02 まだ夢の途中.
今日もたぶん、寝れない。
もともと、間に合うかぎりぎりのところで、ねじ込まれた依頼だった。仕方がない。置かれた状況を活かし、いま持っている武器で闘う。それでこそ、自分の人生。
汗を拭って、彫刻刀。
欠けてきた。でも、これを使わないと。欠けて力が入らないなら、そのまま。直線を曲線に。真っ直ぐを、三次元に曲げていく。
自分の人生を、持てるもの全てを、注ぐ。生きている。ここにいる。それだけを、ひたすらに主張させていく。もっと。もっと自由に。もっと大きく。もっともっと、誰かの消えかけた心の灯火を、照らすように。
彫刻刀を鞘に納めて胸に挟み込み、筆と絵具。バケツ。バケツはどこだ。
絵を入れていく。街角に設置するものなので、色はなるべく薄く、主張しないように。素早く、塗り直しのないように正確に。彫り直し描き直す暇はない。
筆と絵具も胸に挟んで。
コーティングに移る。それほど保つものでもないが、とりあえず三ヶ月ぐらいは生き残ってほしい。
誰かの心に、届くように。
まだ夢の途中。私も。あなたも。そういう思いを込めて。
日々を生きる。せいいっぱい。
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