第66話 予選組み合わせ
クラス全員に、歓迎祭の組み合わせが発表される。
全一年生90名。予選は11人1組での殴り合い。いわゆるバトルロイヤル形式だ。A~Fブロックが11人、G、Hブロックは12人での戦いとなる。
それぞれのブロックから一名だけが勝ち上がり、本選として決勝トーナメントが行われる。戦いは二日に分けて行われ、一日目が予選、二日目が本選となる。例年、二日目の本選は観客の数が尋常ではないらしい。それだけ盛り上がる祭りという訳だ。
俺たちはそれぞれどのブロックに割り振られたかを確認し、その顔色を様々に変化させる。
「ぬあああああああああ!?!? なんでなんだああ!!」
と、けたたましい叫び声を上げるのは、俺の隣でメンバー表を見ているアーサーだ。
「うっせええなあ……どうしたんだよ?」
「どうしたもこうしたもあるか!! 見ろこのメンバー表!!」
アーサーは有無を言わさず、ぐいっと俺の方により、俺の手元にあるメンバー表のGブロックを指さす。
そこには、アーサーの名前があった。
「Gブロックか。あぁ、12人のブロックだからショック受けてんのか?」
「それもあるけど……ちげえよ、メンバーだよ! メンバー!」
「メンバー?」
その下に書かれている名前に俺は視線を移す。
Aクラス アーサー・エリオット。
Aクラス ヒューイ・ナークス。
Aクラス レオ・アルバート。
…………。
Cクラス ハミッド・バラージュ。
なるほど。ヒューイもレオもこのクラスでは最上位の実力者だ。それに、このCクラスのハミッドとかいう奴も、確かルーファウスが神童と呼ばれていると言っていた魔術師の一人だったか。
「不公平だろ! なんだこの……Aクラスの実力者の集まりは!? 俺に恨みでもあんのか!?」
アーサーは今にも何かを吐き出しそうな顔で叫ぶ。
「おいおい、別に誰が相手でも関係ないだろ」
「あるだろ!? 一人しか勝ち上がれねえんだぞ!?」
「だってよ、どうせ優勝は一人だ。予選で誰に当たろうが関係ないだろ」
そう、所詮は予選。誰とどこで当たろうが、優勝しか見てない者にこの組み合わせなどさしたる問題ではない。
「確かにそうだけどよ……そうだけど……!」
「はは、まあ気持ちはわかるぜ? トップを目指すって宣言してるんだ、それだけやる気もあれば組み合わせで納得いかないこともあるさ」
すると、取り乱していたアーサーは俺の言葉で少し冷静さを取り戻し始める。
「た、確かにな……。くそ、俺としたことが……。ノアぁ……お前はなんでそんないい奴なんだ……」
「別にそんなつもりはない」
「そうだよなあ、どうせ優勝するなら全員倒すんだ……むしろ大勢で用意ドンの予選で当たった方が有利の可能性もある! 名がある奴らは優先的に狙われるだろうしな!」
うーん、俺の言ったことと少しずれてる気もするが……。
まあアーサーが納得したなら別にいいか。
「相変わらずうるさいわね」
「あはは、やっぱり組み合わせは気に成っちゃうよね……」
「クラリスちゃん、ニーナちゃん!」
「ちゃん付けはやめて」
「つれねえなあ……」
「二人は組み合わせはどうだったんだ?」
すると、クラリスは肩を竦める。
「別にどうもこうもないわよ。どうせ勝つだけだし」
「……みろ、あれが本来の強者のあるべき姿だぞ、アーサー」
「あぁ……み、見習わねえと……」
「ニーナはどうだった?」
「うーん……やってみないとわからない……かな?」
そういってニーナはあははといつものように笑う。
なんだかんだ言って、ニーナはやるときはやる奴だ。
俺たちは紙に視線を移す。
ニーナの名前は、Aブロックにあった。
「へえ、ニーナのブロックにはナタリーがいるのか」
「そうみたい」
「あいつは結構近接戦闘も出来るからな。そこら辺の対策はとっておいた方がいいぞ」
「うん、ありがと! 予選までもう時間もないからね。急いで対策立てないと!」
そう言って、ニーナはグッと拳を強く握る。
「結局俺達四人はブロックばらけたのか?」
「ニーナちゃんはAブロックで、クラリスちゃんがEブロック、俺がGブロックで……ノアはHブロックか」
「そうみたいだね。良かったよ、ノア君と当たったらさすがの私もこんながんばるぞーなんて気分に成れたかどうか……」
「それは言えてる……」
ニーナとアーサーは二人して虚しそうな笑いを浮かべる。
「ふん、私だったら好都合だけどね。予選で優勝候補の一角を落とせるなんてまたとないチャンスじゃない」
「たくましいね、クラリスちゃんは」
「当然。冒険者だからね、私は。常に強敵を求めてるのよ」
「で、ノアの組み合わせは誰なんだ? ちょっと見てみようぜ」
俺達は手元の紙に視線を移す。
「知ってる名前も何人かいるが、まあ正直優勝は俺だから誰が相手でも関係ない」
「相変わらずの自信……」
「そう言っていられるのも今のうちよ!」
すると、表を見ていたアーサーが何かに気付き、あっと声を上げる。
「どうした?」
「いや、ほら……ここ見ろよ」
「ん?」
俺たちはアーサーが指さした場所を見る。
そこには「Bクラス レーデ・ヴァルド」の文字が。
「こいつは……」
「皇女を助けたとか言う……!」
あの偽物か……。
俺は無意識に口角を上げる。
「はは、いいねえ。あいつはどうやら俺に対抗意識があるみたいだからな。面白くなりそうだぜ」
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