冒険者ギルドはテンプレを期待しちゃう1

窓から差し込む朝日で目を覚ます。


女の子と同じ部屋というのは正直意識しない方が難しい。


おかげで完全に寝不足だ。




寝ぼけ眼を擦りながら、まだ寝ている彼女を起こさないように


そっと顔を洗いに井戸へと向かった。






顔を洗い終え部屋に戻ると彼女はまだ寝ていて、寝巻きが少しはだけている。


その姿はとても魅力的に映るが、表情には出さないよう平常心を装い彼女を起こす。




「美由ちゃん、朝だよ」




「あっ、ん~。あ、おはようございます。」




まだ働いてない頭で挨拶してるのだろう。




「おはよう、ほら顔洗いにいこっか。そのあと朝食を取りに行こう」




朝食は6時からだそうで顔を洗ったら早速行ってみることにする。




「わかりました」




だいぶ頭も働いてきたのだろう。受け答えがはっきりしている。




彼女と共に井戸に行き、顔を洗うのを待ってから食堂へと向かう。




「女将さん、おはようございます」




「あら、おはよう。すぐに用意するから席でまってな。」




昨日と同じ席に座り料理をまつ。


流石にラミィはまだ起きてないようで女将さんが料理を運んできた。




シンプルなパンとスクランブルエッグが置かれる。




聞くと材料はニワトリの卵だそうで、異世界にも元の世界と同じ食材があるようだ。




異世界ならではの飯も良いが、やはり元の世界と同じ食材は安心して食べられる。


出来立てのスクランブルエッグがとても旨そうだ。




「じゃあ、ごゆっくり」




女将さんは料理を置くと、厨房へ戻って行く。




「「頂きます」」




合掌をして朝食を頂いた。




朝食後、荷物の準備を終え早速オリシアから貰ったやる事リストに取り掛かる事にした。




まずは冒険者ギルドでの身分証を作ることから始めることにする。




女将さんに場所を聞くと、冒険者ギルドは歩いて5分ほどの所にあるようで


宿屋の使用客が多い冒険者ギルド付近には宿が集まっており、ここも例外では無いそうだ。






教えてもらった方向に歩くと、二本の剣が交差する冒険者ギルドを示す看板を見つける。


3階建ての石造りの建物はこの町の中で一際大きく感じた。




中に入ると、朝だというのに酒場では大声で酒を飲んでいる者や酔い潰れている男たちがいる。




それらを尻目に受付カウンターと書かれた場所まで向かった。




そこには美由と同い年くらいの女性達が座っている。


彼女が受付の人だろう。小説的に言えば受付嬢と呼べば良いか。




特に理由はないが酒場から一番遠い受付へと足を運ぶ。




「いらっしゃいませ。クエストをご依頼でしょうか?」




満面の営業スマイルで困りごとがないかを聞いてくる。


なるほど、確かに俺たちの見た目はとても冒険者には見えないだろう。




「いえ、登録に来たんですけど」




「新規の方で、お二人でよろしいですか?」




「はい」




「ではこちらに記入をお願いします。わからないところは白紙で結構です」




「わかりました」




そう言って渡された用紙を美由にも渡す。




あれ、そう言えば文字ってどうなってるんだ?


紙に書いてある文字は見たことない文字だが何故か理解できる。


言葉も大丈夫だけど、自分で書くとなると日本語しか書けないぞ?


なんで今まで疑問に思わなかったんだろう。




俺はさっと名前の欄に「朝霧天羅」と漢字で記入し受付嬢に見せる。




「すいません。これ読めますか?」




「あさぎりてんらですよね?天羅さんっていうんですねそれがどうかされたんですか?」




「いえいえ、名前を覚えて貰おうと思いまして。」




なるほど、言語関連はお約束の不思議パワーで問題なしってことね。




隣にいる美由にもこっそり「文字は大丈夫っぽいぞ」と教えてあげた。




「いっ!」




美由の足が俺の足を踏みつける。


俺は痛みで、つい声が漏れてしまった。




「何すんだよ」




「別に」




彼女は何故か不機嫌そうな顔をしており、どんどん記入を済ませていく。




何のことか戸惑いながらも、俺も記入を済ませていった。

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