2-7

「うまっ!」


「当然」


 ――時刻、六時ちょい。

 我が家の居間にて朝食。


 ご飯、味噌汁、焼き魚。目覚めに続いてこれまたベタな朝の献立。些か昭和の匂いがするが、日本人の朝食といえばやっぱこれだねって感じ。定番中の定番、王道中の王道。

 味噌汁の味わいは微睡む頭と寝起きの体に優しい。焼いた魚は朝に丁度よいタンパク質を秘めている。米に関しては日本人なら語る必要なし。質素に見えるからといって侮ってはいけない、このメニューはちゃんと計算されたものなのだ。食の文化こそ日本にあり。


 で、そんな説明は別にどうでもいい。美味ければそれでいい。丸くて小さい卓袱台に乗っているそれらを、先に述べたテンションとは裏腹に慎ましく俺は食べている。

 まともな朝飯は久し振りだ。いつもは食べないかコンビニで買ってきた物なので、内心うきうきしているのを隠しながら箸を進めていた。


「いや、冗談抜きで美味いな。味噌汁とか俺好みの味付けだよ。やればできるじゃん日法」


「その偉そうな言葉は癇に触るけど、美味しそうに食べるその醜い顔に免じて許してあげる。私の寛容をありがたく思いなさい」


「はいはい感謝感謝。……てか、お前料理なんて作れなかっただろ。何でまた」


「別に。あなたに食べてもらいたいから勉強しただけよ。それが何か?」


「…………」


 箸が止まる。けれどすぐに動かす。気取られない為に。


 ……こいつ、こんな言動で接してくるくせに、俺に対して異性としての好意を寄せていたりする。勘違いとか思い上がりではなく、小学生のあの時から、こいつは俺の事が好きになって今でもそうらしい。好きと直接言われた事はないが、時々こうやって、恥ずかしい言葉を当たり前の様に口に出すのだ。


 嘘をついているようには思えない。……まあ声に感情がない訳だけど。


 嘘をつくような奴には見えない。……まあ顔に感情がない訳だけど。


 そもそも、男の家に泊まって翌朝早起きして飯を作っている時点で答えが出ているも同然。

 ただの世話焼きの幼なじみ? ははは、それこそアニメの見過ぎです。好きな男性の為に尽くす女性、いま恥ずかしい事言っちゃったけど、それは現実に存在する心理。

 何かしらの企みがあるのかという線も考えたが、小学生から始まって八年も続けている所を考えると、悪巧みで騙しているようには思えない。スパイじゃあるまいし。


 ……という疑心暗鬼は、しかし結局、中学卒業と共に晴れた。その時期に、まるで事前に決められていたみたいに、母さんと父さんから家族の秘密を明かされたから。

 別に驚きはしなかった。大体の予想はついていたし、いつかは知ってしまうのだろうなー、とか思っていたので。だから驚愕はなく代わりに……呆然とした。その時になっていざ明かされてみると、やはりなんかこう、脳みそをごっそりもぎ取られた感覚。俺の予想よりも事は壮大だったのである。


 だから俺には高校生活の記憶があまり無い。と言うより覚えが曖昧。その日からものの見方がすっかりと変わってしまい、空虚に似た日々を送っていた。

 荒縫日法と一緒、互いの心情は正反対であれど同族。彼女は小学生の時に知って、俺は中学生の終わりに知った。彼女という人間性は少し重くて、俺という人間性は少し軽かった。それだけの話。早いか遅いか、重いか軽いか、それだけの。

