死生観



緑目の罪人は言う。


「兄が私を、最期まで生かしてくれた。だから、私は生きる。私が、私が殺した、兄の分まで。」



黒髪の文豪は言う。


「あれが生きてる間は、私も生きる。あれが死んだら、……まぁ、どうにかする。」


赤髪の狂人は言う。


「私がいるうちは、先生には生きててもらわなきゃね。私が死んだら、しばらくしてから迎えに行きますよ、多分。」



忘れもしないあの日を、頭の隅に刻み込んで。

彼女らは生きている。


己を全うする為に、生きている。









黒く塗れた蜜りんご。


色を溶かした白い花。


磔けられた若き月。



さようなら、と、その一言を。

言えたならどれだけ良かっただろう。


献花は無い。当然のことだ。

彼女らを知る者は、一握りにも満たない。


嗚呼、抑、彼女らという骸が。

この世に存在しないのだから。



消えた面影を探して、誰かが生きる。

消えた存在を悼んだ、誰かが追って。

消えたはずの彼女を、誰かが廻す。



彼女らは時間に埋れた亡者。

涙さえ塵と化して、彼女らは透けていく。







雨は止まない。


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