第11話 牛が沢山いましたとさ!

「ほいっ、ほいっ……」


 ユウトが盾を揺らして、2メートルを超える巨体のミノタウロスを誘う。

 日本で2人でMMORPGをしてた時と同じだ。



 ミノタウロスが興奮して、右足で地面を掻いた。


 ガッツ、ガッツ……



 その直後、頭を下げ角を前に向けると、ミノタウロスはユウトの盾を目掛けて突進する!


「ヴゥモォオオオオオッ!」


 ドッガァアアアアアンッ!



 身長175センチのユウトが、2メートル越えのミノタウロスの突進を受けて、1歩も下がらずに踏ん張っている。


 止まったミノタウロスの真横から、俺は180センチの両手剣を振り下ろした。


 シュリィイイイイインッ!


 と、涼やかな音色を奏でて、前かがみに成ってるミノタウロスの背中から臍まで、真っ二つに斬り下げた。

 サクリ……と、軽い感覚しか感じられなかった。


 一太刀で絶命したミノタウロスを見て、文芸部の5人は絶句している。



「わ~い、お兄さん。凄い凄い!」


「フゥ~、ユウトのお陰で上手くいったよ!」


「いやぁ、さすがソウタ。ネトゲと同じだね」



「お兄さん、今食べないならスグに収納した方が良いの、血の匂いで牛や獣が集まるのよ」


「そ、そうか。ミノタウロスの遺骸をインベントリに収納!」


 シュィイイイイインッ!



 ミフィーリアは後ろ脚で、流れ出していた血に砂を掛けている。


 ザッザッ……



「血だまりの所に【ピットフォール】(落し穴)!」


 ボコッ!


「落し穴に【ソイルバレット】(土弾)!」


 ドドドドドッ!


 俺は血だまりの下に落とし穴を開けてから土弾を数発撃ち込み、ミノタウロスの血を隠した。



「わ~い、お兄さん。凄い凄い!」


「えへへへ」



「でも、ちょっと遅かったみたい。それに声や音も結構出ていたからね!」


「フッフッフッ……」

「ンモゥ……」

「ヴッフゥ……」


 いつの間にか、30頭以上のミノタウロスに囲まれていた。

 距離にして30メートルぐらいだろうか?



「やばいよ、ソウタ!」


「落ち着いて、ユウト!

 ミフィーリアちゃんを中心に外側を向いて円陣を組もう。俺が『せ~の』と言ったら、ファイヤーボールを一斉に撃つよ」

「「「「はぁあい」」」」



 文芸部女子3人の顔色を窺うと、何故か俺とユウトを見て、顔を赤らめ興奮してるように見える。


「「「フンス!」」」



 まぁいいか、それよりも……。

 2メートル程のミノタウロスの中に、1頭だけ3メートル大の巨体ミノタウロスが居る。

 そいつが斧を持つ右手を上に振りかざすと、ミノタウロス達が片足を1歩前に出した。

 そして、次に右手を斬るように振り下ろすと、一斉に突進を始めた。


「「「ヴゥモォオオオオオッ!」」」


「せ~の!」


「「「「「【ファイヤーボール】!」」」」」


 ボボボボボワッ、ドドドドドォオオオオオオオオオオンッ!


「「「ブヒヒヒヒィイイイイインッ!」」」



 外を向いて円陣を組んでいる文芸部の面々。そのそれぞれの正面に居るミノタウロスに向かって、バランスボール大の火弾が飛んで行った。


 かなりの高温で、真っ赤な炭の様に燃えてるファイヤーボールは、直撃したミノタウロスをほふるだけではなく、隣接していたミノタウロスをも巻き込んだ。



 うろたえる生き残ったミノタウロス達が、リーダーの振り下ろす右手の合図で再び突進してくる。


「「「ヴゥモォオオオオオッ!」」」



「もういっちょ、せ~の!」


「「「「「【ファイヤーボール】!」」」」」


 ボボボボボワッ、ドドドドドォオオオオオオオオオオンッ!


「「「ブヒヒヒヒィイイイイインッ!」」」



 20頭ほどのミノタウロスが、地面に黒焦げで倒れている。

 生き残ったもの達も明らかに動揺していた。



「ソウタ、2人で近接攻撃をして掃討戦に移ろうよ」


「そうだねユウト。いつも通り各個撃破で行こうね」


「うん」



「女子は杖を構えて待機してて、ミフィーリアちゃんから離れないでね」


「「「はぁあい」」」



「よし、行こう!」


「うん」


 俺が3メートルの巨体のリーダーに向かうと、ユウトは反対側に走っていった。


「【スラッシュ】!」


 と言いながら、俺が両手剣を横薙ぎにすると。銀色に光る透明な刃が、ミノタウロスリーダーに向かって飛んでいき、側にいた2頭も一緒に巻き込んで、3頭の腹をスパリと切断した。



 上半身だけで斧を振り回すミノタウロスリーダーの首を


 サクッ!


 と、俺は刎ねる。


「ヴッフゥゥゥ……」


 ミノタウロスリーダーは息絶えた。



 俺が振り返ると、既にユウトが残りのミノタウロスを全て倒していた。

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