第3話 本題

「明日また会いましょうね、おにいさん♡」


 彼女の言葉が頭を駆け巡る。

 ほのかがいろいろしてくれるのは嬉しいのだが、いまいち彼女を信頼できない。

 綺麗な薔薇には棘がある。

 美しいものや魅力あるものには危険をはらんでいることが多いという意味だ。

 一体彼女は何者なのだろう。一見普通の女子高生にしか見えないのだけれども…。

 頭を巡らせても答えは出ないので、ほのかで妄想を膨らませ寝ることにした。


 朝になっていた。

 快眠である。

 朝食を食べよう。

 食パンにバターを乗せ、トースターに入れる。

 しばらくするとバターがとろけ、いい感じに仕上がっている。


 朝食を食べ仕度をして、家から出る。

 会社に向かうため、最寄りの駅へ向かい電車に乗る。

 しばらくすると。


 あの駅からほのかが電車に乗ってきた。

 彼女は僕に気づき、胸を押し付けながら俺に話しかけてきた。


「おにいさん♡また会いましたね♡」


 彼女が甘ったるい声で話しかけてきた。

 それはやめてくれ!

それをされたら俺は…俺の股関は…!

 

「大きくなっちゃうんですね♡」


 補足された。

 俺の脳みそが読まれているみたいだ。

 単純な思考回路をしていることは自分でよくわかっているけれども。


「ふふふ♡今回はおにいさんにお願いがあってきたんです」


 お願い!?

 急に何なのだ。


「どういうことだ、ほのか」

「私たちだけではできないことがあるので、おにいさんに手伝ってほしいんですよぉ♡」

「手伝うのはいいんだが。昨日今日ほのかが俺にしてきたことと関係あるのか?」

「大ありですよ♡」


 どういうことなのだろう。

 全く話が繋がってこない。

 私たちがということは複数人が絡んでいるのか?


「まさか、性犯罪に遭っているのか?」

「おにいさんからですか~?」

「おい、人聞きの悪いこと言うなよ…」


「おにいさんが触ってきたのは事実じゃないですかぁ~」


 そうだけど!

 まあ、さておきだ。

 彼女の抱えている問題は少し大きいものかもしれない。

 はっきり言ってめんどそうだ。

 断っておこう。


「ごめんほのか。俺最近忙しくてほのかの問題に付き合える時間がないんだ、だから」


 断ろうとした。

 ところが、


「ショックです…。おにいさんが信頼できると思って話したのに…」

「ごめん、そういうのは専門の人に聞いた方がいいと思うしさ。」

「ひどいです…。なら」


 ん?


「おにいさんに痴漢されたとこの場で叫んでもよろしいですか?」

「ダメ!俺が社会的に死ぬから!」

「だったら協力してくれますよね?」

「はい…」


 そう言うしかなかった。逃げ道はない。


「そう言うと思ってました♡おにいさんに相談してよかったです♡」


 また明日お話ししますね。

 そうほのかは言って去っていった。


 はぁ。

 どうやら大変なことに巻き込まれてしまったのかもしれない。


 ほのかと別れ、会社に向かう。

 今日も今日とて夜遅くまで仕事があり、会社を出るころには八時をまわっていた。

疲れた。


 そんな顔をして、駅のホームに向かうと。

 ベンチで蹲る少女がいた。


「助けてください、おにいさん」

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