第5話 ウプシロン帝国の実情

 ソウタ達がアブダクションされる1年程前(地球時間で)の事、アンドロメダ銀河のウプシロン星でソーラーストーム(地球で太陽嵐と呼ばれてるもの)が発生していた。


 ウプシロン星という恒星(地球に対する太陽に当たる)で、非常に大規模なフレアが発生してソーラーストームが爆発的に放出され、それに含まれる電磁波・粒子線・粒子等が、惑星や宇宙船や人工衛星等に甚大な被害をもたらしたのだ。


 アンドロメダ銀河反帝国同盟軍はこの機会を逃さず、かつてから計画していた魔物による生物テロを帝国首都星エリューズで実行した。

 反帝国同盟軍所属の天文学者の1人が、ソーラーストームが高い確率で近年中に起こる事を予想していたのだ。


 帝国首都星エリューズを含むウプシロン星系の惑星全体(太陽系の惑星全てにあたる)でブラックアウト(電源喪失)が起こり、予備電源も起動させることが出来なかった為に、帝国の全ての電子機器は完全に沈黙してしまった。


 反帝国同盟軍は、ソーラーストームを引き金として魔物を発生させるダンジョン核を、予め帝国支配領域の各惑星中心地に秘密裏に設置していた。

 その為に、帝国首都星を始め支配領域の全惑星でダンジョン核から魔物が溢れて、人間を襲い始めたのだった。



 知能の高い魔物の上位種は下位種を率いて、電源施設やサーバー施設、ホストコンピューター施設、軍事施設を攻撃して、惑星全体を無力化していく。

 そのように行動するようにと、予め魔道具で洗脳しておいた上位種を、魔法陣を使ってダンジョン核に閉じ込めておいたのだ。

 全てのコンピューターが停止してしまった帝国首都星エリューズは、生物テロに対処する事が全くできなかった。

 防衛用システムも治安維持用システムも停止していて、ロボット兵士やロボット警官、アンドロイド兵士やアンドロイド警官も停止したままだった。



 ウプシロン帝国のルドルフ皇帝一族は、強い魔力と高い科学技術を独占してアンドロメダ銀河を専横していたが、ソーラーストームが帝国に破滅をもたらすとは微塵も考えていなかった。


 反帝国同盟軍は帝国が独占管理している科学技術が、アンドロメダ銀河の他民族国家を不幸にしていると考えていた為に、ダンジョン核による魔物沸きテロを計画したのだった。

 しかしソーラーストームもダンジョン核も、予想の斜め上を行く効果が出てしまった為に、自分達の艦隊も航行不能に陥り、魔物に対処出来なくなってしまっていた。


 アンドロメダ銀河を管理している全ての科学設備を魔物に破壊させるつもりで、魔物を制御する魔道具を多数生産していたが、その魔道具は科学施設を積極的に破壊させるが、人族への攻撃を止める事は出来なかった。

 複数の術式を重ねる事は、魔道具の高価格化に成る為に予算が足りなかったのだ。


 そして科学施設を破壊する魔物により、科学技術で封じ込められていた凶悪な魔物達迄が、更に解き放されてしまった。

 それらは人族の勇者でも、容易に太刀打ち出来ない凶悪な魔物ばかりで、中でもギガギドロンは3つ首に竜の体の巨大な魔物で、古代竜とヒュドラのDNAを融合した変異上位種だった。

 首都星エリューズの『国立魔物生態展示館』には、アンドロメダ銀河全体から集められた、生きた凶悪な魔物達が見世物になっていた。

 解放されたギガギドロンは、荒れ狂って破壊の限りを尽くし、首都星の都市は殆ど壊滅してしまった。

 その後ギガギドロンは、何処かへと飛び去ってしまい行方不明となっている。



 一方で無人軽巡洋艦CL5501は、ウプシロン星系の最外周の惑星で巡回警備任務にあたっていたが、ソーラーストームが発生した時に惑星の反対側を航行中だった為に、帝国艦隊でただ1隻、その影響を受けずに済んでいた。


 軽巡洋艦CL5501のAI(コードネーム:サリーナ)は、情報分析を的確に図ると緊急探索任務に移行した。

 しかしアンドロメダ銀河内では、反帝国同盟軍に緊急探索任務の邪魔をされる可能性が高いと判断した為、アンドロメダ銀河から最も近い天の川銀河へと向かい、魔物討伐ができる手段を探す事にしたのだった。


 そして天の川銀河を探索する事一年、太陽系第3惑星からの魔力的な念波を感知して、辺境の星の知的生命体に僅かな望みを託して、ワームホールをくぐって行ったのだった。

 軽巡洋艦CL5501のAIサリーナには、魔石と魔術回路も組み込まれていたので、魔力念波も感知する事が出来たのだが、それはアンドロメダ銀河の科学技術では普通の事だった。

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