第3話 睡眠学習と銀河間航行技術

 ソウタ達は現代地球の技術より、かなり高度なレベルの仮想現実世界にダイブした。

 軽巡洋艦CL5501に搭載されてるそれは、人間が冷凍睡眠で長距離移動している間にも、睡眠学習として使用できるように改良されたものだった。


 5万年という長い冷凍睡眠期間中に、ソウタ達は仮想空間で遊びたい事や知りたい事や学びたい事をやり尽くしたが、それでも暇を持て余すようになると、コンピューターライブラリを漁り、アンドロメダ銀河全体の情報収集データから、更に知識欲を満たすのだった。


 情報だけではなく現実の如くに体を使った体験もできた。そこでの経験は冷凍睡眠後の肉体にも影響を与えるという事だ。武術、生産、工芸、科学、物理、数学、歴史、言語、そして魔力や錬金術もアンドロメダ銀河では存在していた。

 しかも、人が搭乗して操作するロボットもあると言うので操縦訓練も受けた。

 ただし現在はアンドロイドが主役で、ロボットに活躍の場はあまりないとの事だが。


 アンドロメダ銀河は、科学と魔力が高度に融合した世界だった。




 ソウタは魔術の勉強中に、ふと疑問を感じて、ツインテールに赤渕メガネでリクルートスーツ姿のA.Iサリーナ(軽巡洋艦CL5501を制御してるコンピューターであり仮想現実空間での案内人)に質問した。


「サッちゃん、5万年も移動時間が掛かるって言ってたけど、アンドロメダに転移の魔法や科学技術は無いの?」


『あります。

 しかし転移魔法は最上級時空魔法に分類され、使用出来る者は少なく、移動距離や重量や体積も、その者の魔法能力次第で制限を受けます。


 また、科学技術でも転移は出来ますが、生命体はワープやワームホールに入ると死んでしまいます。それは次元の歪みに肉体が破壊されてしまうからです。そこを抜けて転移先に出ると元の肉体が復元されますが、命は復元できないのです。


 物体には命が無いので、元の形に復元されれば使用上の問題は有りません。

 ですからこの船は、科学技術のワームホールを使い、アンドロメダ銀河から天の川銀河迄、約30分で到着しましたが。生命体は微生物に至る迄、一切同乗していません。この船は今、ワープやワームホール等の科学的な次元跳躍技術を使わずに、最も早い方法でアンドロメダ銀河に向かって移動しているのです。


 因みに、命を復活させる魔法も科学技術も、アンドロメダ銀河にはまだ存在していません。

 クローン技術はありますが、物理的かつ肉体的には同じ生物でも、魂は別物だと言われています』



「ふ~ん。でも約250万光年の距離を5万年で移動するのだから、光の速度を越えて移動する技術を既に開発してるってことだよね?」


『はい、光よりも早く航行できますし、光より早い物質も発見されています』



「えっ、そうなの? 地球では光が一番早いと思われてる筈だけど?」


『僅かな地球滞在期間でしたが、その時に収集した情報では、素粒子ニュートリノが既に発見されているようです。ニュートリノは光より速度が早いですね。


 そもそも地球は、1日に1回転して元の所に戻って来ますから、赤道上では24時間で4万km回転したことになります。 これを時速に直すと 時速約1700kmになります。 つまり赤道上の地点は、常に時速1700kmで動いているのです。

 そして地球は物凄いスピードで宇宙を進み、1年で太陽を回っています。 その速度は時速約10万7000 kmです。

 地球は自転しながら太陽を公転し、太陽は天の川銀河(銀河系)の中心を周回し、天の川銀河は宇宙空間を疾走しています。


 地球の動きは相対的にゆっくりと見えますが、宇宙マイクロ波背景放射(cosmic microwave background:CMB)と比較して計測すると、猛烈な速さで動いていますが。我々がそれほどの速さを感じないのは、速度が常に一定だからです。

 信じられないかもしれませんが、地球は秒速600km(時速216万㎞)という猛烈な速さで宇宙空間を突き進んでいるのです。

 というのも地球は太陽を公転し、太陽は天の川銀河(銀河系)の中心を周回し、天の川銀河はビッグバンで放出された放射線の流れの中を疾走しているからなのです。

 地球の自転は相対的にゆっくりとしていますが。一方、天の川銀河は秒速600km(時速216万㎞)もの速さで宇宙空間を疾走しています。


 天の川銀河が動く速さを、近くにあるアンドロメダ銀河に接近する速さで表すことがありますが、これは必ずしも最適な比較対象ではありません。

 たくさんの銀河が天の川銀河とは相対的に異なる速さで動いていますので、それらと比較するのではなく、考えられる中で最大の動く物質、CMBと比較した速度なのです。宇宙マイクロ波背景放射(cosmic microwave background:CMB)は、ビッグバンの名残を示すかすかな放射線で、宇宙空間を満たしているのです。


 計測によりますと、CMBは特定の方向から発せられ、風のように流れていることが示されています。

 しかし、全てが動いている為に、速さは相対的に表されることになるのです。


 すると、地球は太陽の周りを秒速29.8kmで公転し、太陽は天の川銀河の周りを秒速230kmで周回していますが、CMBと比較したときの太陽系が動く速さは秒速370kmとなり。さらに、天の川銀河がCMBを突き抜けて進む速さは秒速600kmとなります。


 もちろん、地球にいるとそんなに速く動いているとは感じられんませが。人は速度ではなく加速しか感じ取れないのです。

 つまり、我々が感じられるのは速度の変化だけということで、たとえ時速100kmで車に乗っているとしても速さは感じられません。

 車窓を流れる景色を眺めることはできますが、それは天文学者が星を眺めることで地球の動きを観測するようなものなのです。ただし、人はブレーキを掛けたりアクセルを踏んだりしない限り、速さを体感することはないのです。

 それと同様に、地球の自転や天の川銀河を周回する太陽系の猛烈な速さを、人は感じることはありません。これらの速さは常に一定で相対的なものだからです。


 また一方でアンドロメダ銀河は、地球がある天の川銀河に向かって時速約40万キロメートルの速度で接近しています。約250万光年という距離離れていますが、約40億年後には天の川銀河にぶつかると見られています。


 今この船は 地球の自転速度、太陽の公転速度、天の川銀河の周回速度、天の川銀河の宇宙空間疾走速度、アンドロメダ銀河の接近速度を最大限に上乗せ利用して、その上でハイパータキオンドライブを行って移動しています。その結果として、地球からアンドロメダ銀河まで約5万年で到着できるのです』

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