八千年の魔女

蓼原高

プロローグ

 僕は狂気の中にいた。もう深夜だ。睡眠薬を飲んでも全く眠くならない。


突然、昼に見た光景が脳裏にフラッシュバックする。


あの光景のあまりの恐ろしさにまだ頭がついて行かない。永遠に続きそうな夜をやり過ごすため、仕方なく慣れないコーヒーを飲む。


 苦くない。ドブの香りがする砂糖水のようだ。全く苦くない。なぜ?


  そうなのだ。目も耳も鼻も、なにかに触れる感触さえ、今までと違う。これはきっと、全て、罰なのだ。しかし、何の罪に問われているのか。


「生まれたことが原罪である」


昔母に読み聞かされたイエズの聖書の一節が頭に響く。そうか。そうなのか。だが、だが、なぜ?




 誰も答えない。幻聴でもいいから答えが欲しかった。





そのまま、無限に続きそうな夜は更けていった。

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