゲネラールはビル街が並ぶような都会的な街並みでありながら、御伽噺のような能力を持つ者が増えた事によって、街の姿がアンバランスにも映る。自動車が行き交う道路の頭上で、羽根を広げた少年が自由に飛び回っていたりするのだから。郵便物を届ける為に二輪車を乗りこなす者もいれば、テレポートを使って届け物をその場に置き去る者もいたり。クレーン車で持ち上げなくてはならないような事故現場でも、大破した車をひょいと片手で持ち上げてしまう者もいる。


 しかし、そのどれもが違和感なく溶け込める程には、人々の生活に寄り添ってきたのがマインドと呼ばれる“不思議な”力だ。


 その力が、戦時中に見付からなくて本当に良かった。と、ユースは星冠軍事警察本部の廊下から街並みを見下ろしながら、思う。


 一見平和なこの国は、ほんの数十年前まで紛争があちこちで行われていた。その傷跡も瞬く間に薄れていったのも、その後各地で発見されたマインドのお陰だと思うと皮肉なものだ。ある意味タイミング的には奇跡だったのだ、争い後、復興作業で忙しない日々を送っていた人々にとって、マインドという力はまさに神からの贈り物だった。だからこそ、この国はマインド使い達の受け入れが早かった。能力に目覚めた者達を収集し、教育し、研究し…、ユースの甥であったレイ、そして知人からの預かりものであるナオトもその対象だった。


 レイは夢に押し潰され、友人と恋仲に深い傷跡を残してくれたが、どうやらそろそろ立ち直れる時らしいと先日のナオトの様子を見て察する。


 それでいい。いつまでも死人に囚われている生き方はしてほしくない。ユースもまた身内であるレイの死に対して何も思わない訳では無い、そもそも現在の立場を望んだのも元はと言えばレイやナオトの為だった。神からの贈り物、なんて綺麗な表現こそしたものの、やはりマインドは何の力を持たない者からすれば畏怖すべき能力であることには違いないのだ。


 各々が能力を持つ、星冠能力専門部隊。


 彼等はどんな事件も一度は軍警本部を通さなければ捜査に入る事も許されない。彼等の力は強大である、扱いには慎重にならなければならない。故に、その判断を任されたのがユースが現在所属する能力管理課だ。ここで許可が降りなければ能力専門部隊は何もする事が出来ないが、逆を言えば、何かトラブルがあれば、その責任を代わりに負うのが管理課の仕事のひとつである。


 可愛い甥が何かやらかした時には守ってやれる、そんな立ち位置だったのだが――、


「笑えんな」


 思わずそんな言葉が漏れる。


 先日大量の仕事を能力専門部隊本部に投げてきた。そう望んだ馬鹿がいたからだ。その馬鹿も最近では何処か吹っ切れたような顔をしている。恐らく、その近くで見守っているナオトのお陰だろうが。


 ユースは窓から視線を逸らし、正面へと向き直る。何処か遠くで、カラン、と、木の板がぶつかり合うような、独特な音を聞いた気がした。





 キラキラキラ。


「………」


 キラキラキラ。


「……あんだよ」


 もごもごと二つ折りにした紙をくわえながらナオトは、此方へと熱い視線を送るイービルを見た。イービルのその赤い瞳は、純粋な少年そのものの輝きを放っている。


 星冠能力専門部隊、本部室。現在絶賛休憩時間中。


 本来この部屋に居座る立場ではないイービルも何故かそこにいた。今日は特に説教する事もない筈なのだが、暇を見付けては入り浸っている。問題児である彼から目を離したくはないので、直属の上司であるナオトにとっても都合が良くはあるのだが。丁度刀の手入れをしていたナオトを見つけ、好奇心旺盛な少年の心を揺れ動かしてしまったのは想定外だ。熱視線が中々に鬱陶しい。


 因みにスピリアは自分のデスクで優雅に珈琲を飲んでいる。視線だけは二人に送っているが、会話に参加する気はないらしい。


「なっ、副部長っ! なにそれなにそれっ? 耳かきみたいなやつっ」

「……打ち粉だよ」


 無邪気な少年の質問に面倒そうに答え、ナオトはぽむぽむと刀身に打ち粉をかけた。慣れたその手つきに、イービルはまたキラキラと目を輝かせる。


「格好いいっ!」

「ありがとよ」


 そしてナオトは打ち粉を終えると、拭い紙で刀を拭う。錆や疵がないかをチェックした後、刀身を鞘に納めた。かちんと鍔鳴りが響く。ナオトにとっては何でもない行為だが、そのひとつひとつに目を輝かせて一々反応をしてくるイービルは可愛らしくもあり、幼さもある。イービルも年頃の男の子だ、見慣れない武器の一つや二つに憧れを抱くのも無理はない。それ故に、次にイービルの口から飛び出てくるであろう言葉を予想して、ナオトは口にくわえた紙を取り顔をしかめた。


