【2-4】2020年4月20日 パンタフェルラ・サルメル

1ヶ月程前に請けた依頼がようやく終わり、ゼルハースの荒い振動にもやっと慣れて来た頃、見慣れたショルヘの外壁が目に飛び込んで来た。今回はショルヘで一番大きな商会、トリムス商会の会頭からの直々の依頼で、約1000ケルメルも離れた東のローゼラス王国の国境近く、ピルネー湿地帯での大きな仕事だった。


支部長同席の下、会頭から直接聞いた依頼内容は、ピルネー湿地帯に生息するマガンボとギスヘルトの討伐だった。何故商会からそんな依頼が来たのかと疑問に思ったが、話を聞いて納得した。


トリムス商会はイゼリフ王国全土に商圏を広げた国内有数の商会だ。その事業の一環として、予てよりピルネー湿地帯に繁殖しているトルメ草を採取し、人族共通医療機構メステックへ無償で卸していた様だ。トルメ草は人々の難敵、腰痛を改善する成分を含有している。人族共通医療機構メステックの薬剤部門では、トルメ草から抽出した成分を調合した腰痛に効く軟膏を製造しているが、トリムス商会はトルメ草無償提供の見返りとしてその軟膏を破格の値段で買い取り、主にショルヘで販売する事で莫大な利益を上げていたらしい。腰痛とは無縁だった為、その薬の名前すら初耳だった。


だがそんな旨味のある商売に、暗雲が立ち込めた。


湿地帯の今まで魔獣が出なかった区域に謎の猛毒が発生し、トルメ草を採取出来なくなったのだ。その猛毒は体内に入ると、意識の混濁と全身痙攣を引き起こす作用が有り、すでに数名の商人が亡くなっているとの事だった。


焦った商会は冒険者協会ショルヘ支部に原因究明の依頼を出した結果、デクル・ニークスを代表とした黄金級4人組が派遣される事となった。調査依頼を受け、協会支部がショルへに駐在する人族共通医療機構メステック支部へ協力要請を出した事で、毒物を主に扱っている医術師2人を一行に加える事が出来たデクル達は、早速ピルネー湿地帯の調査を始めた。各々が毒対策を施した上で湿地帯に足を踏み入れた一行。医術師は毒の採取、冒険者は原因の究明に重きを置いて調べた所、ギスヘルトがマガンボの葉を齧って飲み込んだ後、新種の毒を吐き出している事を突き止めた。


ギスヘルトは、2メル程の体長をした4足歩行のトカゲの様な魔獣で、第11種指定魔獣。特筆すべきは吐き出す毒で、吸い込むと眩暈と痺れが起こる為、対策をしないと組全滅を招きかねない危険な魔獣だ。


一方、マガンボは主に水溜まりの上に自生する植物型の魔獣。普通の草花の様に擬態して目の前を通った人間や動物を捕食する事で有名な第13種指定魔獣だ。通常は1メル程の体長だが、捕食する際は口の部分が瞬間的に大きくなり、人間を丸呑みにする程巨大化する。


一見して結びつかない両者であったが、ギスヘルトがマガンボの葉を摂取すると、元々持っていた毒性が活性化し、空中に散布された毒の浮遊時間の大幅増加に伴う散布領域の範囲拡大が確認されると共に、元々持っていた毒の効果が何十倍も跳ね上がる事がメステックの詳しい調査によって判明した。


その事実はデクルから直接聞いていたので、記憶に新しい。


本来ならばピルネー湿地帯はメーファン支部の管轄の筈だが、ショルヘに居を構えた会頭がショルヘ支部に依頼して来た事と、メーファン支部を拠点としている冒険者では少し荷が重いという事で、調査はデクル達が行い、その厄災の原因である両魔獣の討伐は私達の冒険者組が請け負う事となった訳だ。


メステックの担当医術師から必要な対策と簡易的な討伐効果検証方法を学んだ上で臨んだ為、ギスヘルトの毒にやられる事も無かったし、散布領域の縮小も順調だった。


察知能力に非常に長けた斥候のアーラが戦闘準備と補助の陣頭を取り、魔術も物理戦闘もこなせるロダンが幅広く対応。戦闘時は私が最前線を担当し、いつも通りの連携で滞り無く確実に殲滅して行った。


だが、約300平方ケルメル程も広がる湿地帯に広く生息する2種の魔獣を減らしていくにはとにかく時間がかかった。幸いにも近隣に村があった為、そこを拠点にして活動出来た事で、当初の予定では完遂まで2ヶ月を見込んでいたが、少し過労気味に動き回った結果、3週間程でほとんど2種を見なくなった。


さすがに根絶は不可能だったが、支部長へ依頼が達成出来る見込みと予定帰都日を急速便で報告すると、私達が村を出発する前に、同じく急速便で支部長から連絡が届いた。どうやら討伐効果を子供達パスパルの担当者が事後検証してくれる事となった為、安心して帰って来いとの内容だった。滅多に無い大規模な依頼で精も根も尽き果てた私達は、ゼルハースの振動に上下しながら休息を取り、無事支部で報告に至ったという訳だ。


「いや~~マッジで疲れたけどこの報酬を見たらやって良かったよなー!」

「だな。今夜は打ち上げと行こうぜ。俺の行きつけの店で美味いゼプロ揚げを出す所があるんだ。疲労を癒すにはそれが一番だ!」

「おおお~いいじゃんか?冷えた麦酒をカーッといきたいね!ね、パンタも来るっしょ??」


私達が支部に帰って来たら会頭が既に待ち構えていた。どうやらドロムさんから既に依頼の達成を内々に聞いていたらしい。厚くお礼を言われ、魔証文による確認を済ませて窓口でサルマに報告書を提出したら速やかに報酬が支払われた。


てっきりドロムさんに直接報告しないといけないと思っていたが、事前に急速便で内容を伝えていた為不要との事だった。正直ありがたい。ドロムさんと直接話す時はいつも緊張してしまう。


