第125話 vs金髪の魔女②

「ちっ、この数……一体ずつ相手してるとキリがないぞ!」

「右側は私がやるわ、左は任せるわ」


 すると、ファルバートは片方の眉を上げる。


「あぁ!?」

「全体を燃やしきるには魔力を使いすぎる……! あなたなら出来るでしょ?」

「……ふっ、まあいい、この俺の力を信じるってわけだな、いいぜ乗った!! 粉々にぶっ壊して、本体をあぶりだしてやる」


 そういって、ファルバートは力強く地面を蹴ると、ものすごい速さで木人にラッシュを仕掛ける。


 所詮は本体のコピーだ、ファルバートのスピードに追いつけず、その強化された拳で次々に破壊していく。


「私も……!」


 クラリスは剣を縦に構える。

 ぶわっと周囲に一瞬炎が広がったと思うと、それは剣へと収束していく。


 そして。


「炎撃”大炎剣山”……!!」


 瞬間、地面へと突き立てた剣を伝わり、炎は地面の下を這う。


 そして、クラリスが向いた正面180度の範囲にいる木人の真下へと一瞬にしてたどり着くと、そこから天上へと貫くように炎の柱が立ち上る。


「あぁああああぁあああ!!!」


 炎の柱は木人の胴体を貫き、そして燃やし尽くす。


 それは、木人から発せられる微弱な魔力を感じ取り、的確に炎をコントロールす必要のある高難易度の魔術。


 炎魔術に長けたラザフォード家だからこそ出来る、高等魔術だ。


「やるねえ……! これで……ラストォォォォ!!!」


 右ストレートが、最後の木人の顔面を打ち砕く。木人はぽろぽろと崩れ落ち、地面に倒れこむ。


「は……はは! ざまあみろ、クソ魔女がぁ!」


 ファルバートは拳を握り、雄たけびを上げる。


「ま、待って……本体はどこ!?」

「っ! 消えた――――」


 瞬間、ファルバートの後ろから、にゅっと両の手が伸び出てくる。


「ファルバート、後ろ!」

「なっ!?」


 遅れて、壁から金髪の魔女の顔が現れる。

 突如壁から現れた両の手は、ファルバートの体をがっしりと掴むと、ズズっと壁の中へと引きづりこむ。


「ファルバート!!」


 ドプンと、まるで水に沈むかのように二人は姿を消す。


「まさか、木の中を移動できるっていうの!?」


 すると、ファルバートに気を取られていたクラリスも、足元に伸びてきていた木の根に気が付かず、足をからめとられる。


「きゃっ!」


 木の根はそのまま天井まで引き上げると、クラリスは天井からさかさまにつるされ、スカートを咄嗟に抑える。


 遅れて、中央の四角く区切られた場所に、木の根によって縛り上げられたファルバートが現れる。


「ファルバート!」

「くそっ、油断した……!」


 その横にクラリスも寝かされる。

 よく見ると、その床には魔法陣が描かれていた。見たことのない、不思議な文様だった。


「さて、行きましょうか」


 突如どこからともなく現れた金髪の魔女クリスは、床に寝そべる二人を見下ろして言う。


「何をする気……?」

「宴の始まりってこと。魔女の恐ろしさを知るのはこれからよ」


 そういって、クリスは両手を広げ、魔法陣に魔力を流し込む。


 魔法陣は光、どんどんと力を増していく。


「これは……!?」

「落ち着け! 殺すならもう殺してる、何か狙いがあんだよ。今は、この魔術の後ですぐに動けるように備えておくこと! いいな!」


 言われて、クラリスも静かにうなずく。

 ――そして。


「――”転送”!」


 次の瞬間。クラリスたちの目の前は真っ暗になった。

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