 境遇が似通っていたのでわかった。空っぽだった彼女が俺を標的にした理由。しつこくそばに居続けようとする理由。

 ……慕う理由は彼女なりの見解であり後々に知ったが。


 ――こいつは


 友達がほしかっただけなんだ――


「ねぇ、なぜ急に黙るの? もっと朝食の感想を述べるのが、作った人への礼儀じゃないかしら。いえ、そんな事云々よりもさっさと述べなさい」


「聞きたいなら聞きたいって素直に言いやがれ!あーあー美味いよ、ほんと美味い。いやー俺ってば幸せ者だねー」


「屑が」


「棒読みギャグに対して酷すぎるツッコミ! むしろただの貶し!」


 そこから、日法は黙ってしまう。まさか今ので満足したのか、それともご立腹なのか、黙々と箸を進めている。表情が何一つ変わらないので気持ちが掴みづらい。……相変わらず不器用な奴。顔に出てなくても、こいつの性格とさっきまでの会話で考えると、こういう時は決まって不服に思っている。もう少しわかり易けりゃ可愛げがあるんだけどなぁ、全くよぅ……。


「……まぁ、なんだ。…………………………ありがとう」


「あら、あなたでも御礼の言葉を発する事ができるのね。ふふ、喜ばしいわ。数年がかりでお手が出来るようになった駄犬の飼い主の気分とでも例えようかしら」


「だあああくそっ! 気を許した俺のミスだ。こんな奴にこんな言葉使うんじゃなかったよちくしょー!」


 ヤケクソ気味に飯をかっこむ。憤りを食物にぶつけてやる。でも、やはり味噌汁が美味かった。























「片付けるわ」


「あ、それは俺がやる。作ってもらったし」


「……そう」


 日法は面食らったように、きょとんとして座り直す。表情の変化はやはり無いのだが、雰囲気はしおらしい。悪態をつかないのは、俺の厚意に不意打ちされて何も思い付かなかったからだ。つかないのではなく、つけない。


 荒縫日法は、何気ない大した事ない気遣いに慣れていない。他人に関心が無い彼女は、唐突に優しくされると照れて調子が出なくなる。いつも貶されている事への仕返し……というつもりでもないが、その姿を見てしめしめと思ったりする俺。これが日常なら悪い気分じゃないんだけどなぁ。


 ――朝食を終え、食器を集めて、台所に立つ。二人とも残さず食べたので、三角コーナーに捨てる物はなし。スポンジを泡立ててシンクを拭いてからざーっと皿洗い開始。


「……んでさ、一段落ついた所で、訊ねたい事があんだけど。日法さん」


「何かしら?」


 きゅっと蛇口をしめる。食器の数が少ないので、皿洗いはもう終わり。


 正座して彼女と対面。


「それ。部屋の隅にあるやつ。旅行に出掛けるみたいにでかい鞄って、お前のだよな?」


 本当にでかい。身長が150cmくらいの人が体育座りすればすっぽり収まってしまいそうなほど。


「そんな事、訊かなくてもわかる事じゃないかしら。あなたみたいな万年金欠には必要ないものだから」


「余計なお世話だっ! ……つまりだな、何が言いたいかっつーと。お前……何泊する気?」


「数週間ほど。気が乗れば数ヶ月」


「長っ! そして図々しい!」


 どうやら思っていた通り、日法はここに滞在するつもりらしい。男が一人暮らしするこの部屋に、女で一人。今までも何度か泊まっていった事はあるが、留まるのはこれが初めてだ。


「あのなぁ、毎度の事ながら言っとくが……。俺は男でお前は女。何が言いたいかわかるよな。場合にもよるが、一泊だって未だに認めちゃいないんだ。それなのに何日もってお前」


「でも何だかんだ言いつつ泊めてくれるじゃない。昨日だって」


「場合によるってんだよ。って言うかお前、狙って夜中に来るだろうが。夜も遅いと俺が仕方なしに許すのをいい事に」


「あら、気付いていたのね。何だか癪だわ」


「住人の優しさに対して癪ぅう!?」


 癪とはなんだ癪とは。バレてないとでも思ったのかこの女。文句の前に謝罪しろ。そして感謝しろ。


「けれど詩乃。わかっていたとしても、それでも毎回あなたは私を泊めてくれるわ。文句たれても結局あなたは良い人というのは理解しているけど、それだとあなたの硬派気取りの言葉が希薄になるわよ?」