「なっ! ちょっと触らせてっ」

「駄目だ」


 予想通りだ。ナオトはその言葉をずばっと切り捨てる。

 えーっ!? とふてくされる子供を尻目に、ナオトはハァ、と溜め息を吐いた。イービルは片頬を膨らませ、座ったままぴょこぴょこと飛び跳ねて騒いだ。


「いいじゃんっ! 俺もう大体の武器の扱い方は教わったんだからっ!」

「そういう問題じゃねぇんだよっ」


 確かにイービルはまだ子供だが、軍警部隊の一員として武器の教育は受けている。それはナオトもわかっているし、「まだ子供だから危ない」という理由で武器を持たせない訳じゃない。


「これは特別なんだよっ」


 ナオトは刀を抱え込むようにして言った。その言葉にきょとん、とイービルは目を丸くする。


「特別?」

「……そうだよ。形見なんだ」


 え、と“形見”という言葉にイービルは思わず声を漏らした。刀を大事そうに抱えるナオトの目は真剣だ。決してふざけたり冗談で言っていないことがわかる。


「……俺の、師匠のな」


 そしてそうナオトは言葉を続けた。その目はとても悲しげだった。流石にイービルももう「触らせて」とは言えなくなる。


「副部長……師匠がいたんだ?」


 代わりに別の質問をした。

 イービルもナオトがかつてユースの元で暮らしていた事は知っていたが、それは初耳だったからだ。


「そ。前にもお前にゃ言ったよな?俺も孤児だった、って」

「うん」

「ユースさんの所に預けられるまで、俺の面倒を見てくれた人がいたんだ。たった二年だったけど」


 ナオトは静かに刀を見つめる。彼の戦闘スタイルは怪力の能力の事もあり、主に格闘だ。しかし、常に腰に下げているその刀の腕も一流だ。滅多な事では抜かないが。その腕を鍛え上げたのが、その『師匠』だという。


「俺に生きる術を教えてくれた人」


 そうナオトは続ける。自然と、ナオトがどんな少年時代を過ごしたか、イービルにもわかった気がした。己も『悪魔みたい』と呼ばれ続けた身だ。きっと、ナオトも平和ではなかったのだろう。


「でも……その人、死んじゃったの?」


 形見、と言うくらいだから。と、表情を暗くしてイービルはナオトに問い掛けたが、ナオトはさほど気にしていない様子で直ぐに答えた。


「いや、それがな、実は良くわかってねぇんだ」

「え」


 先程自分で『形見』と言っときながら、わからないとはどういう事だ。と、イービルはそう言いたげに顔をしかめた。それに気付いたナオトはハハ、と渇いた笑みを漏らす。


「天照、っていう国の名前くらい、聞いたことあんだろ」


「うん。だってそれ、副部長の持ってる刀で有名な国でしょ」


 イービルはナオトの刀を指差し、それくらい知ってるよと呟く。


 日ノ国、天照。和を愛する国。キモノと呼ばれる民族衣装を纏い、ナオトが持っているような刀で斬り合う、所謂チャンバラのイメージが孤児院育ちであるイービルにも植え付けられている。だがそれ以上の事は知らない。スシにテンプラ、あとゲイシャ? と答える事は出来るくらいだ。


「そこは俺の故郷でもあって、軍事国で」


 ナオトはイービルにもわかりやすいようにと思ってか、言葉を選びながら天照の事を教えていく。


星冠ゲネラールみたいに、マインド持ちに優しくない国だったから、俺はこっちに来たわけ」

「うん……?」

「能力持ってると、自分がモノ扱いされちゃうっていうか」

「え、やだ」

「だろ?」


 直ぐには理解出来ずに首を捻ったイービルだったが、モノ扱い、という言葉を聞いて瞬時に嫌悪を顕にした。その事に安心してか、ナオトもははっと笑う。


「だから、俺の師匠は星冠に行けって言ってくれたわけ。でも師匠はまだ天照にいるから……、手紙も出せる状況じゃねぇし、そもそも天照は閉鎖的な国だから、連絡手段もなくて」

「だから生きてるか死んでるかもわからないの?」

「そういうこと」


 よく出来ました、とイービルの頭を撫でる。思ったよりもふわふわとした指通りの良い赤毛に擽ったくなる。イービルには言えない事実もあるが、少年の好奇心を満たすにはこれくらいで良いだろう。その時に託されたものだとか、己の師は命懸けで助けてくれたのだとか、友との出会いも……今は語らなくても……いずれ。


「な、副部ちょ…」


 暗くなってしまった空気に、話題を代えようとでもしたのか。明るい声色でイービルが口を開いたその瞬間、


 ――ジリリリリリリリリリリリリリ!!!


