第7話 サリーナ、事情を打ち明ける
『間もなくアンドロメダ銀河ウプシロン帝国首都星エリューズに到着致しますが、ここで皆様に大事なお知らせをしなければなりません。
当船は緊急探索任務中であった為、秘密厳守により今迄皆様にお伝えしてなかった事があるのです。大変申し訳ありませんでした』
「ふ~ん、そうなんだぁ」
『実はこれから到着するアンドロメダ銀河ウプシロン帝国は、滅亡の危機に瀕しているのです。
1年前、ウプシロン恒星の大規模フレアによるソーラーストームが発生して、ウプシロン星系の帝国支配地域のほぼ全てに於いて、ブラックアウト(電源喪失)が起きてしまったのです。
しかも、その電源喪失の空白をついて、魔物のパンデミックも発生してしまいました。
それは恐らく反帝国同盟軍の仕業と思われますが。現在帝国政府と帝国軍ともに通信が一切不通となっているのです。
しかもこの船1隻が、帝国艦隊最後の生き残りである可能性を否定できません。
そして、この船も首都星エリューズに到着後、まもなくエネルギーが底を付き沈黙してしまうでしょう』
「それって、サッちゃんと会えなくなっちゃうって事?」
『はい、そうです。
5万年間のハイパータキオンドライブとタイムリープで、エネルギーを使い切ってしまいました。
皆様には選別として、この船に搭載されてる各種装備品をお譲りしますので、どうかお受け取り下さい。
皆様はあらゆるスキルをマスターしているので、どれも使いこなせる筈ですが、好みの物を使うのが良いでしょう【好きこそものの上手なれ】という事です。きっとお役に立つ事でしょう』
「えっとぅ、俺達は帝国で何をすればいいの? サッちゃんが俺達を連れてきた理由があるでしょう?」
『私は帝国で作られた帝国所属のAIですので、勿論帝国の再建を目的として皆様をお連れしてきたのですが。現時点で首都星を観測した限りでは、既に社会システムが崩壊していて、その可能性はとても低いと計算されます。せめて生き残ってる帝国の人族を御救い下さると嬉しいです』
「「「「「……」」」」」
「ねぇ、サッちゃん。
ソーラーストームや魔物のパンデミックが発生する前にタイムリープして、対策を取れば良かったんじゃないの?」
『いいえ。
それではこの軽巡洋艦CL5501が、地球へ向かう必要が無かった事になってしまい、タイムパラドックスが起きて世界が崩壊してしまいます。既に起こってしまった事象を変えるのは大変危険なのです』
「そうなんだね……」
『さぁ、間もなく到着致します。
帝国社会が破滅の危機に直面していて、緊急探索任務が発動していた為とはいえ、勝手にこんな所に連れて来てしまって申し訳ありませんでした。しかし私個人としては、皆様ととても楽しい時間を過ごすことが出来ましたことを感謝致しております。皆様に御武運がありますように……』
それを最後に、サッちゃんの声は聞こえなくなってしまった。
おそらくエネルギーがつきかけていて、着陸するのがやっとだったのだろう。
シュィイイイイインッ!
宇宙船は、帝国首都星エリューズの首都郊外にある、広大な草原に着陸したようだ。
ソウタ達は、軽巡洋艦CL5501に搭載されていた装備を分け合った。
俺(ソウタ)は大きな両手剣を武器として選んだ。近接攻撃をする攻撃的前衛をするつもりだ。
ユウトは鉾と盾を取った。守備優先の守備的前衛をするのだろう。
女子3人はマジックステッキの様な物を選んだので、全員後衛だと思われる。
俺は見かねて、ちょっとだけアドバイスをした。
「女子は回復役と中距離攻撃役と長距離攻撃役に分担したらどう?」
「「「はぁあ~い」」」
と、間延びした返事が3人から返って来た。
ファッション関係の事になると、男子の話を聞き流してしまいがちのようだ。
次に俺達は防具を選んでいく。
美少女戦士フワプリンに似た女子用の赤いアイマスクと、青い流星ジャア・マズナムルが付けていた男子用の仮面とサングラスに似た物があったので、それぞれ好きな物を装着してみる。
俺がサングラスにすると、ユウトは黙って仮面を取った。
アイマスクは魔道具らしく【認識阻害】効果と【暗視ゴーグル】と【レーダーマップ】機能が付与されていた。
何となくそれらのスキルを自分達も習得済みであることは分かるが、パッシブ的な効果が期待できるし。探索に慣れるまでは、ありがたいのではないかと思った。
衣装やベルト、腕輪やネックレス等のアクセサリー類も選ぶ。それぞれ必要な特殊効果が付与されていた。
俺が防具ではなく衣装と言ったのは、その見た目の所為だ。まるで日本の戦隊特撮物やアニメを知ってるかのようなデザインだったからだ。
女子は嬉々としてそれらを選んでいるが、勿論俺達男子も萌えていた。
俺達が気を利かして自主的に後ろを向いてると、女子3人が手際よく着替えを終える。
「もういいよぅ」
と、リンが言った。
振り返るとそこには、プディキャラ、セルラーモーン、フワプリンが立っていた。
何故か赤いアイマスクだけ共通して着けているのだが、顔バレしない方が良いと思ってるのだろうか?
俺達もサングラスと仮面を付けて、戦隊特撮物風の衣装に着替えようとするが、何故か女子たちは俺達の着替えをニコニコと眺めていた。
俺達が手で胸と股間を押さえて
「「見ないで、見ないで!」」
と、言うと。女子3人は、
「「「意味わからなぁい!」」」
と、言っていた。
全員が装備を身に着けて確認していると、ベルトのバックルから男の声がした。
『現装着物を変身セットとしてアイテム登録いたしますか?』
「イ、イエス」
ピンポ~ン♪
『登録しました。前装着品を代替品として収納しておきます』
シュィイイイイインッ!
脱ぎ捨ててあった自前の服が一瞬で目の前から消える。
「あ、アイテムボックスに収納されたみたい!」
仮想現実空間で経験済みだった。と、頭に浮かんで理解できる。
残りの文芸部員達もそれぞれ俺に習って、アイテムボックスに自前の服を収納するのだった。
「た、確か『ヘンシ~ン』って言うと、一瞬で着替えれるんだったよね?」
と、俺はユウトに聞く。
「そ、その筈。でも、実際に言うのはハズイよな?」
「あ、あぁ。ハズイ!」
「「「そんな事、無いよ♪!」」」
と、女子達に言われてしまった。
準備が調い、手動で船のハッチを開けて外に出る。そこから見える首都の光景は、近未来の建物が林立しているようだったが、よく見るとそれらは、全て崩壊していて廃墟の様だった。
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