第10話 草原の生物!?

「それじゃあ、シュミレーションもしたし、そろそろ首都に向かおうか?」


「待ってよソウタ、まず草原の弱そうな魔物で小手調べをしようよ?」


「そうだね……じゃあ魔物を探しながら、見つけたら倒して進もうよ」


「「「「「はぁあい」」」」」



 5人?は、広くなだらかな草原を首都方向に向けて歩きだした。

 縦1列で、ユウト、ソウタ、クミ、リン、ヒナコ……の順番で歩いていく。




「ねぇねぇ、このまま真っ直ぐ首都に向かうのは、やめた方がいいよ」


 後ろから女子の誰かに注意された。



 ソウタは前を向いて歩きながら返事をする。


「そう? 俺達のステータスなら大丈夫だと思うけど……」



「首都はオーガのテリトリー(縄張り)に成ってるから、人族じゃ簡単に殺されて食べられちゃうよ」


「うん!? 何でそんな事知ってるの?」


「オーガから逃げて、この草原で暮らしてるからだよ。奴らが来たら穴に逃げ込んで生き延びてるんだから!」


「「「「「えっ!?」」」」」


 文芸部の5人が揃って後ろを見ると、ウサ耳を頭に付けた、まるで幼稚園のお遊戯帰りに見える幼女がいた。

 革製のワンピースを1枚だけ着ているが、手足は白い毛におおわれている。

 足は裸足だ。



「君はだあれ? いつから一緒に居たの?」


「アタシは兎人族のミフィーリア。お船の下にあった穴に住んでいたの、ずっとお兄さん達を傍で見ていたよ」



「穴の中に住んでいたって!? もしかして、住処すみかが船の所為で潰れちゃったのかい?」


「ううん、大丈夫だよ。潰れちゃって、もう住めないけど。アタシ1人で住んでたから、お兄さんが責任取ってミフィーリアを養ってね」


「せ、責任?」


「うん」

 笑顔が眩しい!



「1人で住んでたって聞こえたけど、家族はどうしたの?」


「首都のオーガに食べられたり、草原で牛に食べられたりして、みんな居なくなっちゃった!」


 幼女は元気よく、笑顔でそう答えた。



「う、牛がウサギを食べるの?」


「うん、この草原には沢山の牛が住んでるから気を付けてね」



「普通、牛は草を食べるんだよね?」


「うん、だから草原に住んでるの。でも牛は人やウサギも食べるんだよ」


「「「ヒィイイイッ」」」


 女子3人が悲鳴を上げた。



「この草原で危険な生き物は牛なんだね?」


「うん」

 明るい返事が返って来た。




 ヴゥモゥオオオオオッ!


「えっ! 今のは牛の鳴き声だよね。結構近くにいるみたいなんだけど?」


「うん。オーガより弱いってお母さんが言ってたから、お兄さんのその大きな包丁でお肉にしてね。たぶん、さっきのファイヤーボールだと黒焦げに成っちゃうからね!」


 幼女がソウタの両手剣を指さしてそう言った。



「ミフィーリアちゃんも、お肉を食べるの? 草は食べないの?」


「草は大好きよ。でも、お肉も食べるの、美味しいの!」



 小さな丘の向こうに、2本の曲がった角が見え隠れしている。

 どうやら牛が一頭で草をんでいるようだ。



「ソウタ、2人で物理攻撃をしようよ。練習にちょうど良いと思うよ」


「分かったよユウト、じゃあ2人で挟むように攻撃しよう。 女子は杖を構えて待機しててね」


「「「「はぁあい!」」」」


 女子と一緒にミフィーリアも返事をした。



 実はこの時既に、ミフィーリアとの会話は帝国公用語で話していたのだが、俺達は日本語で話してるつもりでいた。睡眠学習であらゆる言語に精通しているので、自然と母国語の様に会話していたが、全く言語が変わった事に気付いていなかった。




 武器を構えたソウタとユウトは、2人の間に距離を置きながら忍び足で前進する。


 見え隠れする角を目指して接近して、あと10メートル程の距離になった時、


 ヴゥモゥオオオオオッ!


 2人の接近に気付いた牛が、こちらを振り向いて2本足で立ち上がった。


「牛が2本足で立ちあがるってかぁっ!」


「ソウタ、こいつはミノタウロスだぁぁぁっ!」

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