「うひゃあっ!?」


 耳を塞ぎたくなるサイレンが施設内に響いた。実際まだ聞き慣れていないイービルは思わず耳を塞いだが。


「なになになにっ?!」


 あたふたするイービルとは違い、この施設の責任者でもある二人は冷静に動く。ナオトは刀を腰に差しいつでも出れるようにし、スピリアはデスクに備え付けの内線器の受話器を上げた。


「何事だ」

『それが――、』


 受話器の向こうが慌ただしい。どうやら向こうも状況を判断出来てないようだ。


『し、侵入者、です――』

「侵入者……?」


 ここは能力専門部隊とはいえ、犯罪を取り締まる組織であることには変わりない。しかも特殊な能力を扱う者達が集まる場所だ、戦車の一つや二つぶち込まれても返り討ちに出来ると冗談が苦手なスピリアでさえ思うのだ、何故よりにもよってこの場所に?


 ――火に飛び込む虫、いや、そんなものでは可愛い。地雷だとわかって踏み抜きに来たのか、まさか自殺願望者か? 有り得なくもない話だが。自暴自棄になった者がわざわざ捕まりに来る話も珍しくもない……、


 スピリアが思考を巡らせていると、部屋の扉がバァン! と荒々しく開かれた。開かれた、というより、蹴り破られた、の方が正しいだろうか。


「……何者だ」


 スピリアはデスク越しにその侵入者を睨みながら、デスクに置かれた黒の指抜きグローブを手に取り左手にはめる。スピリアの指先でパチリ、と静電気が音を立てた。もしもの場合に備え、スピリアもまた『戦闘体勢』に入ったのだ。


「………」


 侵入者は、見た事のない長身の男だった。


 印象深い黒の着物に、白の羽織りを肩に掛けている。長い髪は後頭部で緩く結ばれており、扉を破った時の風で揺らめいていた。


「さむらいだ」


 イービルがちいさな声で言った。

 その男は扉の前で仁王立ちしたまま、何も言わず部屋の様子を見渡している。そして、


 カランッ


 と特徴的な靴音を立てて、部屋の中へ一歩踏み出した。その靴音は喧しいが、決して不快ではない、規則正しい音色に風情さえ感じる。

 さむらい。イービルの言葉が笑えない話になってくる。あまりにもタイミングが良い。二人が天照の話をしていたものだから、それが具現化したのかと思う程に。よく見れば、謎の男も帯刀している。


 まさか――と答えを出す前に、その男の視線が、ナオトの所で止まった。


 そして、

 物凄い速さで、ナオトが蹴り飛ばされた。


「ナオトッ?!」

「ふくぶちょっ」


 スピリアと同じく戦闘体勢に入っていたナオトが容易く懐を許すとは考えにくい。ふざけた性格はどうあれ、実力は確かだ。何よりNo.2の実力者なのだから。当の本人は驚愕した二人を尻目に、蹴飛ばされた先でこれでもかと目を見開いている。


