第9話 妖怪ハンターの子ナティ 1

 橋を渡り切る少し手前で、ナティはマルにいきなり服を引っ張られて立ち止まった。

「ねえ、おらやっぱり橋の向こうに行くの怖いよ。母ちゃんも兄ちゃんもいないから、怖い人がいても母ちゃんの服の下に隠れられない」

「怖がることなんかねえよ。俺がついてるじゃねえか!」

「でも、誰かがおらを見てバケモノって言って石投げてきたら?」

「そんなへなちょこな石、当たりゃしねえ!

なんなら俺が、飛んで来た石、ヒョイヒョイ! とつかんで相手のキンタマに当ててやらあ! ついでにキンタマ落としやがったら みやげに持って帰ろうぜ!」

 ナティはそう言って、自分の服を掴んだイボだらけのマルの手を取った。

(橋の向こう側の連中が怖いだと? マルと俺が一緒なら鬼に金棒さ! だってどんなに威張ってて強そうな奴らも、こいつを一目見たら怖くて逃げだしちまうもんな!)

 実際、この小さな相棒は全身どこもかしこも至る所醜いイボに覆われているのだ。そのイボは時間がたつとやがてポロリとひとりでに落ち、そこから何とも気味の悪い紫色の汁が出て、しばらくすると再び新しいイボが生えてくる。ナティだってマルに出会ったばかりの頃は気持ち悪くて仕方が無かった。しかもこのイボイボ病は近くに寄るとうつると言われている。でも、今ではナティはお構い無しだ。

「こんなおっかねえ病気、なれるもんならなってみてえや!」

 ナティにとっては、きれいな顔でいるよりみんなに恐れられることの方がよっぽど羨ましかった。しかしナティは、マルとほとんど毎日遊んでいるのに、ちっともイボイボ病がうつらないのだ。

(……そういえばこんな話を聞いたことがあるぞ。イボイボ病にかかるのは魔女に気に入られた子だけだって。嫉妬深い魔女はその子の体を醜いイボで覆って誰にも触らせないようにするんだって。まあ、俺は魔女なんかに絶対気に入られるはずないもんな!)

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