「まだパスパルの結果待ちという事を忘れない様に。それにギスヘルトとマガンボの魔核や材料も売却しないと」


「あー移動が長かったんですっかり忘れてたな。いくら旧型とは言え俺の拡張袋がパンパンとか初めての経験だぜ。入りきれなくて大分捨ててきちゃったよなぁ」


「え~?そんなの明日でいいじゃーん!今一番必要なのは英気を養う事だぜっ!」


「全く…でも、そうだな。たまにはいいかもしれない」


「おっ!よっしゃあ!そうこなくっちゃ!ではロダン君、案内してくれ給え!」


「フフフ、承知致しました閣下。ではこちらへ」


心置き無い仲間同士のやり取りに少し苦笑しつつ協会の出口に向かった時だった。


「パンタフェルラさん、そのお2人も。少しお話が有ります」


振り返ると、急いでこちらへ走って来た様子の副支部長が居た。


「イレネスさん?どうしたのですか?」

「支部長からお話が有ります。至急支部長室へ向かって下さい」

「え゛っ!?何で?直接報告は必要ないんじゃなかったの?アタシ達これから打ち上げなんだけど!」

「すみません。それほど長くは取らせないと思いますので、どうか」

「な~~んか嫌な予感すんなぁ…?」

「仕方無いだろう。分かりました。今から向かいます」



一度心を落ち着けて扉を開けた先には、何故か神妙な面持ちをした支部長と、見慣れない赤い髪の少年が長椅子に腰掛けていた。


「ドロムさん。只今戻りました」

「おうお疲れさん。大仕事をやってのけたな。ちょっと前にカフカから魔鳩便で速報が来たがどうやら問題無いそうだ」

「マジですか!?やった!アタシ達の勝利だ!」

「ヘヘヘ、苦労したもんなぁ。早く麦酒で乾杯してえな!」


仲間の喜びの声が響き、拳を合わせた。

ホッとした。

頑張った甲斐があった。


「良かったです。それでドロムさんお話というのは?」

「ああ、とりあえずこれを受け取れ」


そう言ってドロムさんが、向かい合う2つの長椅子の間に置いてある会議卓に小袋を3つ並べた。中身を確認すると…


「ええええええ!?何このお金!?ドロムさん!何これ?」

「今回のお前たちの仕事に見合う追加報酬だ。遠慮なく受け取れ」

「マジかよドロムさん!俺アンタに一生ついていくよ!」


正直驚いた。

私たちが半年かけて手にする報酬が全て詰まっていたから。


「こんなに…?いいんですか?」

「ああ構わねぇよ。子供達パスパルのお墨付きだ。良くやってくれた。俺も鼻が高いぜ」


支部長直々の追加報酬だ。

改めて頑張って良かったと思った。

…が、ドロムさんは続けざまにこう言った。


「そんなお前達を見込んで折り入って話があるんだ」

「はい、何でしょうか?」

「実はな、ここにいる少年の事なんだが、今日から6日間程お前らの組で預かってくれねぇか?」


…意味が分からない。

この少年を預かる?


「すみません、どういう事でしょうか?説明をお願い致します」


「そうだよな。実はこいつはある事情で、今保護者がいないんだ。かと言って路上に放り出す訳にもいかねぇ。俺は俺で色々ある。そこで、心から信頼できるお前らにこいつの保護をお願いしたい。」


「はあ、その間私たちは支部に拘束される事になるのでしょうか?」


「いや、王都近郊の簡単な魔獣討伐依頼であれば請けてくれていい。その代わりこいつも現場に連れて行って保護を継続してくれ」


手元の袋の紐をギュッと締めたアーラが声を荒げる。


「ドロムさん!それは訊けねぇよっ!いくら近郊とは言え魔獣を相手にしてたら何が起こるかわからねぇ!責任取れねぇよ!アタシは反対だ!」


「俺も同じ意見だぜ。見た感じ単なる村の少年って感じだ。いくら俺達が実績を積んで来たからと言って、魔獣を相手にする時は自分達の事で精一杯だ。そんな中この少年を守りながらなんて出来ればやりたくねえ。アンタなら分かるだろ?」


「私も同様です。同意出来ません。保護するのであれば支部内に張り付けてでも外に出さないべきです」


ドロムさんは腕を組んで何かを考え始めた。


「…わかった。本当の事を言おう。実はな、こいつは俺のいとこが産んだ俺の最後の親戚だ。つい昨日の話だが、そのいとこが俺の家を突然訪問して来た。俺は懐かしさに歓喜したが、そのいとこにはとある事情があってすぐに王都を発ってしまった。こいつを保護して欲しいと頼み込んでな。俺は快諾したよ。何せ俺の血縁だからな。だが発ってしまった後に気付いた。仕事で王宮に缶詰だとな。そこで誰かに預けようと思ったんだが、頭に浮かんだのはお前達3人だった。お前達なら遂行してくれるだろうってな。かと言ってお前たちの活動を阻害するのも気が引ける。だから王都近郊のそこそこの討伐依頼程度だったら仕事をこなしながらこいつの保護が出来ると思ったんだ」


私も含め3人とも顔を見合わせどうしたものかと悩んでいた時、その少年が口を開いた。何やら自分の服の袖で目元を拭っている。


「うっ…うっ…おじさん、そこまで俺の事を考えていてくれてたんだね。俺、嬉しいよ。俺、このお姉さん達なら信じられる気がする。俺を守って欲しいよ」

「うっ…すまねぇな…俺がお前を見てやれないばっかりに…お前に苦労をかけちまう…」


ドロムさんまで右手で目元を覆い隠し始めた。まさか…泣いているのか?聞いた事無いぞ、あの鮮血のドロムが…泣いているのか?

横の2人も目を白黒させている。


「なあお前ら…確かにこれは私情が入った一方的な俺のお願いだ。だから更なる追加報酬を考えている。いつを6日間保護して無事両親に引き渡せたら、今お前らが手に持っている金額の5倍を出そうと思っている」