「ぐっ……いらん事言うな……」


「いいじゃない、別に。私がどこで何をしようと、虫けらである詩乃には関係ない、ましてや反論なんて認めない。あなたはただ私を受けいれてくれればそれでいいの」


「今更だが自己チューにも程があるわ! ここは俺の部屋! だからここで何かしたいのなら俺の許可が必要なのぉー! ムキィー!」


「それでは何、対価を支払えばよいのかしら」


 そう言って、日法は此方に近寄ってきた。おもむろに、四つん這いに。


「なっ何だよ。何する気……いや、ちょっ、なんですか!?」


 後ずさる俺。にじり寄る日法。何を考えてるのかわからない顔で近寄られると、何をされるのかわからないので怖い。


「男が女に求める事なんて、どうせアレだけなのでしょ? 私は、それなりには自分の容姿に自信を持っているのだけど、これでは駄目かしら?」


「おまっ……!?」


 なんか勝手に妙な取引を持ち出してきやがったぞ、こいつ。そんな話をしているのではない。しているのではない――が、紅潮してしまう俺はやはり立派な男の子!


「でも流石に、初めての性体験には恐怖が無くもないわね。処女だからきっと痛いのでしょうね。……服は、自分で脱いでもいい?」


「あ、阿呆っ、勝手に進めるな。誰もそんな事言ってないだろが。大体、そんなもんで許可なんかしないぞ!」


「――ちょっと待ちなさい。……そんなもん……あなた今、私の体を、処女を失う私の覚悟を、そんなもん、と言ったのかしら?」


 ――えっ、なんか怒ってらっしゃる!?


「聞き捨てならないわ。童貞のあなたに私の裸の何がわかるの。童貞のくせに図に乗らないでほしいわね。童貞なら童貞らしく恥ずかしさから何も言えずに固まってなさいよ、童貞」


「あの、日法……さん?」


「あなたみたいに中の下レベルの顔でしかない男には到底ありえないチャンスなのに、それを、そんなもん? 何様かしらあなたは。安いプライドでナメた事抜かさないで。童貞」


「ちょっ、あの、悪かっ」


「こんなに腹立たしいのは久しぶりだわ。感情が豊かではないのは自分でも自覚しているつもりだけど、こうも不愉快になれるなんて。詩乃は天才ね。相手を怒らせる天才。本当、なんて憎たらしい屑なのかしら。童貞」


「悪かった! 俺が悪かった! そんなもんなんて言ったのはただの照れ隠しで、真相はかなり期待しちゃってましたすいませんでした本当!」


 土下座。何で俺がこんな事しないといけないのか。でも土下座。


「謝るくらいなら始めから素直になさい」


「はい。すいません……」


 いや、それはお前に言える事だよ。とは言えなかった。


「私も鬼ではないわ。あなたの土下座なんて価値が無いに等しいのだけど、許してあげる」


「……ありがとう……」


「では」


「待て待て待て待てぇい! 脱がなくていい情事に及ばなくていい! 何日でも泊まればいいから!」


「あら、そうなの。じゃあそうするわね」


 日法は四つん這いからささっと正座に戻る。この女……。

 ……いいよ。もうどうでもいい。もう知らねっ。なるようになっちまえ。あ、洗濯物取り出すの忘れてたんだった。

 彼女を放っていそいそと立ち上がる。


「……でもね、詩乃」


「何だよ。まだ何かあんのか?」


 洗濯槽から中身の物を出してゆく。意識は洗濯物に向けて、彼女には空返事。

 女性が一人ここに滞在する事になったというのに、もういつも通りに戻る俺って、人がいいのか無頓着なのか。……まあ、結局は腐れ縁のいざこざ。引きずる気などさらさら無い。


 それに、日法となら間違いが起こる事はないし、と言うより起こしたくない。こんな性格の女だ。女性としての魅力は確かに感じるが、今以上の関係まで進もうなんて全く考えちゃいない。こんなのが恋人とかマジで恐ろしい――


