デジャヴ
壇上の彼女は、心底嬉しそうに笑みを浮かべて、私を見つめている。
「ほら、こっちに来て?」
「指輪を見つけたの、お揃いの指輪!」
彼女は私を見つめている。
足がすくんで動けない。
彼女が近付いてくる。
私は、何も出来ないで、
ちがう。
せんせい、
先生?
どうしてそんな顔をしてるの?
飛び起きた。
隣には未だ眠っている先生がいる。起こさないように極力音を消して仮眠室から抜け出した。
悪い夢。最近はよく見る。まるで体験したかのような痛みと、苦しみと、哀しみ。
あれが何なのか、進行中のプロジェクトを放り出して研究しているものの、解明は出来ていない。
見た事があるような、無いような場所に、鉄錆にも似た臭い。苦し紛れに吐き出した声は言葉にならなくて、ただ空気に溶けただけ。
忘れた記憶なのかもしれない。忘れた方がいい記憶なのかも。けれど、研究者であるからには、見えていなければつまらない。
どうにかして解明してみせる。少し眠ってスッキリした頭をまた酷使するため、私はデスクに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます