第4話 タイムリープ

『今この船は 地球の自転速度、太陽の公転速度、天の川銀河の周回速度、天の川銀河の宇宙空間疾走速度、アンドロメだ銀河の接近速度を最大限に上乗せ利用して、その上でハイパータキオンドライブを行って移動しています。その結果として地球からアンドロメダ銀河まで約5万年で到着できるのです』


「はぁ、何となく分かったけど……。でも5万年後のアンドロメダ銀河の社会は、すっかり変わってしまってるんじゃないの? 僕達を連れて行く意味って、あるのかなぁ?」


『あります。

 実は首都星に到着する直前に、この船ごと5万年前にタイムリープする事になっています。

 実質、2,537,000光年の距離を一瞬で移動した事になるということです』


「凄い! アンドロメダでは、そう言う事が頻繁に行われてるんだね?」


『いいえ。

 タイムリープは問題の多い技術なのです。

 既に起こってしまった過去の事象に影響を与えて変化させてしまうと、次元の齟齬そご(タイムパラドックス)をきたして、この世界そのものが宇宙ごと崩壊してしまう危険性を孕んでいるのです。

 ですから冷凍睡眠カプセルに入る事は、外界との係わりを極力遮らせていただくという目的もあるのです。

 ただしそれでも世界が崩壊してしまう事はありますので、タイムリープの使用は帝国の法律で厳しく制限されています』



「うん? 今迄に世界が崩壊してしまった事が、あるみたいな言い方だけど、今いるこの世界は大丈夫だったんだよね?」


『世界は1つだけではなく、沢山の別の世界が有ると言われています。

 そして、ほぼ同じコピーの様な世界が多数存在しているらしいのです。

 もしその内の1つ、若しくは複数が崩壊しても、他の世界は残っていると言われています。


 実はタイムリープすると元の世界ではなく、他の世界に移動するのです。

 同じ世界の過去や未来に移動する事は推奨できません、高確率で世界が崩壊してしまうからです。そこで他の世界へタイムリープする事で、崩壊のリスクを低減しているのです』



「サッちゃんは沢山の別の世界と言ったけど、それって次元の違う世界もあるってことなの?」


『あります。

 高次元や低次元の世界も多数有ると言われてます。

 私達が今いる世界はどちらかと言うと、かなり低次元な世界ではないかとも言われています。

 例えで説明させていただきますので『大きな本棚』を想像してみてください。


 私達の今居る世界は『大きな本棚』の、下から4段目の1冊の本に過ぎないと仮定します。

 同じ段には沢山の本が並んでいますが、その1つ1つが平行世界なのです。

 同じ段に存在していても、通常は他の本と中身が行きかう事はありません。

 そして上段にも下段にもギッシリと、別の本が並べられているのです。

 いったい、どこまで上段があるのか確認されてはいませんが、魂が肉体を離れる時に理解できるのではないかと言われています』



「僕達がタイムリープで他の世界に移動したら、この世界には僕達が存在しなかったことになってしまうの?」


『いいえ。

 他の世界の貴方達がこちらの世界に来ます。同じ段の本である、ほぼ全ての平行世界で同じ事が起きると考えられています。

 それはただ、同じ世界で時間跳躍しただけの様に感じられてしまいますが、間違いなく他の世界に移動しているのです。さもなければ高確率で世界は崩壊してしまうのです』


「それって崩壊していくうちに、徐々に世界が減っていってるってこと? やがていつか、何もなくなってしまうの?」


『いいえ。

 世界は無くなりません。

 同じ段のある本が無くなる(1つの世界が崩壊してしまう)と、その段を満たすかの如くに新しい本(新しい世界)が作られて補充されると言われてます。

 しかもスグに歴史は追い付き、同じ時間軸でその段の世界全てが平行に存在し続けると、言われてます。

 それで【世界5分前仮説】「世界は5分前につくられた」などと言う人がいるのですが、幾つかの世界では紛れもない事実なのです。


 本棚の同じ段の本は全て同じに見えますが、読むと本筋に影響を与えない範囲で、微妙に内容が違います。むしろ一つとして同じ本は無いのです。

 長い歳月をかけて同じ段の全ての本(世界)が、お互いに整合性を取り合っているからです。

 プロローグとエピローグが同じでも、細部で少しずつ違う内容の本が並んでいるのです』

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