その発言を聞いて両脇の仲間が飛ぶように跳ねた。


「うっ嘘でしょ!!この5倍!?ハイっ!ハイハイ!アタシやります!やり遂げて見せます!!」

「俺もやるぜ!この仕事には命を懸ける価値があるッ!」


非常に魅力的な報酬に湧き起こる気持ちも分かるが、ただ少年の命には代えられない。私は勇気を持って答えた。


「ドロムさん、ご意向は分かりました。ただ…それであれば尚更この子は支部に置いておくべきだと思います」

「なっ!パンタ!?まさか断るつもり!?」

「おい、パンタ、冷静になろうぜ。俺らはやれる。やり通す自信がある筈だ。もう1回考え直そう、な?」


仲間たちが私を説得してくる。

だが、あらゆる可能性を考慮すると、やはりどう考えてもここに留まる方が安全だ。

そう思っていたらドロムさんがこんな事を言い出した。


「そうだよなパンタ。それでこそこの支部の筆頭だ。お前のその流されない所、俺は心底信頼している。…そこでどうだ、パンタ。この仕事を完遂した暁には、お前の特例昇級を推薦してみてもいいと思っている」


「うそっ!?パンタッ!良かったじゃん!」


胸を1発、ドンと小突かれた様な気がした。

決意していた筈の心が揺れる。

もしこの仕事を完遂したら私が烬灰級に上がれる可能性が出て来る…?


私は予てから烬灰級に上がりたかった。筆記試験は既に合格しているし、依頼実績も足りている。単独討伐はドロムさん立会の元、何とか成し遂げた。


だが昇級を邪魔するものがあった。

そう、イレネスさんから内々に教えて貰った烬灰級昇格条件である『中規模国家首都創設協会支部の支部長指名依頼完遂実績1件』という項目だ。


この支部は小規模国家首都支部。

詰まる所、ドロムさんの指名依頼を何件完遂しようが昇格条件に満たないのだ。だが、私はここショルヘ支部で、ただ1人の最低限戦力階級だ。私以外に白楉級は居ない。つまり私が他支部へ活動の場を移してしまえば、この支部の根幹を揺るがす事態になる。それだけは避けたかった。


私はこの支部が大好きだ。

職員のみんなもいい人たちばかりだし、何よりドロムさんとイレネスさんの二人が織りなす支部の空気感が好きだった。


勢いで突っ走る支部長とそれを冷静に嗜める副支部長。この支部を拠点とする冒険者はその二人の小話を肴に酒を飲む事が多い。稀に冒険者同士の飲み会に参加すると、出席者はいつも2人への愚痴から始まるが、酔いが回った後は、最終的にはやっぱりあの2人がいてこそのショルヘだと、いつも話が落ち着く。


そんな支部から白楉級が居なくなればその2人が、いや2人だけじゃない。一般職員も大変な思いをするかもしれない。それが回り回って依頼人の不利益にも繋がるかもしれない。だからこの支部でしばらく活動しようと決めていた。


だが、そうなれば烬灰級には上がれない。

そんな葛藤を抱えていた私に千載一遇の好機が舞い込んで来た。


やってやれなくはないと思う。

ただ一つ気になる事が。


「少年、君はどう思っている?この辺りは比較的安全とは言え魔獣との戦闘は命の危険がある。そんな所に同行したいか?」


少年が行きたくないと言えば、期限まで適当に王都見物でもさせとけばいい。

だがそんな私の目論見を少年は全てひっくり返してきた。


「うんついて行きたい!俺お姉さんたちが戦ってる所見たいよ!俺冒険者に憧れててさ…実はおじさんが俺を連れて行けって言うのも俺が我儘を言ったからなんだ。冒険者についていって魔獣倒してる姿を見たいって。当然おじさんは反対したけど、もし聞いてくれなかったら俺1人でも見に行くって。それでこんなお願いをしてくれてるんだ…」


成程。保護すべきなのに危険な所に連れて行けとはどういう矛盾だと疑問に思っていたが、この少年の希望に沿ったものか。


やってもいい、やってもいいんだが…


「どうしても踏ん切りがつきませんか?」

 

