第12話 マテリアル・リコンストラクターって、なぁに?

「ミノタウロスをもう倒しちゃったんだ! 早いね、ユウト」


「ソウタだって、ミノタウロスのリーダーを一撃で倒したんだろう?」


「うん。……何か、手応えがあまり無くって。両手剣も軽いし、牛がサクサク斬れちゃうんだ!」


「僕もそうなんだよ。盾で牛を受け止めても軽いし、鉾で切り裂いても、軽く一撃で真っ二つだったんだ」



「ソウちゃん。今、アレを言って良いと思うんだけど、お決まりのセリフのアレ?」


「え、何を?」


「あ、そうか! ソウタ、アレだよ。小説や漫画でよく言うやつだよ」


「うん、それ」



「あ、アレかぁ。俺が言うのぉ? コッパズカシイからユウトが言ってよ?」


「何言ってんだい! 両手剣でリーダーを倒したソウタが適役だよぅ」



「どっちでもいいから早く言いなさいよ! 『俺ツエエ』を譲り合わないでよ」


 と、クミに突っ込まれてしまった。



「「あっ、言われちゃったぁ」」


「あぁぁ、折角のチャンスだったのにぃ。台無しだよぅ!」


 と、ユウト。



「もぅ、早く言わないからでしょう? 次に魔物を倒す時まで『オ・ア・ズ・ケ』ね」


「ヴフォッ、……御馳走様……です」


 ユウトが小声で呟いた。



「え、なによ?」


「なんでもないです……」




「ねぇねぇ、お兄さん。反省会は後にして、ミノタウロスを回収しましょ? こんだけあれば、美味しい御馳走がお腹いっぱい食べれるよ」


「うん。でも俺達は、実際に肉の解体も料理も経験無いんだよね」



「そうなんだぁ。 でも【解体】と【料理】スキルがあれば、魔法が全てやってくれるから大丈夫でしょう? 誰も生活魔法の【解体】【料理】スキルを持ってないの? こんなに強いのに……」



 俺達5人は顔を見合わせた。


「ソウタ、僕達は多分そのスキルを持ってると思うよ」


「そうだよね、あらゆるスキルをカンストしてるって、サッちゃんが言ってたからね」



「黒焦げのミノタウロスも美味しい料理にできるかしら?」


 と、クミ。


「それは無理かもね」


 と、ユウト。



「お兄さん、廃棄物処理は【マテリアル・リコンストラクター】で処理するのよ。 大きなお船には必ずあるのよ」


「【リコンストラクター】って、なぁに?」


「【リコンストラクター】は、…………」



 ☆ ▲ ☆ ▼ ☆



 後に〇〇ちゃんから詳しく説明された内容を、先行ネタバレ解説するよ。



【マテリアル・リコンストラクター】


 分子を材料として、コピーを作り出すことができる。

 所定の物品の正確な複製物を製作したり、それの縮尺を変更してミニチュア化ないしは拡大コピーしたり、指定された物品の複製に様々な条件付けを行う事で、全くオリジナルな物を製作する事もできる。

 家庭向けの食事を作り出すフード・ディスペンサーから、工業用の大型のものまであるが。 危険な毒物・武器・爆発物等の製造にはプログラムによるリミッターが作動して、製造できないようになっている。

 その一方で不要になった物品を分解するためにも使われ、「食事の片付け」というと、この装置に入れる事を意味する。

 ウプシロン帝国では【リコンストラクター】が普及しているため、貨幣経済は衰退しており、当装置を使用する為の魔力を充填した【魔石】を貨幣の代わりにしている。

 又、【リコンストラクター】に【魔石】を入れて、その価値を鑑定する事もできる。


 端末等により作り出して欲しいものを入力(基本的に音声入力)すると、材料となる分子と、あらかじめ物体をスキャンすることによってコンピュータ内のデータベースに得た分子配列情報をもとに、短時間で物体を構築し、提供してくれる。

 例えばコーヒーを注文した際には、コーヒーの種類は勿論、ミルクや砂糖をどれ位入れるかとか、温度や濃さ・量までもを自由に指定できる。


 帝国世界では、物資を原型のまま保存すると倉庫容積の無駄となってしまう事から、このような機器が発達したようだ。


 宇宙艦隊の艦船や宇宙ステーションには厨房は存在せず、各部屋に食事を作成するフード・ディスペンサー(リコンストラクターの端末)が設置されており、食事はほとんどそれによってまかなわれている。食べ残しや食器は、装置に戻せば分解され原料に戻る。そのため食糧貯蔵や生ゴミの処理などの、衛生面での問題が発生しないという利点を持っている。

