レーションは意外と売れました
冒険者ギルドを後にした俺たちはお金について振り返っていた。
先ほど臨時報酬があり、100万リム手にすることが出来たわけだが実際金についてリムという単位があることすら知らなかった。
それを美由に言うと「はぁ」とため息をついて、お金について説明してくれた。
「この世界のお金はリムといい、通貨別リム比はこんな感じです」
銅貨=100リム
銀貨=1000リム
金貨=1万リム
白金貨=10万リム
虹金貨=1000万リム
「となるそうです。これも全部メイドさんのメモに書いてたんですよ?ちゃんと見ましたか?」
やれやれ、といった感じで美由は説明を終える。
いやー車の運転してたんですもの。しょうがないですって。
え?宿で見れたでしょうって?すみません。忘れてました。
そんな茶番のような会話をしていると、馬車のマークの商業ギルドについていた。
商業ギルドに入ると冒険者ギルドとは全然違い、訪れている人も全体的に落ち着いた雰囲気がある。
しかし作りは大体同じ感じで冒険者ギルドにもあった受付に俺たちは進んだ。
幸い受付は空いていて、すぐに対応してもらえた。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
俺たちが前に行くと受付嬢のお姉さんが聞いてくる。
「えーと買い取って欲しいものが有るんですけど」
「買取ですね。魔物関連でしたら冒険者ギルドの方がよろしいですけど、どのような物ですか?」
「食品です」
「かしこまりました。ただいま担当のものに話をつけに行きますので、しばらくお待ち下さい」
厄介払いはされずきちんと対応して貰えそうだ。
俺は意外と異世界の接客に好感を抱いていた。
それから5分ほどして受付嬢と共に中年の男性がやってきた。
「お待たせ致しました。買取希望のお客様で間違い無いでしょうか?」
「はい。そうです」
「左様ですか。今回担当いたします。ボモルと申します。では早速個室に移動しましょう」
ボモルの後に続いて俺たちは奥へと進む。
「では、そちらにお掛けください」
俺たちは示されたソファに腰掛ける。
正面にボモルも座り、交渉が開始される。
「えーと食品の買取とお聞きしましたがどのようなものでしょうか?野菜などですか?」
まぁ確かに野菜などと思うかも知れないな。今の俺たちは田舎から自分たちの作った野菜なんかを売りに来ている人に見えているのかも知れない。
それでも交渉してくれる。うん。関心が持てるよ。
「いえ、野菜ではなくてレーションと言うものですね」
「レーション、ですか?聞いたことないですね」
「はい。実際に見ていただいた方がよろしいでしょう」
俺はバックに手を入れ、バックから取り出すように見えるようスキルでレーションを出す。
取り出したのは事前に温めておいた角煮丼だ。
「これが食品ですか? 食べれるようには見えませんが」
「表面のものはただの入れ物で食べ物ではありませんよ。食品は中のものです」
俺はレーションを開く。まず白ごはんのパックの蓋をとってご飯を半分に切り、半分をもう半分の上に乗せる。
それから容器の開いた半分の場所に角煮をいれる。これで角煮丼の完成だ。
「おー、確かに見たことのない食品です」
「実際に食べてみてはいかがでしょう」
俺はボモルに付属のスプーンを手渡し、食す事を勧める。
「では、頂きましょう」
ボモルが一口角煮を口に入れる。
「これは! 美味しい! レストランで出しても問題ない味です!」
レーションでも異世界ではかなり好評のようだ。
「しかし確かに美味しいですが、これが必ず売れるとは思えませんな」
「確かにただの食事ならそうでしょう、ですがこれは携行食なんです」
ボモルがその一言を聞いて驚きを露わにする。
「なんと! それは誠ですか!」
「ええ。調理法は簡単、直接沸騰したお湯で温めるか、専用の蒸気を発生させる物を使い温めるかです。どちらにしても温めれば食べれます」
「ふむふむ、しかしもう一つ何か強味があればこの商品を売り出すのにいいのですが……」
「でしたらこの商品は3年間持ちます」
「誠ですか!!」
ボモルは先ほどよりもさらに驚き身を投げ出してくる。
「食品でしかも調理済み、温めれば食べれるものが3年も持つと! 素晴らしい! 素晴らしいです!冒険者や騎士などに提供すれば必ず利益が出ますぞ!」
「本当ですか? それなら良かったです」
「このレーション一食あたり銀貨1枚でどうでしょか?」
1食1000リムか、悪くないんじゃないか?
「それで構いませんよ。それと先ほども言った蒸気を発生させる物は要りますか?」
「なるほどそれもありましたね。冒険中水は貴重です。節約できるならそれにこしたことはありませんからね。セットで銀貨2枚でどうでしょうか?」
「それでお願いします」
「その商品数はどのくらい納品可能ですか?」
「馬鹿げた量でなければかなりの量可能です」
「では手始めに2000食お願いします。」
そのくらいなら誤差の範囲だ。
「わかりました。どこか倉庫に置いた方が良いですよね?」
「そうですね。まさかとは思ってましたがそれ魔法のカバンなんですか? いやはや羨ましいですな。それは商人にとっては夢のようなアイテムですからな」
機嫌の良いボモルと会話をしながら倉庫に向かう。
「ではこちらにお願いします」
「わかりました」
俺は2000食のレーションを置く。
中身はさっきの角煮丼だけでは味気ないので焼き鳥、照り焼きチキン、ビーフ丼、親子丼などさまざまな種類を用意した。
「ありがとうございます。代金の方ですが現金とカードどちらがよろしいでしょうか?」
銀貨2枚のレーション2000食分を現金で貰うのは非効率だろう。金貨400枚になるからな。持ってるだけで腕がパンパンになってしまうわ。
「カードのほうにお願いします」
よって俺はカードを選択した。
「かしこまりました。ではこちらをカードと一緒に先ほどの受付にお渡しください。」
そう言って一枚の紙を渡してきた。そこには400万リムと書かれていて、それが小切手のような物なんだろう。
「それと、今後の取引はどうなさいますか?」
「私たちはこれからダンバの街に行く予定なんですよ」
「そうなんですか、なるほど」
ボモルは少し考えて「少し待っててください」と言って走っていく。
少したって息を切らしながら戻ってきた。その手には丸めた紙が握られている。
「はぁ、はぁ、お待たせしました。こちらを持っていってください。中身はダンバの商業ギルドで取引する為の内容になりますので見せていただければ取引可能です」
なるほど紹介状のようなものか、これが有ればお金に困ったときは売りに行けるな。
「このようなものまでいただいてありがとうございますでは失礼します」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
俺たちは小切手と紹介状を受け取りボモルと別れ、受付の先程のお姉さんの元へ戻る。
「いらっしゃいませ、先程のお客様ですね。商談はうまく行かれましたか?」
「ええ、おかげでいい取引をさせていただきました。」
「それはよかったです」
「えーと、こういうのを預かったんですけど」
そう言って400万リムと書かれた小切手の方を渡す。
「換金紙ですね。かしこまりました。振り込み先のカードをご提示ください」
受付嬢はカードを水晶でスキャンする。
それで終わりのようでカードを返却してくれた。
「これで振り込みは完了です」
「ありがとうございます」
「ではまたのお越しをお待ちしております」
俺たちはお金の獲得に成功して、次にこの世界についての知識を得るため(奴隷)を買うために商業ギルドを後にした。
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