後ろから声がしたので振り向くと、いつの間にかイレネスさんが支部長室に入って来ていた。


「イレネスさん…」

「パンタフェルラさんの事ですから、報酬とこの子の身の安全を秤にかけられないのでしょう?」


そうだ。

ドロムさんの大事な血縁であれば尚更置いていった方がいいと思ってしまう。やはりこの話は…


「では考え方を変えてみて下さい。例えばこれが掲示板に貴方達宛の正式な指名依頼として貼られてあったとしたらどうしますか?」


「…断る事は出来ません。請けます。」


「そうですか。ありがとうございます。そのお考えが嬉しいです。副支部長として感謝致します。つまり今あなたの悩みの種は、やらなくても良い状況かやらなくてはならない状況か、という違いだけです。請けて頂けますね?」


何か妙な違和感を感じるが、実際イレネスさんの言う通りだ。公開して指名を受けているか非公開で相談されているか。公開されている状況を想像したら、やはりやらない訳にはいかない。


「わかりました…引き受けます…」

「やった!報酬5倍だ!」

「マジで家買えるかもしれねぇな…アタリつけとくか…」


ハラハラと私の反応を伺っていた2人は既に依頼を達成したかの様にはしゃいでいる。一瞬ドロムさんとイレネスさんと少年が目配せをした様な気がしたが…


「よし!話は決まりだ!んじゃ今日から6日間だな。こいつの事よろしく頼むぜ」


「王都近郊の危険度の低い魔獣の討伐依頼でよろしいですね?」


「ああ、それでいい。余裕があれば戦闘での立ち回り方なんかもこいつに教えてくれたらありがてぇ。どうやら無茶する傾向があるみたいだからな」


「分かりました。出来る限り指南します。では早速?」


「ああ。おいライド、行って来い。あまり我儘言うんじゃねぇぞ?」


「おじさん!イレネスさん!ありがとう!お姉さん逹、よろしくお願いします!」


「ああ、では行こうか」


支部長室を出た4人が階段を降りていく音が遠くで聞こえる。


「見事な連携だったな…」


「ええ、全く。異常な好待遇に疑問を持たなければいいのですが」


「俺の私財を投げ売ったとでも言えば大丈夫だろ」


「もし何かの拍子で奥様や娘様とあの4人が会ったらどうするのですか?嘘がバレるのでは?」


「うっ…そこまでは考えて無かったぜ…まぁ何とかなるだろ」


「ずさんな…賄賂を受け取るからこういう事になるのです」


「聞こえが悪ぃな!上司から承認された正当な必要経費と言え!そう言うお前だって焼き菓子を受け取ったじゃねぇか!さっき1つ食ったがとんでもなく美味かったぞ!」


「うっ…意図に気付いた時はもう遅かったのです!それに神聖級からの手土産なんて

 断れる訳ないでしょう!」


一通りお互いを罵った後無駄な時間を過ごしている事に2人は気付いた。


「何言ってももう引くに引けねぇからこのまま突き通すしかねぇだろ…」


「はぁ、何事も無ければいいのですが…」


「パンタが何とかするだろ。おう、そうだ。真面目な話になるが、明日はここを不在にするぞ。湿地帯の件で陛下と謁見だ。報告が主だが、意見交換会という名の食事会にも出ないといけねぇ。だから終日お前が俺の代理をしてくれ。支部出勤は明後日だ」


「分かりました。一時的に魔印を上書きしても?」


「ああ、今やっておこう。こっちに来い。………よし、これでいい。事務処理に必要な書類はこの引出しの中に纏めてあるから仕上げをしといてくれ。支部長印も捺印を許可する。じゃあ後は頼んだぜ」


ドロムは衣装棚に掛けてある外套を大雑把に羽織りだした。


「今日はもう退勤ですか?」

「ああ、ちょっと買い物にな。…何だよその目は」

「いいえ、別に何も。いってらっしゃいませ」

「含みがあるな…あの4人の事で何かあったらすぐに言えよ?」

「当然です。この支部始まって以来の神聖級依頼ですから」

「それが子守りとはなぁ…」





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エンプシー・リギウスのよいこのための

わくわく魔獣図鑑


          出版:生命生体研究所

          共著:冒険者協会



15、セズメ

   うみをおよぐさかながたまじゅうだ。

   からだは20セルメルくらいでうみに

   ただようちりをたべているよ。

   さかなだとおもってたべないように。

   おそろしいもうどくをもっているから。


   だい20しゅしていまじゅうだ



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