冒険者ギルドはテンプレを期待しちゃう4

再び正面を向いてから合図をまつ。




俺は89式小銃を使おうと思っている。


もちろん人に向けて撃つのなんて初めてだ。


手は震えいる、だが俺はこの世界に来た時に決めたことがある。




敵であれば人に危害を加えるのを躊躇わない。冷徹になろう。と




そうしないと護りたいものを護れなくなる、そう思ったからだ。


今がまさにその覚悟を試される時だろう。




「では決闘を始めます。両者準備を!」




受付嬢の掛け声にお互い準備する。




89式小銃を取り出す。




「なんだそりゃ?おもちゃか?ゲバババ」




「……」




銃の切替レバーを安全装置がきかせてある「ア」から単発射撃を可能にするため「タ」に切り替える。




肩につけ、銃口は斜め下にしつつ撃つ体制を取る。




「それでは、始め!」




「おら!」




受付嬢の声が響くと同時に、髭が大きな斧を片手に突進してくる。




「ひょろひょろの餓鬼に俺のパワーは受け止められねぇよ!ぶちまけな!ゲバババ」




ぱんっ!




乾いた音が決闘場に響く。




ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!




続け様に3発、計4発の弾丸で四肢を貫いた。




髭も受付嬢も唖然とし、そして髭は崩れ落ちた。




「ギャァーーー!いでぇ、いでぇよ」




髭はあまりの痛さから子供のように泣きじゃくる。


大の大人が、と言いたいところだが実際に撃たれたことはないがその痛みは想像に難くない。




四肢に開いた穴から大量の血が出続けている。このまま行けば出血死に至るかも知れない。




「どうする?まだ続けるか?」




俺は問い掛ける。これでまだ争うならもう1発撃ち込むつもりだ。




「や、やめてくれ! 降参する!」




「あ?」




「降参します。許じてくだざい」




髭は最初の威勢など見る影もなく、動けない身体で許しを乞う。




結果として俺は勝ち、異世界でも十分武器は通用する、その確信を持てた。


髭にはその分は感謝したい。




「お姉さん、彼どうするんです?」




「天羅さんがギルドに処置を任せられるのでしたら、治療してまた冒険者としてやり直してもらう程度になりますね。もちろん治療費とかは本人に請求しますから」




「そうですか。ならそれでお願いします」




「あっ、それと今回の掛け金をこの後すぐに口座に振り込ませて頂きますね。」




「わかりました。お願いします」




「天羅さん」




受付嬢との会話が終わったタイミングで、美由が手を握ってくる。




「手、震えてます」




小刻みに震えている俺の手を美由は握りしめ、心配そうな顔でこちらを見ていた。




「ごめん」




俺は美由を抱き寄せて深呼吸する。




「ありがとう」




そっと美由を抱きしめるのをやめて離れる。




「いえ、よかったです」




美由も顔を赤くして答えてくれた。




「えーと、大丈夫なんですか?」




受付嬢のお姉さんも心配してくれているようだ。




「大丈夫ですよ。もう落ち着きましたから」




この感覚実際には慣れるのだろうか?人を殺める事に慣れるというのは少し抵抗がある。


だが、それでも俺は確信した事もある。


武器が通用する事、そして俺は冷徹になれる、それが分かっただけでもこの決闘には価値があった。




自衛隊は本来自衛する者。異世界でもその根本は変わらないだろうが、ここは異世界であり、自衛隊も本物ではない。


いずれ戦う時が来たらその時はまた冷徹になろう。それまでは優しい男でいよう。




俺は心の中でそう誓った。






「天羅さん、またカウンターに来てもらっても良いですか?」




「わかりました」




一緒に受付カウンターに向かう。




「では、カードを貸してください」




言われた通りにカードを渡す。


彼女は例の水晶にカードを当てる。




「これでカンパンさんの口座から100万リム、確かに入金しましたのでお使いください」




「あ、ありがとうございます。お姉さん」




「いえ、これが仕事ですから」




カードを受け取り今度こそ冒険者ギルドを後にする。


ありがたい事に臨時報酬もあって奴隷を買うお金は手に入ったが、それでも異世界での収入は確保してみたい。




そう考えて俺たちは次の目的地、商業ギルドへと向かった。

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