[幕間]残された勇者たちの訓練

「王よ報告があります」




転移者たちを鑑定した王の側近が、勇者について報告おこなう。




「なんじゃ」




「はい。先日報告しましたジエイタイなるスキルを持つ男は王都をたったそうです」




「そうかそうか、新しいスキルでも意味の分からんスキルだったからな。気色悪くて我慢ならなんだわ」




王はそういいながら横にあるフルーツを口に頬張る。




「して? その程度のことでお主は報告せんだろ?」




「はい。実は追放した際に、見送りに出ていた勇者の一人を誘拐し、馬ですら追いつけない動く箱によって逃亡したと報告を受けました。裏を取りましたが複数からの証言があることから真実であると」




「ふむふむ、見慣れぬ箱に誘拐であるか……それがジエイタイと言うスキルなのかもしれぬな。が、たかが馬より早く走る程度の乗り物こどき一つ我ら帝国の敵ではあるまいて」




「左様でございますね。我々には天下の騎士団がおりますゆえ心配はいらないでしょう。しかし誘拐された勇者の行方はどうしますか?体裁のため、現在捜索に5名の小隊を任務につけておりますが」




「それはそのままで良いだろう。勇者は後18人もおるのじゃそ奴らを鍛えれば何ら問題などありゃせん」




「かしこまりました。では手筈通り勇者の育成に参ります」




「うむ頼んだぞ、今こそ我ドラグオン帝国が天下を取るために」




「はっ!」




二人の勇者は放置になり、ほかの勇者の武力を持って世界を統一する算段をつけ、この密会を終わる。




勇者たちはこのことを知る由もなく、これから魔王を倒し、世界を守ると思い込んでいる。






昨日の豪華な食事会が終わり翌日、ついに勇者たちの戦闘訓練が始まる。




「今日よりお前たちの訓練が始まる! 


訓練期間は勇者ではなくただの訓練生だ、肝に命じて訓練に励むように!」




騎士団長のザクレスが勇者たちの前に立って演説をする。




そんな中に手を上げ質問する者がいる。




「すいません、質問いいでしょうか?」




質問したのは金髪イケメンで鑑定の際どよめきのあった、林道 傑と言う男だ。




「どうした?」




「昨日より二人ほど少ないと思うのですが、どうしたんですか?」




その質問にまわりも少しざわつき始める。




「奴らは訓練を嫌ったのか、昨晩逃亡したようなのだ」




「逃亡ですか?」




「あぁメイドが今朝迎えに行くとそこはも抜けのからになっていたそうでな逃亡したと検討つけられたのだ。今騎士団も捜索隊を結成して捜索しておるので、安心してくれ」




「そうですか、わかりました」




傑は一応その言葉に納得する。




「それではまずはランニングから始めてもらうぞ。訓練場を50周からだ!では始めろ!」




「え~」「マジかよ」




と勇者たちは次々に弱音や嫌がりを見せる。




「早くせんか!」




ザクレスは怒鳴り、地面にクレーターを作り出す。




「貴様らは今訓練生だ! 厳しくすると言ったはずだぞ!わかったらさっさといかんか!」




ザクレスが作り出したクレーターを見て、勇者たちは怯えた。恐怖からの服従は人を素直にする。




勇者たちはそれぞれのペースで走り終える。


最年長のサラリーマン山田ですら走りきっていた。

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