第7話 前夜

 我慢しろっつったって!こんな誘惑されたら無理だろ!

 そんな本音を押し殺しつつ彼女のいうことに従い、彼女の後を追う。

 彼女は大通りから外れ、細い道へさらに細い道へと進んでいく。

 いつしかあたりから建物一つ見当たらない山の近くへと来ていた。


 やばくね!?最近の学生ってこんなところに住んでんの?

 華やかな見た目から都会っ子だとばかり思ってたわ。

 それにハニートラップするなら、都市の方がやりやすいだろ!

 

「なあ。なんでこんな田舎に住んでんの?」


 俺は素朴な疑問を口にする。


「都市は家賃が高いので。ここら辺は田舎ですが比較的都市部へのアクセスが良いので、ここに住んでるって感じです。」


 ちひろはそう答え、奥の家を指差した。


 古い家だなあ。それが最初に出てきた感想だった。

 なんというか、おじいちゃんおばあちゃんが住んでいるような年季の入った家といえば伝わるだろうか。

 少なくとも女子高生が住む感じの家ではない。


「おにいさん、入らないんですか?」


 俺はどうやらしばらくの間、家を眺めていたようだ。


「すまんすまん、今行くわ。」


 俺はすぐに彼女の後を追った。


「お邪魔しまーす。」

「どうぞ―。」


 俺は戸を開け、家の中に入る。

 ボロい感じの家の外見とは違い、中はとてもきれいに掃除されていて綺麗だった。


「綺麗に掃除されてるな。」

「えへへ♡ギャップ萌えしました?♡」

「建物にギャップ萌えなんてねーよ!」


 思わず突っ込んでしまった。


「えへへ♡」


 彼女は突っ込まれて嬉しそうだ。


「そういえば。」


 彼女が何かを思い出したかのように言った。


「お風呂入りませんか?」


 いつの間に沸かしてたんだ?準備がいいな。


「俺は後でいいぞ。」

「ん?一緒に入るんですよ?」

「なんでだよ!しかも素で言ってんのかよ!」

「その方が節約になるんですよっ!おにいさんは私に浪費をさせようとしてひどいです…。♡」


 仕方ない。

 彼女の生活を苦しくするわけにはいかないのだ。

 彼女のためにも、一緒にお風呂に入るのが優しさってもんだ。

 自分に言い聞かせ、


「よし、入るか。」

「そうこなくっちゃ♡おにいさんならそう言うと思ってました♡」


 彼女の望むように動いてるな俺。

 まあいいか。いまさらだ。


 風呂の戸を開けると、


 狭かった。

 これ二人で入れる広さじゃないだろ!

 そんなことを俺が考えてるとも露知らず、


「おにいさんも入りましょうよ~」


 なんて言ってくる。

 俺はさすがに彼女と向き合って入るわけにはいかないので、背を向けるように入る。

 が。


 彼女は俺の背中に胸を押し付けてきた。

 制服越しでは味わえなかった本物の感触がダイレクトに伝わってくる。

 それが背中に触れる。感覚を忘れまいと俺は全神経を背中に集中させた。


むにゅ♡


 柔らかな感触が脳裏に刻まれていく。

 それとともに俺の股間は膨張を始める。


 これはヤバい。

 ちひろに知られたら…!


「大きくなっちゃいましたね♡」


 ああ…。

 気づかれてしまった。


 彼女はお風呂から上がり、体を洗い始めた。


「おにいさんも一緒に入りましょうか?」


 俺も上がり、一緒に洗い始める。

 背中を洗ってくれるちひろ。

 俺の背中が終わり、正面を洗ってくれようとする。


「いいよ、こっちは自分で洗えるから!」


 俺はそう断り、自分で洗おうとするが。


「大丈夫です♡私があらいますよ♡」


 通じてない!

 俺が大丈夫じゃないんだよ―――!

 思いを声に出すことはできなかった。

 なぜなら―――――。

 すでに彼女によって股間が握られていたからだった。

 彼女の手の感覚。温度。あたたかなぬくもりが俺の理性を破壊していく。そして、その快感が思いのほか大きくて…!


「ああああああああ!」


 その瞬間何かが発射された。


 女、女子高生の前で…!

 俺が情けない姿になっていると。


バタン


 風呂の戸が開けられ、


「あ~ら、何をしてるのかしら?」


 威圧感のある声が、後ろから。

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