02.

 丘の上。


 今日は、曇っていて、過ごしやすかった。いつものように、ノートブックを開いて景色を眺める。


 描きたい。空を。草原を。海岸線を。そう思っても、ノートブックは、真っ白なままだった。


 風。湿っていて、暑さを感じる。


「はあ。はあ。はあ」


 声、というか、息遣い。


 立ち上がった。また、昨日の誰かが来るのだろうか。


「待って。待って、ってば」


 足を掴まれた。


 目の前。


 女の子が、へばっていた。顔と身体の左側に、たくさん草がついている。


「やっと会えた」


「離してください」


 足首。なかなか、強めに掴まれている。


「せめて話を。おはなしを、しましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る