「いつかは、ちゃんと私の全てを受け取って。私には、貴方しかいないから」


「…………」


 詩乃だけと生きていたい。それが彼女の理想。全部に関心が無く、全部が信じられず、全部が嫌い。

 その中で見つけた俺。自分と似た存在でありながら、自分が嫌っている全部に溶け込めるその不思議な存在に惹かれたという。なので俺以外はいらない。俺だけがいればそれでいい。――中学生の時に聞いた、日法が俺に想いを寄せる理由。


 ……悪いが、アダムとイヴなんか興味ないよ。けどまぁ……何だ……。そばには、いてやら無くもないんだがな……。


「何を想像しているのか知らないけど、とてもいやらしい顔になっているわね。気持ち悪いからこちらに向けないでくれるかしら」


「お前から始めたんだろうが!」


 やっぱこいつと二人きりなんて、絶対に嫌だ……!




























「そう言えばさ。翔とはどうなってんだ? 連絡とか面会してる?」


「いえ。そんな事しないわ。関係ないもの」


 それを聞いてピタリと、部屋の掃除を中断する俺。非情な言葉を放った本人を覗き見れば、涼しい顔して茶とか飲んでる。


「関係ないって……、弟だろ。姉として心配じゃないのかよ」


「全く。あの子は自分で進んで施設に入ったのだから、後の事も自己責任なのは当たり前でしょ。私に干渉する義務なんてない」


「ひでぇ女」


 まったくもってひでぇ。実の弟が心配じゃないのかよ。家族の近況とか気になるだろうよ普通は。俺でさえ施設に出向いた時は翔の顔を見ておこうって思ってんのに。……でも、面会を頼むといつも、精神が不安定だから駄目って断られるんだよなぁ。たぶん施設側の嘘なんだろうけど。


「……まあ、他人の事言える立場じゃねぇけど……。こちらとしては、関わり合いが無くて羨ましいよ。俺なんて2ヶ月に一度は呼び出しくらうからなぁ」


 しみじみと、部屋の掃除を再開。


「詩雄ちゃんの事ね。元気?」


「元気じゃない時なんて無いよ。あいつのデフォルトはスーパーマン超えてっから」


 我が妹こと詩雄。今となっては顔を合わせられる唯一の肉親。俺と同じく母さんの血を受け継いだ為、全うな人間ではない。現在クロちゃんの私的な秘密兵器として改造されている。


 ――詩雄の存在は、世間的には名前の公表もなく犯人死亡とだけ報道され、知人らには行方不明という嘘で通っている。A判定のシンカは発見次第殺害という決まり事の体裁を保つ為と、彼女がシンカだった事実を隠して混乱を避ける為だ。

 百名以上の人間を素手で虐殺した妹を取り押さえたのも、報道関連に根を回したのも、全てクロちゃん。恐ろしやクロちゃん。とんでもないぜクロちゃん。


「――今年で十七歳ね、確か。彼女の事だから、さぞかし美人になっているのでしょうね」


 でも、日法は詩雄が事件を起こした事も、今も生きている事も知っている。彼女曰く、そうでなければらしくない、との事。

 とは言いつつも、俺に真実を催促してくる辺りしまらない奴だ。暫くは渋って喋らないようにしてたけど、あまりのしつこさに根負けしてしまい、現状を教えてしまった。全部を話す訳にはいかないので取り敢えずは、死ににくい彼女は罪を犯したシンカ専用の牢獄に閉じ込められている、という事で何とか納得してもらっている。研究所の存在は絶対に漏らしてはならないのであるからして。


 …………じゃあ何で俺が知っているのかって?