 その目は、侵入者である男を凝視していた。


「し、し、し…」


 信じられない、と言うように、そう、幽霊でも見たかのようにナオトは言葉を吐き出した。


「師匠ぉおおおおっ?!!」

「よぉ……馬鹿弟子」


 師匠と呼ばれた侵入者の男は、実に楽しそうに、ニィ、と笑った。


 そして、もう一度。


「ふぎゅう!」


 ナオトを蹴り飛ばす。


「ちょ…っ何を…」


 思わずスピリアが止めようと立ち上がったが、師匠、と呼ばれたこの男、嬉々とした表情のまま逆にスピリアに近寄り顔を互いの鼻先すれすれにまで近付けた。


「なっ…!」

「ふぅ~ん…」


 その近さに思わずスピリアは硬直する。ここぞとばかりに男はスピリアの顔を凝視した。その視線が、なんだか厭らしい。そして、ペロリと自分の上唇を舐めた。


「お前、名前は?」

「は?」

「名前、教えろ」

「す、スピリア……です」


 他人に有無を言わせない態度と口調に、思わずスピリアは答える。それにしても、距離が近い。そう、今にも噛み付かれそうな勢いだ。

 この男。長い前髪を左右に分け、それを揺らし、ニヤリ、と笑う姿が良く似合う。艶めかしい、と、表現すべきだろうか。


 その顔が間近にある――流石のスピリアも顔を紅くする。


「うっきゃぁぁああああん!!」

「ぶっ」


 奇声を上げて男の腰にタックルする勢いで抱きついてきたのは、勿論ナオトだ。不意討ちを喰らった男は短い呻き声をあげ息を詰まらせる。


「らめぇぇえええ!! 師匠らめぇぇえええ!! スピリアは俺のなんですっ、俺のなんですぅうううっ!!」

「ちょ、ナオト!!」


 泣きながら最早奇声に近い叫び声を上げ、ナオトは己の師匠に抱きつく。その叫び声の内容にスピリアは顔を真っ赤にさせていたが。


「ウゼェどけ馬鹿弟子殴り飛ばすぞ」

「ひゃぁああんっ! …この罵声っ…本当に師匠だぁあああんっ」

「だぁああ! 喧しい!! この馬鹿!! テメェは俺が幽霊にでも見えんのか!!」

「ちゃんと足見えますぅぅうっ…うぇええええんっ」

「泣くな!!」


 ごっ


「ふぇえええっ」


 弟子が師匠の腰に泣きながら抱きつき、師匠がその弟子の頭に鉄拳を落としているという場面、貴方は遭遇したことがあるだろうか。


「……」

「……」


 騒がしい師弟のやり取りにスピリアとイービルは思わず無言になる。


 こんな時どうすればいいのか、誰か教えて下さい。(イービル心の声)



「……随分と喧しいな」

「あ、ユースのおっさん」


 その時、開けっ放しの扉の影から姿を現したのは、いつものようにきっちりとスーツを着込んだユースだった。イービルはユースを指差し、無礼にも程がある言葉を吐く。自分とは上司、という立場では済まない程に差がある相手に対して、ここまで気安く話し掛けられるのもイービルぐらいなものだろう。


「イービル」


 バチッ


「ぷみゃっ!!」


 その態度にスピリアは“躾”の意味でイービルの体に軽い静電気を流した。痛さに涙目でぴくぴくするイービルを尻目に、ユースは無表情のまま部屋へと足を踏み入れた。当の本人は、イービルの無礼な態度など気にしてないらしい。


「この騒動の原因はなんだ?」

「ああ…、その、」


 ユースの質問にスピリアはどう答えていいものかと頭を捻らせる。問題ない、と言えば問題ないが、……ナオトの事を思えば、問題ある、とも言えるのだが。ちら、とスピリアは未だに己の師匠に抱きつくナオトを見る。その視線を追い、ユースもまた、ナオトを見た。


「……あ、ゆ、ユースさんっ」


 ユースに気付いたナオトは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を此方に向けた。


 そして、


「へっ」


 呆けた声をあげる。


 ユースがナオトのいる方角へ銃口を向けていた為だ。近くにいたスピリアは勿論、イービルも状況が把握出来ずに固まる。いや、それよりも、ユースは一体いつのタイミングで銃を抜いたのか。スピリアでさえ、目で追う事が出来なかった。


「退け馬鹿弟子」

「ふぇっ…し、師匠っ?!」


 それを見た男はそう言ったかと思うと、無理矢理ナオトを引き剥がし、鯉口を切る。周りがぎょっとする中、対峙するユースとその男だけが平然としていた。


「よぉ」

「………」


 男は挑発するように、軽い様子で声を掛ける。いつでも刀は引き抜けるのだろう状況を保持しながら、歩みを進めて確実に距離を縮めていく。


「俺とヤりてぇの?」

「弾の無駄だ」

「ふぅん…」


 そして、


「い゛っ」


 思わずイービルは目を見開き声を漏らした。二人のやり取りを呆気に取られながら見ていたが、次の瞬間が目で追えなかったからだ。

 気付いた時には、男は一気に距離をつめユースに刀を降り下ろしており、ユースもまた銃のグリップでその刃を受け止めていた。ギギギギ、と嫌な音が鳴り、二人の構えた刀と銃が細かく振動している。


「クククッ…あははははっ」

「………」


 男は刀と銃で間を挟みながらユースを見て、肩を揺らして笑った。ユースは無表情で無言、だったが。


「あははっ……変わってねぇなあ、…“ユース隊長”?」

「……お前もな、“ブシ”」


 そして、男――ブシはもう一度高らかに笑い、ユースは大きな溜め息を、ハァ、と吐き出した。


「……“隊長”? …“ブシ”?」


 きょとーん、とすっかり間抜け顔になったイービルが首を傾げる。それに気付いたナオトは自身も若干呆けながらも、ああ、と言った。


「お前、知らなかったっけ。……ユースさん、元は軍の部隊長。戦場にも出てた」

「嘘っ」


 イービルが驚くのも無理はなく、ユースは普段主にデスクワークをしている人物で、イービルのように現場には滅多に出ない。故に戦場で武器を持っていた、というイメージが沸かなかったのだろう。


