声なき心、まだ夢の途中

春嵐

01 声なき心.

 自分というのが、稀薄。


 意志というものを、あんまり感じたことがない。なんとなく生きて、そして、なんとなくしんでいくというのだけが、おぼろげに認識できる限界。


 たぶん、こんな自分にも、子供の頃は意志があっただろうし、生きる力にもあふれていた。それが、生きていくうちに、すり減って。かぎりなくゼロに近い量。


 何かが原因だったとか、特別な出来事があったとか、そういうわけでは、ない。普通の日常。普通の仕事。普通の生活。そういう積み重なった普通が、ゆっくり、ゆっくりと、自分の生きる力を変質させていったんだろうか。


 また今日も。


 起きて。


 仕事に行って。


 帰って。


 寝る。


 そういう、普通が続く。


 普通の日々に順応するには、生きる力をぎりぎりまで少なくするのが、いちばん適応に早かったんだろう。それだけ。何も思わない。何も感じない。普通の日々。


 眠る前、心に手を当てる。


 何も、聞こえない。声も、意志もない、ただの心。空っぽの空間。精神。


 何もない。それだけを確認して、眠る。起きてこないことを、少しだけ、願って。

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