 それは簡単。妹の呼び出しのせいだ。


 普通に考えるならば、だからといって一般人を極秘の施設に招き入れたりする事などありえない。しかし一時的とはいえ誤魔化す為に地上に出すのは危険。だが殺人鬼いもうとが我慢の限界を迎えて暴れ出したら死人多数、検体放棄、他の素体も便乗しかねない。


 と言うか……何より、妹は死んだ者とされている。たとえ俺が兄であろうと、情報漏洩はあってはならない。やはり殺してしまおうという意見もあったが、その方が生かすよりも面倒であり、それ以前に、失うには勿体なさ過ぎるチカラだった。元より、それ故に殺さず捕縛したのだから。

 様々な試行錯誤が飛び交う中、みんなの番長クロちゃんが口を開き、それを呆気なく制す。


“構わん。呼べ”


 妹がヤバいなら兄もヤバい、と曖昧な直感で身勝手に判断しやがったクロちゃんは、猟犬の如く俺に目をつけている。妹との会話の中でボロを出すか、もしくは妹が何かを話すかも知れないと思い至ったらしい。上層部も巧いこと言いくるめるとか……やり過ぎだと思う。


 けれど、そんなこんなで二年も経ってしまったので、今では電話の内容が嫌がらせに似た雑な言いがかりとなっているのであった。早く諦めてくれクロちゃん、あんたの読みは正しいから。

 因みに、世間に研究所の存在が知れ渡ってしまった場合、否応なしに俺が発信源だと断定するつもりらしい。クロちゃんに念を押された。いや、脅された。


 話は戻り。


「あー……そうだ、な。まぁ……」


 うちの妹は……まぁ、美人っちゃ美人ではある。面白可笑しく伸ばしている長髪が気味悪いが、顔は間違いなく男好み。


 兄が妹を美人と評価するのってどうかと思うが、正直自分でもキモいと思うが、実際そうなのだから仕方がない。中学の時なんて様々なイケメン君に言い寄られてたのに……何だってブラコンになっちまうんだよ。意味わからん。

 そりゃあ、幼い頃はいつも遊んでやってたけどさ。それだと逆に、年頃になってから距離を置かれると思うんだけどなぁ……。変な奴だまったく。


「心配だわ。童貞のあなたは性欲の化身。たとえ妹だろうと獣の如く襲いかねないから」


「ねぇよ! 何だよ性欲の化身って。ちょっと格好いいよ! 嫌だけどね!」


「嘘はよくないわね。現に、あなたさっきから私の胸と尻にしか目を向けていないわ」


「あれぇ俺いま掃除してんだけどなあ。床しか見てないんだけどなあ。お前には背中向けてんだけどなあ」


「隠したって無駄よ。あなたのエロに対する意志は、人体の構造をも超越するのだから」


「俺は女子の体を見たいが為に背中に目を生みだすってか!? あぁあん!?」


 あとそれ、俺の場合はギャグじゃ済みませんから。人体のあたり。


「煩いわね。いちいち叫ばなくてもいいと思うのだけど」


「っ〜〜〜!!」


 こいつは……!


「――はぁ……。お前の相手はほんと疲れるったらありゃしない……。てか、今更だけどお前仕事は? 最低でも何週間っつってたけど」


「辞めた」


「またかよ! ……もしかして、ここに泊まる為に辞めたんじゃないだろうな?」


「その通りよ」


「労働舐めんな馬鹿野郎!」


 荒縫日法は定職に就いていない。てきとうにバイトをして日々を生きるフリーターである。


「お前なぁ……そろそろ真面目に考えたらどうだよ。もう俺らも二十歳だぜ?」


「働きたくないから大学通ってるボンクラがよく言えたわね」


「う、うるせぇ!」


「定職に就く必要なんて無いわ。いつの日か、私は育児と家事に専念する事になるから」


「えーっと、これは燃えないゴミだな」


「下手くそに話を逸らさないでくれるかしら。将来あなたにサッカーチームを作れるくらい子供を孕まされるのだから、結局仕事なんてしてる暇は無くなるのよ。断言する」


「するな!」


 勢いよく否定するも、その光景を想像してちょっぴりほんわかしてしまう俺だった。


 ……あぁ、何で朝っぱらからぎゃーぎゃー騒がなけりゃならんのだ。静かな朝のひとときは暫くお預けか。先が思いやられる……。


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