「で、ブシってのは……俺の師匠の名前で、師匠は昔、傭兵だったんだと。それで、ユースさんとも知り合ったらしい」

「…そうだったんだ…」


 突然武器を向け合うものだから何事かと思ったが、ちらりと様子を見ると今は互いに武器を納め、普通に会話していた。……あれが彼らなりのスキンシップだったようだ。とはいえ出会い頭で、あんな。二人を良く知るだろうナオトですら呆然とその様子を眺めている。


「此処が何処だかわかってやったのか、お前は。もう少し方法があるだろう」

「派手な方が俺を見付けて貰いやすいかと思ってな。実際、会えたろ?」

「阿呆」

「久し振りだっつのに、相変わらず厳しいねぇ」


 厳しいユースの言葉に、ブシは己の長い髪を撫でながらニヤニヤと笑った。久し振り、とブシが言うように、実際彼らは実に十年以上会っていなかった筈なのだが、まるで昨日も会っていたかのような態度だ。


「死んだ、と思っていた」


 そんなやり取りの中で、ぽつり、とユースは呟く。ナオトが先程話した通り、ブシが生きているのか死んでいるのかわからない状態だったのはユースも同じで、今までブシは死んだものだと思っていたのだ。それ故、今目の前にいる“ブシ”という男に実感が沸かない。そのために先程銃口を向けた、と言ってもいい。ブシという男が生きている事を確認する為に。


 ブシは一度下げた口角をもう一度つり上げ――


「当たりだ。一度死んできた」


 そう、当然のように答えた。


「ふぁ?」


 思わず間抜けな声を漏らしたイービルだが、わざわざ見知らぬ少年に説明するほどブシという男は優しくないらしく。というよりは、切羽詰まっている状況なのか、更に距離を詰めて「匿え」とユースに小声で囁いている。


 ああこれ、深く突っ込んじゃいけない話なのかも。と、イービル少年は漸く察した。ブシと師弟であるナオトはともかく、部隊の下っ端であるだけの自分が聞いてて良いような話じゃない気がする。どうしよう、仕事に戻ろうか、そんな事を思っていると急に背後から手が伸びて、目隠しされた。


「キャァァアアアアアアア!!」

「っ!」

「え、なに?」


 突然悲鳴を上げたのはナオト、息を詰まらせたのはスピリア、そのスピリアに手で目を塞がれ、状況を理解していないのはイービルのみ。理解出来たのは耳から入ってくる状況のみで、布擦れの音と、くぐもった声がしている。でもそれはほんの一瞬。


「じゃあ、よろしくな」


 そんなブシの声がすると、視界を遮っていた手が退けられる。イービルが何があったんだとキョロキョロと周りを見渡すも、スピリアもナオトもイービルと視線を合わせようとしない。何故か二人とも顔が真っ赤である。ブシを見れば、悪戯が成功したような子どものように笑い、己の唇をペロリと舐めた。その唇からは僅かに血が滲んでいる。


「……その舌、余程噛み千切られたいようだな」


 殺気を含んだ声色で呟きつつ、ブシを見上げているユースは動揺こそ感じられるが目撃者二名よりは冷静である。腕を伸ばしてブシを引き剥がすと、乱暴に口元を袖で拭いながら部屋の扉へと向かった。が、二、三歩歩いた所で、ポケットに手を入れ、何かをブシに放り投げる。


「おっと」


 それをブシは右手で掴む。拳を広げると、鈍く銀色に光る鍵がそこにあった。


「俺はまだ仕事があるんだ、先に行ってろ。自由に使って構わない。場所はナオトが知ってる」


 そう早口で言うと、ユースはバァンと激しい音を立てて扉を閉めた。カッカッと靴底が床を鳴らす音がいつもより荒々しく、それが遠ざかっていくのがどうにも可笑しく感じられて、ブシは愉しそうに肩を揺らしている。そしてまだ困惑している様子の三人を見渡し、ナオトに向かって声を掛けた。


「馬鹿弟子、連れてけ。ついでに飯も作れ」

「ええ?! 俺まだ仕事が…っ」

「あ゛?」

「すみませんでした!!」


 己の師匠のドスの聞いた声と睨みに、しゅばっ、とナオトは素晴らしい速さで45℃の角度を保ちブシにお辞儀した。体に染み込んでる教えがそうさせるのだろうか。そのやりとりだけで何となく過去を察する事が出来るので、ブシという男がどんな男か、この短時間でわかったような気がしてしまう。


