第13話 サッちゃん早くも復活

「大きな宇宙船を出しますよ~! 潰されない様に気を付けてね~」


 着陸時にミフィーリアの住処すみかを潰してしまったので、二の舞が起きない様にと、大きな声を張り上げて一応声をかけた。



「大丈夫そうだね? 軽巡洋艦CL5501をインベントリから排出!」


 シュィイイイイイイイイイインッ!



 軽巡洋艦と言っても宇宙戦艦だ、ドーム球場ぐらいのサイズがある。



「開けゴマ~!」


 と、古いギャグを言いながら、自分達の手でドアを開けた。エネルギーが切れてるから……。


 ゴゴゴゴゴッ……。



 相変わらず中は広くて何もない。


 家具も道具も操縦桿すら付いて無い。


 冷凍睡眠カプセルも今は無い、たぶん床下に収納されてるのだろうが、フロアの何処にも継ぎ目が見えなかった。



「お~い、サッちゃ~ん!」


 ……………………



「反応が無いね……マテリアル・リコンストラクターは何処にあるのかなぁ?」


 サッちゃんは完全に沈黙していて応答がない。



「それじゃあ、お兄さん。魔力を充填しましょうか?」


「うん、ミフィーリアちゃん。

 えっとぅ……マテリアル・リコンストラクターに魔力を充填! ……したいなぁ?」


 シュィイイイイイイイイイイ…………


 俺の体から、激しい勢いで魔力が吸われていくのが感じられる!



 俺の様子を傍で窺っていたユウトが、俺の顔色が青ざめて行くのを見て、


「ソウタ、大丈夫か? MPがゼロになって、魔力が無くなったら、ヤバいんじゃないか?」


「じゅ、充填終了!」


 ……シュインッ!



 俺は眩暈めまいと脱力感を感じたが。ざっと、辺りを見回しても特に変化は見られない。



「はぁ、ユウトが声を掛けてくれなかったらヤバかったかもしれないよ!?」


「そぅ、よかったね」



「それじゃあ、次は……丸焦げのミノタウロスを全てインベントリから排出!」


 シュインッ! ドサドサドサドサッ!


 20頭程の黒焦げミノタウロスを、1か所に纏めて山と積み上げた。



「取り敢えず、チャレンジしてみようね!

 サッちゃん!聞こえるかな?……聞こえてたら、ミノタウロスをリコンストラクターで廃棄処理してっ?」


『フロアにある全ての丸焦げのミノタウロスを、リコンストラクターで廃棄処理致しますか?』


 サッちゃんの声が返ってきた!!



「イ、イエスッ!」


 シュィイイイイインッ!


「消えたっ!」



「サ、サッちゃん! 復活したの?」


『軽巡洋艦CL5501のメインコンピューター『サリーナ』は省エネモードで再起動しました。

 ですが、人族の魔力によるエネルギー充填は、魔力消耗切れの危険があるので推奨できません。 現在、リコンストラクターで廃棄処理したミノタウロスをエネルギーに変換して、コンピューターとリコンストラクターだけを起動しています』



「サッちゃん、俺達まだ食事をして無いんだけど。ここにいる6人分の食事って用意出来ないかなぁ?」


『できます。

 この船のシステムを維持するエネルギーと比べたら微々たるものです。

 テーブルとイスを出しますので、食べたい料理名を告げてください』



 俺、

「うん、まずはビーフステーキかなぁ……」


 クミ、

「ええっ!? ミノタウロスを思い出すと食べにくいから、すき焼きとかにしない?」


 ユウト、

「僕は牛丼でもいいかな……」


 リン、

「ふ、ふかひれスープでも良い? せっかくだから最高級のやつ。つ、燕の巣とかも頼みたいかも……」


 ヒナコ、

「お肌の為にサラダから食べたいです」


 再び俺、

「天ぷら、唐揚げ、ハンバーク、カレー……食べたい物がいっぱいあるなぁ!」



 シュィイイイイインッ!


『今挙げられた料理を全てテーブルの上に用意しました。残ったら又、廃棄処理しますので。どうぞ、気にせずお食べ下さい』


「そ、そうなんだ……」



 俺は皆を見回しながら目配せをして、


「それじゃあ、遠慮なく~!」


「「「「「「イッタダッキ、まぁあああすっ!」」」」」」


 モグモグムシャムシャ、ングングング……、




「それにしても、何でサッちゃんは地球の料理を再現できるのかなぁ?」


『それは、睡眠学習中のバーチャル空間で、貴方達に教わりながら一緒に料理をして、一緒に食べていたからです』



「サッちゃんも食べるんだ!?」


『バーチャルでなら食べれます。料理のレシピと味をデータベース化して保存させて頂きました』



「ふ~ん、食事はあと何日分ぐらい作れるの?」


『現在のエネルギーでは、6人分なら5日程でしょう。リコンストラクターでの廃棄処理を積極的に行う事を推奨いたします』



「この船も飛ばせるようになるの?」


『この船を航行させる為には、ミノタウロスを数百匹単位で必要です』



「そ、そう。じゃあどうすれば惑星間航行できるの?」


『発電所が全て破壊されていると予想されますので、その手段はありません。ですが、もしダンジョン核を回収できれば惑星間航行もできるでしょう』



 シュィイイイイインッ!


 フロアに電子レンジの様な物が現われた。


『これはマテリアル・リコンストラクターの端末の小型フードディスペンサーです。廃棄処理と食事の度に軽巡洋艦CL5501を出すのは場所を取って不便ですので、これをインベントリに入れて置いて使ってください』


「わぁ、どうもありがとう」

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