洞窟の拠点
早朝の出発
おそらく6時、決まった時間に起きていた習慣で自然と目が覚める。
今日はついに追放の日だ。まぁついにって言うのはおかしいけど。だって俺は昨日きたばかりだから。
そんなことを思いつつ、戦闘服に身を包む。
出発の為に準備していると、来訪者がやってきた。
追放のために迎えに来たのだろう。
扉を開けると荷物を持ったオリシアが待っていた。
「お時間になります。こちら纏まったお金と着替えになります。2週間は持つように用意しましたので大切にお使いください」
「どうしてここまでしてくれるんだ? 俺は召喚されて次の日に追放される男だぞ? これも王が用意したのか?」
「いえ、こちらは私が勝手にご用意いたしました。ご迷惑だったでしょうか?」
なんでだ?この子はどうしてここまで用意してくれたのだろうか?
「本当になんでここまでしてくれるんだ?」
「それは私がメイドだからでございます。私は今日の早朝まで貴方様のメイドなのですから」
ただそれだけなのか?プロ意識、それがここまでしてくれる理由だったのか。
正直ここまでされて嬉しくないわけがないだろう。
俺はこの出来事から橘のスキルを思い出し、メイドはぜひ居てほしい。
そう考えたのだった。
その後、オリシアに連れられるままに城外へと向かう。途中他のメイドと一緒に橘もやってきた。
はじめての城外がこのような形になるとは、予想外ではあったが仕方がないだろう。
俺と橘はお互いにうなずきあって、帝都を出る馬車に乗り込んだ。
その馬車で帝都の東門へとたどり着く。そこにはすでに騎士たちが待っており、俺が抵抗して帝都に残ろうとすれば物理的に排除するのが狙いだろう。
馬車を降りてその足で東門を出る。その後ろには見送りのメイド二人と橘がいた。
「それではここまでです。ここから先は我々ドラグオン帝国はこれから手助け出来ませんのでご了承下さい。ではお元気で」
オリシアはそういうとお礼をして少し離れて行く。
それと引き換えにと言わんばかりに橘が近くに来る。
手筈通り見送りの言葉を伝える的な感じで近づいて来たのだろう。
「ここまで計画通りかしら?」
ニコッと笑う少女は隣に来くる。
「そうだね。後は俺が車を出したらすぐに乗ってね」
もう一度オリシアの方を向いてから俺は73式小型トラック、通称パジェロを取り出した。
召喚できる車の中には黒塗りのお偉いさんの乗る車両とかあったがどう考えても道が整備されているわけがないのでこちらを選んだ。
騎士やメイドたちが唖然としているのがよくわかる。
「よし! 行くぞ」
俺は橘に声を掛け車に乗せ、エンジンを掛け走り出した。
ようやく事態を理解したのか、騎士たちが馬に乗って追いかけて来る。
しかし馬の速度はおよそ60キロ、マックスでも80近くしか出せない。
それに引き換えこちらは荒い道を考慮しても時速100キロ以上で走行している。ここは日本ではないため法律もない、俺たちと騎士の差はどんどん広がっていった。
★
「地図見せてもらえるか?」
橘に地図を取ってもらうようにいう。
車を脇に停めて、もらった地図を開く。
「今はこの辺りかな?」
現在地は帝都と国境のちょうど真ん中に位置する場所、ハッセルの街と書かれた場所から少しだけ離れた場所だった。
俺たちが目指しているのは辺境の村タルバ、ここを目指している。
ここは隣国のリバレイン王国の領土になっているのでちょうどいいと思ったのだ。
そこまで車でもそこそこ時間がかかるので、補給と街でできるいろいろなことをしてしまおうと話していたのだ。
実は荷物の中には着替えとお金以外にも先ほども言った地図の他に1枚の紙が入っており、その紙にはリバレイン王国の方角に行くことをお勧めする旨と、身分証の作成や金銭を作ることなどやったほうがいいことをリストアップしてあった。
これもあのメイドのオリシアがやってくれたのだろう。
もしかすると帝国の都合のいいように書いてあることかもしれないけど、俺はこれが純粋な好意に見えた。
だから、これに従って行動してみようと決めたのだ。
その第一弾がハッセルの街にて身分証の作成、この世界について知るもの、それから金銭だった。
身分証の作成については冒険者になるのが手っ取り早くいらない詮索をされないそうだ。
次にこの世界について知るもので、一番いいのは奴隷を買うことだそうだ。平均価格は金貨10枚、選り好みするなら100枚は用意したほうがいいと書かれてある。
俺が可愛い女の子を買うって考えてたんだろうな。その通りだけども。
そこで必要になるのが金銭を得ること。
これに関しては冒険者で成り上がって行くか異世界の情報を武器に、何かを作るかすればおそらく纏まったお金は手に入ると書かれているが、これに関しては自信がないとまで書いてあった。
「それでどうやってお金を稼ぐんですか?まさか、銃を売ったりするわけないですよね?」
「当たり前だろ。こんなの仲間内でしか扱わないよ」
「じゃあどうするんですか?」
その問いに俺は現物で答えを出す。
取り出したのはレーション、温めるだけで食べれられる自衛隊で使われている携行食ってやつだ。昔は缶詰が主流だったそうだが今ではこう言ったパッケージ状になっている。
「これはレーションって言って、演習とかで食べるやつなんだけど。こんな世界だから温めるだけっていうのは技術としてないんじゃないかなって思ってね」
「なるほど! いいかもしれませんね」
「じゃあ、出発するよ」
再びパジェロのエンジンをかけ、街の見える場所を目指し移動を開始した。
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