「ナオト…」

「ごめ、ほんと、ごめんスピリアっ!」

「早くしろ」

「すみませぇえん!!」


 呆然とするスピリアとイービルを置いて、騒がしい師弟二人は部屋を出ていった。


 まるで通り過ぎる嵐のように。



 ___


 けたたましいサイレン音に何事かと駆け付けてみれば、そこにいたのは己の中では最早過去の残り香のような存在で。


「……隊長、か」  


 ユースは、一人ぽつり、と呟いた。


 これからの仕事に身が入りそうにもないと、喫煙所に駆け込んだのは数分前のこと。肺に煙を入れ込んだのは一度だけで、ふうと吐き出してしまえばなんとか気持ちの整理が出来た。そこからは肺まで煙を送り込むよりも、口内で煙を留まらせ弄んでいる。舌の上で苦味を転がしながら、ユースは無造作にポケットに手を入れ、細い鎖を指で絡め取りそれを引き摺り出す。鎖の繋がった先で、ぶらり、と揺れる薄い金属の板。刻まれているのは、己の名前。


 これを、あの長髪の男に預けたのは、もう十五年前になる。


 その頃、隊長という立場ゆえ、国の為に死ねと命令した事は数あれど、


『生きろ』


 と命令したのは、一度きりだ。


 だから己の、大事な“証”であるドックタグを彼に預けた。生きて返しに来い、と。己もそのドックタグが必要な目にならぬよう、生きるから。と。


 そしてそれを返しに来たのは、

 待ち人の刀だけを持った、見知らぬ子供。


 心が冷えた。

 死んだのだと思った。


「ふん……馬鹿が」


 漸く意味がわかった。

 あの子供が、これを持って来た意味が。

 あの男は言った。『一度死んできた』と。


 そして昔、こうも言った。

『例え死んでも、返しに来てやる』と。


 ユースは煙草の先端を灰皿へと押し付けると、一度出口へ向かおうとして、止まる。手の平に残るドックタグを見つめ、強く握り締めた。これを持ち歩くようになってしまったのは、まだこいつが二人を繋ぐ鎖の役割を果たしているなんて、思ってしまっているのか。過去に縋っているのか。何処ぞの片耳のピアスをした馬鹿と同じではないか。嗚呼だからこそ腹が立つのか。辿り着いた結論に反吐が出る。


 それからの仕事に身も入るわけもなく、ユースは早々に帰路についた。定時で上がる彼に珍しいと声を掛ける者もいたが、別に彼も好きで毎日のように残業している訳じゃない。車で送迎するという部下の申し出を断り、昼間見下ろした街中へと自らの足で進んでいく。


 ユースの家は一人で住むには広すぎる一軒家で、街外れの静かな場所に建っている。かつて子供達と暮らしていた頃は狭くも感じ、騒がしくも感じたものだが。数年前まではこの時間に帰れば子供達が留守を任されていて、家には灯りが点っていた。いつからか暗い我が家に帰るのが日常となってしまった今では、灯りの点いた家に違和感を覚えてしまう。先に行けと言ったのは自分ではあるが。


 ユースはインターフォンを鳴らそうとした手を止め、まさかと思いそのままドアノブを回した。案の定、鍵が掛かっていない。ピキ、と顬に青筋が浮かぶ。防犯意識ならまだ子供達の方があったぞ。そんな文句を飲み込み、家の中へと入る。


 玄関から真っ直ぐ伸びた廊下の突き当たりの部屋からは、風呂の湯気が出ている。自由にしろ、とは言ったが。他に人の気配はない。ナオトはどうやら帰ったようだ。尚更腹が立つ。


「よお」


 予想通り湯気の出ていた部屋から、その長い黒髪を濡らしたブシがぬっ、と姿を現した。何も着ていない姿で。肩に先程見た黒の和服を掛けてはいたが。無神経な奴め、見苦しい、早く服を着ろ、と言おうと開いた口が、ブシの体のある一点を見て、止まる。


 ブシは長身かつ、筋肉質だ。鍛え上げられたその体は、美しささえ感じられる。当然のように腹筋は六つに割れていて、無駄が無い体だと言うことがわかるのに。

 丁度、臍の上あたり。そこに見慣れない傷痕が残されていた。傷、と呼ぶには少々優し過ぎる程の、大きなものだ。真横に一線伸びたそれは、恐らくは刀傷だろう。だが、相手に斬りかかれた、という傷ではない。


 そう、まるで自分で刀を押し付け、そこを引き裂いたような。


「ああ。これか? 言ったろ。死んできたって」


 ユースの視線に気付いたブシは、クスクス笑いながら肩に掛けた服に袖を通した。胸元をはだけさせた状態でも本人は構わないらしく、ゆるりと腰紐を結ぶ。


「……ん、」


 丁度その腰紐を結んでいる最中に、ユースの手が伸び、ブシの腹に触れた。指先で、傷を撫でるようになぞる。擽ったいような感覚に、ブシは思わず声を漏らした。


「気になんの?」


 そしてそう問う。


 ユースは答えず、表情も変えず、ただその傷を撫でていた。その傷は白く肉が盛り上がり、そこに爪立てれば再び鮮血が溢れ出すのではないかと思わせる。


「なぁ」


 傷を撫でるユースの手首を掴み、ブシはその手を自分の頬へと引き寄せた。目を閉じ、すり、とその手に頬擦りをするその様は、主人に撫でられて心地好いと喜んでいる犬のようで。