 原料には、原理的には「質量」や「エネルギー」が有ればよいので、場合によっては排泄物などを用いることも可能だが、通常は補給された物を用いる。


 大きな電子レンジの様な物で。食べたい食事の名称と量を「リコンストラクター、フード・ディスペンサーで○○を200グラム提供して」と言えば数秒で中に出現する。

 ただし、魔力若しくは電気を莫大に消費するが、その為にゴミゼロ社会を達成している。

 しかも電気は素粒子発電をしているので、燃料を必要としない。素粒子は宇宙に満ちているから、収集・蓄積・発電システムがあれば、半永久的に電気が供給されることになる。



 ☆ ▲ ☆ ▼ ☆



「へぇ、そんなに便利な物がこの世界にはあるんだね。けれど宇宙船は燃料切れで動かなくなってるんだよ。【マテリアル・リコンストラクター】だけ使う事が出来るかな?」


「えぇ!? お兄さん達はそんなに魔法が使えるんだから。お船の魔石を充填できるでしょう? 燃料は電気エネルギーでも魔力で賄えれるのよ! それも【リコンストラクター】の技術と同じなんだからぁ! お船に必ず設置されてる魔石に【リコンストラクター】から魔力を充填できるのよ!」



「ふ~ん、そんな便利な物があるんだね」


「うん、お船を出して充填しましょ! ビーフステーキだけじゃなくて、美味しい料理を沢山食べようね?」


「うん、やってみよう」




【後書】

(リコンストラクターや魔石、魔力に関するマニアックな電波発信なので、スルーして貰っても、物語には全く影響有りません。

 筆者はリコンストラクターについて、人類の未来に於いて、いつか開発される技術だと思っています)



『質量保存の法則』は、素粒子論・核物理・宇宙論を除いた自然科学の分野で実用上用いられている法則です。

 化学反応の前後で質量変化が実験的に観測されなかったことから生まれた法則ですが、現在では相対性理論に基づく質量とエネルギーの等価性がより根本的な法則で、質量保存の法則はその近似に過ぎないとされています。

 もっとも、質量とエネルギーの等価性は自然科学の多くの分野では問題とならず、質量保存の法則は多くの場面で運用上有効な法則であるとされてます。


 しかし、物質の根源に迫ることを目的とした素粒子論や宇宙論などの研究対象においては、質量保存の法則は全く成り立っていません。

 核反応の世界では実験的に十分に測定可能なだけの質量変化が起こっており、反応の前後で元素の種類や各々の物質量も変化していきます。さらに、素粒子論の世界では物質・質量の生成や消滅が広範に起こっているので。これらの世界においては、質量保存の法則や物質の不変性・不滅性は全く成り立っていないのです。


 化学反応においても、反応によって放出または吸収されたエネルギーに相当する質量変化が起こっており、質量は厳密には保存されていないとされます。そのことを考慮すると「化学反応の前後で、それに関与する元素の種類と各々の物質量は変わらない」という表現がより正確な表現となります。


 身近な化学反応である燃焼について考察すると、木や紙は燃やすと灰となって質量が大幅に減少します。反対にスチールウールなどの金属は質量が増加するのです。

 また、気体を熱するとそれは軽くなるように感じられます。つまり日常的な感覚や直感では反応の前と後では、ものの質量は大きく変化するように感じられるのです。

 しかし、このような目に見える質量の変化はあくまで外部との物質の出入りが自由な開放系で見られるものであり、精密な測定のために閉鎖系を準備すると状況は違ってきます。



 アインシュタインは相対性理論においてE=mc²という数式を提示し、質量とエネルギーは等価関係にあると提唱しました「質量は消滅してエネルギーに変化しうる、とすることを提唱した」。

 そして、相対性理論の有効性が明らかになると、質量保存の法則や物質不滅の法則は、自然の基本法則としては完全に破棄されることになったのです。


 特殊相対性理論によれば、質量とエネルギーは等価であり、閉じた系において保存されるのは「質量の総和」ではなく「(質量を含む)エネルギーの総和」であるとされます。

 従って、化学反応によってエネルギーが吸収・放出されれば、それだけ質量も変化することになります。

 高エネルギーの素粒子反応においては粒子が消滅したり、新しく創られたりすることは、ごく普通の現象なのです。



『質量保存の法則』は、自然の基本法則ではないものの、素粒子論・核物理・宇宙論などを除く自然科学のほとんどの分野で実用上の基本法則として用いられています。

 これらの分野における質量保存の法則の妥当性は、質量の変化には極めて莫大な量のエネルギーの放出・吸収が伴うとするE=mc²の式から逆に保証されます。

 したがって、化学実験などにおいて「質量保存の法則」や「物質不滅の法則」に反する結果が得られた場合は、質量保存の法則によらない反応が起こったと考えるのではなく、実験に不手際がなかったか、結果の解釈に問題がないかを十分に考察する必要があるのです。

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