その会話、本音につき
「よかったんですか?2人っきりにして」
アレクサンドが現れ、バンディットが立ち上がって対面した。
バンディットとアレクサンドが数秒目線を交わした後、バンディットはくくっと小さく笑うと2人で話してくると言って森の奥へ歩いて行った。
「バンディットの奴がいいと言うのだから仕方がないだろう」
「………まあいいじゃないですか、一番の親友同士水入らずでの話なんてもう二度とする機会もないでしょうし」
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「久しぶり……ってほどでもないね」
「たった1週間じゃねえかよ、寂しくなっちまったか?」
「……まあね、半年の間毎日話してたナナシが突然いなくなったらね」
「男じゃ唯一の友達だもんな」
「うるさいよ!」
「はは!俺はお前のことだから次の日には会いにくるかと思ってたんだけどな」
「色々と忙しくて行けなかったんだよ」
「……来る気だったのかよ」
「ゴリアテさん心配してたよ、オーガに殺されたんじゃないかって」
「……お前まさか」
「…………うん、まだナナシたちのことギルドにも学園にも言ってない」
「……よくエルザが許したな」
「エルザが一番大変だったよ、2人っきりの宿で3時間くらい説教されてね」
「色気もクソもあったもんじゃねえな」
「そっちは?魔王と何かあったんじゃないの?」
「あぁ、この後魔王が迎えに来る。イツァム・ナーって竜知ってるか?そいつの勧誘に行くんだよ」
「……また厄介な相手だね」
「心配してくれてんのかよ」
「当たり前じゃないか、殺されないでよ?」
「お前を殺すまでは死なねえよ」
「不老不死の薬でも探しに行く気?」
「……お前絶対いい死に方しないな」
「お互い様じゃないか」
「一緒にすんな、俺はお前と違って孤独死はしない」
「……孤独死って死ぬ時どれだけ寂しいのかな」
「…….真に受けるなよ」
「ふふ、ナナシに殺されておけば孤独死しなくて済むしね」
「本当にお前の友情重いよな」
「それ一番傷ついたよ」
「……まさかとは思うが雑談しにきたのか?」
「偵察がてらね」
「あんな堂々と現れる偵察があるかよ」
「久しぶりにナナシの事見たら我慢できなくてね」
「………どこから見てた?」
「泣いてるところをみたのは初めてだね」
「……死にてえ」
「なるほど、意地悪っていうのも存外悪くないね」
「……そういやエルザ大丈夫か?メアリーがこっちに来て大分きてんだろ?」
「ナナシたちが魔王と転移した後は酷かったね。枯れるほど泣いてたよ」
「……そうか」
「胸が痛むなら悪なんてやめたらいいのに」
「……【名を捨てた団】覚えてるか?」
「……もちろん」
「お前が殺した俺の家族だ」
「……うん、知ってた。知った時にはもう遅かったけどね」
「胸が痛むなら勇者なんてやめたらどうだ?」
「……なるほどね」
「そういうことだ」
「……もし僕がさ?」
「勇者じゃなかったら?だろ?」
「………うん」
「変わんねえよ、親友」
「………そっか、ちょっとだけ救われた」
「そういや緋剣ってどうなったんだ?」
「家から出てこないみたいだよ、セレモニーの後に見た人はいないみたい」
「悪いことしたな」
「悪いことの真っ最中のくせに」
「そりゃごもっともで」
「………知ってて報告しない僕も共犯かな」
「お前はこっちには入れないからな?」
「……これだから仲間はずれの寂しさを知らない人は」
「勇者とは思えないほど闇抱えてんな」
「ナナシにはわからないよ」
「……学園出てすぐの大通りにあるパイの店もう行ったか?」
「うん、あそこネザー様のお墨付きだって今大繁盛してるよ」
「やっぱネザーって腐っても王子なんだよな」
「あ、ネザー様がいなくなったって今国中大騒ぎだよ?そのうち捜索隊出るって」
「でもアイツこの1週間でいいサンドバッグ見つけたって喜んでたぜ?」
「誰のことさ?」
「メアリー」
「……恋人だよね?」
「恋人のフリしてただけだぜ?」
「……エルザが聞いたらナナシ殺されるよ」
「……ギルドと学園に俺たちのこと言っていいからそこだけ黙っといてくんね?」
「どうしようかな」
「秘密の共有って親友っぽいよな」
「……いいねそれ」
「扱いやすくて助かるぜ」
「………なんだろうね、ナナシが敵に回る前より本音で話せてる気がするよ」
「はは!最初からこの関係でも良かったかもな」
「ふふ……あ、この魔力……」
「お?魔王が来たみたいだな。お前はどうする?」
「んー……ちょっとだけ話をさせてもらおうかな」
「んじゃ行くか……お?魔力が膨らんだな」
「ナナシと僕が話してるのに気づいたんだろうね、僕嫌われてるみたいだし」
「メタルドラゴンを捨てたお前が悪い」
「……そうだね、それを差し引いてもガリアとリーのことは許せないけどね」
「言っとくけどそこは俺ら関わってないからな」
「散々邪魔してくれたくせに」
「そうでもしないとお前俺らに敵対しねえだろ」
「……まあね、でももう心配いらないよ」
「………言ったな?」
「うん、ナナシは僕の敵だよ」
「……お前もそうやって鋭い目で敵を見ることできたのか」
「この目を向けるのが親友なのが辛いところだよ」
「…….親友は変わらねえんだな」
「うん、こればっかりはやめられないよ」
「………あぁ、そうだな」
「ナナシ」
「なんだよフィーナ」
「……やっと名前で呼んでくれたね」
「宿敵って感じでいいだろ?」
「僕は好敵手くらいでよかったのにな」
「甘いんだよフィーナは」
「そうだね、僕は甘かった。だから2人を殺されて魔王を倒せずにナナシたちにも逃げられた」
「………あぁ」
「ナナシ、次はない。もう誰も殺させない、魔王は倒す、ナナシたちも逃がさない」
「……やってみろよ、悪の勇者の世界征服から世界を守ってみろ」
「当たり前だろう?僕は正義の勇者なんだから。悪を討ち滅ぼすことが僕のいる意味なんだから」
「窮屈な存在価値だな、生き方も死に方も選べねえなんてよ」
「……僕はこの後魔王と話したら僕は国に戻るよ。パーティーに空いたメアリーの穴を埋めなきゃだしね」
「はは!メアリーの代わりを探すのは苦労しそうだな」
「ナナシのせいなんだけどね」
「お前がしんどそうにしてるのを見ると苦労した甲斐があるってもんだ」
「安心したよ、はっきりと悪の側に立って性格がさらに悪くなると思ってたけどこれ以上悪くなりようがなかったね」
「俺はまだいけると思ってんだけどな」
「勘弁してよ……じゃそろそろ魔王のところに向かおうか」
「そうだな……フィーナ」
「何さ?」
「あー……なんだ……その…久しぶりに話せてよかったぜ」
「………ふふ、僕の方こそだよ。でも……ね」
「あぁ、今日でおしまいだ」
「……うん」
「どっちがどんな手を使って勝っても恨むのはナシだぜ?」
「わかってるよ、勝った方が正義だね」
「馬鹿か、勝っても俺らは悪だ。どっちも正しい戦争じゃねえんだぜ?」
「この戦いは負けられないな」
「そりゃこっちも同じだ」
「僕は絶対君に勝つ。死ぬ気で来てよ?」
「俺は絶対お前に勝つ。殺す気で来いよ?」.
「「親友」」
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