「……ユース」


 薄らと瞼を開きながら掠れた声を出し、ブシはユースの目を見つめながら名を呼んだ。ユースはブシから視線を逸らさずにいる。ずっと、険しい顔で、彼の行動を見続けている。それでもそこに抵抗の意思は感じられない。ブシもそれはわかっているのだろう、掴んでいた手を離し、もたれかかるように両腕をユースの背に回す。


「死ぬ、時。テメェの事ばっか考えてた」


 そしてそんな言葉を吐いた。

 ユースは大人しくその腕の中に納まる。苛立ちはすっかり抑え込まれてしまった。石鹸の匂いが鼻腔を擽る。風呂上がりの為、ブシの体は熱い。腕に力が入り、その逞しい腕に更に強く抱き締められれば、ユースはだらりと下げていた腕を持ち上げ、ブシの肩に手を置いた。そしてそこに顔を埋める。


 懐かしい、感覚だった。


 誰かにこうして触れるなど、どれくらいぶりだろうか。


「……殺して、きたのか。兵器の己を」


 ユースは小さな声で呟いた。

 一瞬の間が生まれる。ブシの手がユースの項に伸び、後頭部を撫でていく。もっと密着したいと訴えるかのように。


「ああ」

「……そうか」


 ユースは顔を上げ、至近距離でその顔を見つめる。何も変わっていない。戦場に立っていた姿と。無論多少老けはした、彼も人間なのだから。


 だが彼は、かつて『兵器』と呼ばれていた。


 そう、ブシは――ナオトのように能力など持っていなかったが、兵器として育てられた男だった。生まれた時から、国の所有物だった。人間としての価値などない。国が必要とするのは、兵器としての彼だけで、人間としての彼はいらない。


 だから彼は、逃げた。人として生きる為に、兵器である己を殺してみせた。勿論それは、偽造である。こうして生きているのだから。腹を斬るという荒技をしてまで、逃げたのだ。国の束縛から逃げる為に。


「この国も、やっぱり能力マインド持ちは、兵器扱いか?」


 昼間の様子で察したのか、それとも事前に調べていたのか、ブシが唐突にそんな言葉を投げかける。無理もない、星冠軍事警察における能力専門部隊は、傍から見ればかつてのブシと同じく『国の道具』に見える。


「そうならないように俺は今の仕事に就いた」


 ほぼ即答でユースが答える。切っ掛けは甥のレイ、そしてナオトでもあったが、今、思えば――…、ブシのように兵器扱いされてきた者を間近で見てきたから、なのかもしれない。


「やっぱり、馬鹿弟子をテメェに預けて正解だわ」

「とんだものを預けてくれたな、お前も。まあ、ある程度の家事が出来たのは、助かったがな」

「お前不器用だもんな。下働きに丁度良かったろ?」

「否定はしない」

「預かってくれてありがとよ。あの餓鬼が兵器にならずに済んだのはお前のお陰だ」


 ピク、とユースの顬が震える。感謝される程の事はした覚えがない、そして何よりむず痒い言葉に鳥肌が立つ。あの子どもが、自分と引き換えに、師を犠牲にしてしまったと涙した姿をこの男は知らない。ブシは己の二の舞を踏ませまいと行動を起こした結果なのだろうが、それが、それが己の腹を斬る事にまで繋がるのか。どれだけの思いをした。どれだけの思いでお前はここに辿り着いた。かつての命令を、たかが、犬の札の、あんな細い鎖を、辿ってまで!


「ブシ」


『兵器』としてではなく、『人間』としての彼の名を呼び、ユースはブシの胸倉を掴んで強く引き寄せた。今度は自分からその唇を奪い、昼間に噛んでやった下唇の傷を抉るように舌先を伸ばす。


「ッ」


 ブシは一瞬驚いて目を見開いたが、直ぐにユースの後頭部を鷲掴み、深く口付ける。

 ビリ、と走る痛み。それが懐かしくて、もう一度軽く唇に噛み付いた。差し出された舌を自ら絡め取り、唾液と共に強く吸う。その舌にも軽く歯を立てた。すると相手も歯を立ててくる。この戯れ合いが、癖になる。


「は……」


 唇を離せば、互いに口内に広がる鉄の味に酔う。それがさも当然かのような手つきで、ブシの手がするりとユースの背中を撫で、腰に辿り着き、上着の下に潜り込んでシャツをズボンから引き抜こうとした。


