第2話

 ひとまず女の子を連れて孤児院の前に戻ってきた。久しぶりの孤児院は緊張するものがあり、不安もあった。子どもたちに受け入れられるかの心配である。その緊張が伝わったのか、女の子は僕の手を握り、「大丈夫だよ。」と一言言った。僕はその言葉を胸に、孤児院へ一歩踏み出した。


 喧嘩になった数人を集め、僕は開口一番、


「あなた達の気持ちも考えず、発言してごめんなさい!」


 と言った。その発言に子どもたちは驚いたようで、ソワソワする者やムスッとしている者が目を同時に見開いた。


「僕には両親がいます。その両親とはとても良い関係を築いています。しかし、貴方達と僕との接しかたに違いはありません。僕の両親は平等という考えがモットーにあり、普通の親でしたら差別はあるかもしれません。ですが、僕の両親に限っては絶対に、絶対にありません!


 例えば僕のオモチャは、施設の人達全員に渡されているものしかないです。他のオモチャは自分で貯金して買いました。それぐらい僕の両親は徹底して、平等な考えをしています。

 だから、自分が愛されていないとか…言わないで…。」


 最後の方は言葉にならなかった。グシャグシャに泣いてしまった。自分の考えを言うのが、こんなにも辛いものだとは思わなかった。その様子をみた女の子は、心配そうに僕の手を握る。その様子をみた子どもたちは、僕につられたのか次々と泣いた。泣きながら「僕の方こそごめんなさい」や、「許すよぉ…」とかの声が上がった。また、今回の騒動に関係のない子どもたちも次々と集まり、みんなで泣いた。


 女の子も僕の様子を見て、「私も…仲良くして欲しい…です。」と言った。引っ込み思案な女の子が、そう話すのを見て驚いている僕を他所目に、孤児院の子どもたちは次々と「いいよ」と仲間に入れていた。これによってこの件は解決となった。

 

 他人の考えは自分とは違う。そのことを心に置いてひとは付き合い、仲を深めていく。そんなことをこの件で僕は学んだ。それと同時に、孤児院を引き継いで経営していきたいと僕はこの時思った。


 それから月日がたち、僕は大人になった。両親はもう引退して、隠居していた。僕は女の子と共に、孤児院の跡を継ぎ経営をしていた。女の子とは恋人同士で、結婚も視野に入れていた。そう、入れていたんだ。僕の人生は平和に過ごして終わるのだと思っていた。

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