冒険者ギルドはテンプレを期待しちゃう3

「おい、坊主ちょっとまてや」




ギルドを出ようすると、後ろから野太い声がかかった。




おっとついに来てしまったか?冒険者のテンプレというやつが。


ここまでのギルドとかはイベント的な物が無かったからテンプレとは呼べなかったんだよな。


正直、期待してなかったって言ったら嘘になる、意外と自衛官ってオタク多いんだぜ?




そんなことを考えてくると後ろから再び声がかかり、俺の肩に手が乗る。




「おいって言ってんだろ!」




後ろを振り向くと、筋肉だけ鍛えましたというような体つきの、ぼさぼさな髭をのばした男が立っていた。




「なんですか?」




「お前新人だろ」




「そうですけど、それが?」




男は美由の方をちらりと見て言い放つ。




「ならよ~、先輩にその女よこせよ。良いだろ?少しくらいよ」




「嫌に決まってんだろ」




「ちょっとやめてください!ギルド内での揉め事は困ります!」




俺が男に拒否したと同時に先程の受付嬢が仲裁にやってきた。




「あん? 俺様はC級冒険者のカンパン様だぞ? 新人を勉強させて何が悪いんだ?」




カンパンはそう言いながらニヤついている。


イラつきをなるべく表に出さないよに抑えて、冒険者同士で争いになった時のルールを知らないので受付嬢に問う。




「こういうのってどうなるんですか? 


明らかにあっちが絡んで来てるんですけど」




「ギルドの規定ではギルドは関与しない事になってるんです」




「なるほど、つまりお姉さんも本当は関わりたくは無かったんですね」




「はい」




彼女は職員としては関与したくなかっただろうに、わざわざ止めに来てくれたのか。




「おい、先輩である俺様の言うこと聞いておけよ? 痛い目見るぞ?」




「それでこんな場合はどうしてるんです?」




俺は髭野郎を無視して受付嬢に問う。




「そうですね。こう言った場合は決闘で決める事が多いと思います。」




「決闘ですか?」




決闘ってまさにテンプレ展開に行ってるじゃないか!




「決闘はお互いに賭けるものを決めて戦います。その際の怪我などは特別にルールを設けない限り責任を負う必要はありません。命さえ奪わなければ何でもありの戦いになります」




なるほどね。何でもありで殺める事さえしなければ良いと。




あんまりスキルは見せたくはないがな。




「なにゴタゴタ言ってんだ? 良いからこっちこいよ。」




髭野郎は美由を掴もうと手を伸ばす。




「いや!」




美由も嫌がり後ろに下がる。そこに割って入り、髭の手を振り払い、




「良いよ。決闘しよう、あんたは何賭けてくれるの?」




と俺は髭に宣言した。




「ガキが痛い目みねぇとわかんねーんだな。お前みたいなガキに負けるはずがないからな、俺は100万リムをかけてやるよ!おい決闘行くぞ!」




髭野郎は叫ぶと階段を降りていく。




おそらく下に決闘場というのがあるのだろう。


俺も後に続いて下に降りる。




下には表の建物一つ丸ごと入りそうなくらいの空間が広がっている。


決闘場というからには、これくらい広くないとダメなのだろう。




「おいガキ準備はいいか? 泣いて謝るなら今のうちだぜ? ゲバババッ!」




下品な笑い方だ。悪役だとしてももう少しなんとかならんものか?


せめてゲバババはやめて、ガハハくらいにして欲しい。




「御託は良いよ。さっさとやろう」




「くそ生意気な餓鬼が!死なない程度に手足引きちぎった後であの女ぶち犯してるのを目の前で見せてやんよ!」




あー、やっぱクズだわこいつ。


遠慮なんてする必要はねぇわ。




「朝霧様、本当によろしいんですか?」




「ええ、大丈夫だと思いますよ」




正直、これは良い機会だと思っている。


スキルがある世界で魔法も存在するのは聞いている。


そんな世界で科学兵器は効くのか、実験に付き合って貰おう。




「わかりました。では私が決闘の見届け人をします。ルールは通常、死亡させるのだけは避けてください」




「はい」




「こんなガキを潰して女が手に入るなんて、全く決闘ってやつは最高なルールだぜ!」




「天羅さん大丈夫ですか?」




心配そうな顔で訪ねてくる美由。




俺は美由の頭に手を置き「大丈夫だよ」と


言葉をかけた。




俺は再び髭野郎の方を向き直し、決闘の合図を待った。

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