「ケダモノかお前は。待て」

「嫌だ、勃った」


 直接的な表現に、顔を赤らめるような初心はここにはいない。今にもがっつきそうな獣の首根を掴み、睨み上げるユースの目は鋭く、言うことを聞かない犬を叱るものと何ら変わらない。


「……なんの為に、ベッドがあるか知ってるか」

「誘ってんの?」


 ユースの挑発めいた言葉に、ブシは口角をつり上げてふざけた口調で返す。すると、ユースはニヤリ、と笑った。今日初めての笑みだった。色気のある、相手を誘う、笑み。


「そうだが?」


 そしてそう答えた。



 ___


 依存していると気付いたのはいつだろう。


 誰もいない、屍だけの戦場に立ち、振り向いたその時に、彼が、いた。その時からだろうか。例え兵器と呼ばれていても関係なかった。


「よう、隊長さん」


 そう、言葉が出されるだけで安堵した。

 ああ、お前がいる。

 それだけで十分だった。


「……」


 ユースはゆっくりと重たい瞼を抉じ開けた。腰を中心に襲う鈍痛に、脱力した体をぐったりとシーツに埋める。窓からは既に日が高く昇っているのが見えた。

 無断欠勤か。まあいい。覚悟はしていた。後で自分をこんな目に合わせた相手を蹴り飛ばせば気が済む事だ、とユースは心の中で呟く。

 腕を伸ばし、ベッドサイドに置かれたままの煙草とライターを手にする。俯せのまま肘を立て、慣れた手付きで煙草を口にくわえ火をつけた。煙が肺に入り込む。

 そういえば、煙草を吸い始めたのはいつ頃だったろうか、とぼんやりと考え、昔から、という記憶しかない自分に呆れた。

 昔から、煙ごしでなければ、上手く息が吸えなかった。綺麗な空気に慣れる事が出来ず、濁った煙を吸い続けた。寿命を縮める行為だとわかっていても。昔、そう言って止められたな、と思い、ユースはちらりと隣で眠る男を見る。


 俯せの状態で半分枕に顔を埋め、固く目を閉じたままピクリとも動かない。微かに聞こえる寝息だけが、その男が眠っているのだと理解させた。


 恐らく今この男が起きたら、煙に顔をしかめるだろう。ブシは昔から煙が苦手だった。嫌そうな顔をして「体に毒だ」と言うのが目に見えている。


 己が寿命を縮めている自覚があるのは昔からで、何を今更、とも思うが。

 自分から、『生きろ』と命令した癖に。己は未だに寿命を縮める真似をする。ユースはひっそりと自嘲する。

 この男は何を思い死に、何を思いここまでして生きたのだろう。ブシの腹の傷痕を見るだけで、まさに修羅場をくぐってきた事がわかる。いや、この男は例え地獄に堕ちても生きて帰ってきそうだが――。


「……ブシ」


 小さく名を呼ぶ。

 やはり反応はない。ここに辿り着くだけでも、苦労したのだろう。顔には決して出さなかったが、ブシの体は疲労していた。


「……馬鹿が」


 ユースはそっと呟いた。

 この男は、自分の命令を守り、生き延びた。己の腹を引き裂き、死んでみせるという無茶までして。


「おい、いい加減起きろこの屑。俺は動けないんだ」


 水でも持って来い、と言って、その体を蹴り飛ばす。


「だっ……」


 ごちっと鈍い音がして、ベッドから落ちた相手が頭を打ったのがわかった。


「ククッ…」


 思わず笑いが込み上げる。

 笑う事で鈍痛が腰に響いたが、構わない。愉快で仕方がなかった。


「……たっく…愉しそうだな? 隊長さん」


 床に寝転がり、漸く目を開けて苦笑した相手に「もう隊長じゃない」、と返して、ユースは煙草の煙をその顔に吹き掛けた。


「名前を呼べ、馬鹿」




 ―――


「ユースさんが無断欠勤とかありえねぇハワワ」

「……そうだな」

「な、やっぱりそうなのかな。あの二人デキてんのかな。俺、俺これからどんな顔して二人に会えばいいのハワワ」

「頑張れ」


 ぽむ、とスピリアはナオトの肩を叩く。


「だってさ、俺にとっちゃ二人共父親なわけ。わかる? 母親じゃねぇの。いや男なんだから当たり前なんだけどさ。や、ほら、ユースさんは細いけど。あの人性格凄く男らしいわけ。兄貴と呼ばせて下さいみたいな。だからさ、父親同士がズッコンバッコンとか……想像したくな…………想像出来ちゃったうぇぇええんっ!!」

「……」


 いいから仕事してくれ、とは言えず、スピリアはひっそりと溜め息を吐いた。


 これからの日常がどうなるか、なんて、想像も出来ない事を考えながら。

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