第5話 焦り
なんてことだ。
俺は最初から彼女の掌の上で踊らされていたということなのか。
俺は苦しんでいる女子高生を助けただけなのにどうしてこんなことになってしまったんだ!
どうして…こんなことに。
「おにいさん、どうしたんですか♡絶望したような顔してますよ?♡」
お前のせいだよ!ほんとはそう言いたかった。
後ろめたいことをしていなければの話だ。
「大丈夫ですよ、おにいさん♡私はおにいさんにエッチなことされたなんて、誰にも言いふらしませんから♡」
バレてる。
どさくさに紛れて体を触ったつもりなのに…。
「どうしよう…」
小声でそうつぶやいてしまう。
彼女には聞こえているのだろうか。
「でも、おにいさんは優しいひとでした。もしかしたら声をかけても無視される可能性もあったので。私が苦しんでいるのは芝居でしたけど、介抱してくれたのは嬉しかったです♡」
「なんとかしてあげたいと思ってな。でも、体を触ってしまったのは、」
「気にしないでください♡性的欲求は人間の本能的なものなんですから♡」
女子高生にこんな慰めをもらうとは…。みじめすぎるだろ俺は。
「さっきほのかがどうとか言ってたよな。お前たち知り合いなのか?」
「はい♡同じ高校に通う友人です」
「そうなのか。二人ともそうだけど、男の人を誘惑するのは良くないぞ。ほのかにもやめるように言ってもらえるかな」
はっきり言って心臓に悪い。
「はい。と言いたいところですがそれは難しいです。これから働くために必要なことなので」
「すまん、どういう意味だ?全然つながってこないんだが」
「物分かりが悪いですねぇ~」
悪かったな。
そういえば。
「名前はなんていうんだ?」
さっきから話していたけど聞いてなかった気がする。
「私はちひろです。ほのかの、友達です。」
強調するように言った。
「私もおにいさんに聞きたいことあるんですけどいいですか~?♡」
誘惑するような甘い声で。
「おにいさんはハニートラップって知ってますか?♡」
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