創作ノート① なぜ「東南アジア風ファンタジー」なのか
ここまで小説をお読みいただいた皆様、本当にありがとうございます!
この先、少しばかり、この小説を書いた背景や刺激を受けた素敵な作品の数々、さらに作中人物のモデルなどについて筆を進めていきたいと思います。
まず、私がなぜファンタジー小説としては異色の「東南アジア圏」を舞台にした作品を書いたかについて。
十数年前、私は自分の住む町に居住する外国人を対象に、日本語を教えるボランティアをしていました。
その日本語教室に、ある日、日本語の全く分からない14歳のフィリピンの少年が、お母さんに連れられてやって来ました。何でもそのお母さんが、少年を置いて日本に出稼ぎにやって来て、何年か働くうちにそこで日本人と結婚する事になり、少年を呼び寄せる事になった、との事でした。(少年の生みの父親は失踪し、お母さんはシングルマザーでした)
14歳でいきなり全く言葉の分からない日本で学校に編入。こりゃーなかなか大変だぞっ! て事で、ボランティアが代わるがわる時間を取ってその子のために特別授業を行っていました。
いきなり知らない環境に飛び込んで、緊張のためか英語でも(彼は英語はよく出来た)あまり喋らなかった彼ですが、日本の同世代の子にはまず見られない不思議な色気があり魅力的な子で、日本人ボランティアはみんな彼の事が好きでした。
そして私は彼の緊張をほぐすために、日本語を教えるだけでなくフィリピンについて色々尋ねたんです。するとある日、彼はかなり真剣な表情で、「地元でよく出没する妖怪」の話をし始めたんですね!
「妖怪」と言い方が正しいのか分かりません。(彼は英語で「ゴースト」とか「スピリット」という言い方をしていました)。
それは実に具体的かつ恐ろしいものでした。例えばバナナの木の下に潜んでいて通りがかりの人を襲って食べる妖怪。
あるいは夜な夜な下半身を切り離して上半身だけで飛び回り、屋根の隙間からストローみたいな舌を差し込んで生まれたばかりの赤ちゃんを食べる妖怪……。(フィリピンで『アスワン』とか『マナナンガル』と呼ばれる存在である事を、後で知りました)。
本当に驚きました!
14歳にもなる少年が、地元の妖怪について、まさに現実に息づいているものとして話をする事に、私は大変興奮しました。
そして、東南アジア圏を舞台にした「妖怪もの」の小説を探したのですが、一向に見つかりませんでした。
「無いなら私が書いてやろーじゃん!」
この時の経験から、教育×妖怪×東南アジアというアイデアが生まれました。
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