自衛官異世界へ行く4

追放の理由がスキルの意味が分からないからなど納得がいかない。




しかしさっきの口ぶりだとあと偉そうな王が決めた事で覆すのは難しいのだろう。




だが、逆に考えると、魔王軍と強制的に戦わされずに済むし、自衛にはもってこいなスキルな訳だ。この世界で自由に生きてみるのもありかもしれない。




コンコン




そんな風に考えていると来訪者を告げる扉を叩く音が聞こえた。




扉を開くと橘と名乗っていた少女がいた。




確かに後で行くとは言っていたが、本当に男の部屋に来るなんて。




「えーっと、中に入ってもいいですか?」




「え?あぁどうぞ」




彼女は返事を聞いて中に入り部屋を見渡してうんうんと頷いている。






「やっぱりおんなじような部屋なんですね」




そういうと彼女はベットに腰掛ける。




そして会話を続けた。




「では、改めまして橘美由たちばなみゆです。貴方の話を聞きたくておじゃましました。」




「えーと朝霧天羅です。それで話とは?」




「話はスキルの事についてです。でもいきなり教えろと言っても困ると思います。なので私のスキルから教えますね。私のスキルはホムンクルス生成のlevel8です。」




そう言い切ると、持ってきた飲み物を一口飲む。




「それでこのホムンクルス生成は名の通りホムンクルス、わかりやすく言うと命令に従う人造人間を生み出すことができ、level8では1日に16体まで作り出せることができます。さらに触れた人物のスキルに関する知識を確認しホムンクルスへ付与することができます。」




もしかして食堂で挨拶をしていたのは相手に触れる為なのか?




「もしかして……」




俺が言い切る前に彼女が口を開く。




「そうです。食堂ではホムンクルスの為にデータを集めてました。このデータと読んでるのがどんなホムンクルスを作るか決めるものですね。それでみなさんに触れたんですが一人だけちょっと気になる方がいたんです」




それって




「もしかして俺か?」




彼女は正解したことに機嫌が良くなったかのように笑顔になり答える。




「そうです。貴方を触れた時に得たデータは言ってしまえば知識です。しかも偏った自衛隊という知識なんです。このデータでホムンクルスを使えば戦闘機を操縦できるホムンクルスや自衛隊の戦略、戦術をこなせるホムンクルスが作り出せるんです。でもそこには障害がありまして」




そういうと再び飲み物をグイッと飲む。




「自衛隊の兵器がない、か?」




「はい、その通りです。兵器が無ければただ知識がある人間です。なので疑問に思ったんです。スキル自衛隊はどこまでの兵器を出すことができるのかを」




それでも聞かなければならないことが俺もある。




「それを知って君はどうするんだ?」




「私の思っている通りなら私は貴方に付きたいと思っています。おそらく訓練が始まれば派閥ができるでしょう。ですが私のスキルと貴方のスキルを組み合わせれば最強になるはずです」




やっぱりこの子は俺が追放されることを知らないんだろうか?




この子もスキルについて教えてくれたし答えてあげるのが礼儀だろうか。




「君がどんなことを思っているかは知らないが、君の言う通り俺のスキルは自衛隊の人材以外の戦力なら思ったように召喚できるスキルだよ。例えばこんな感じにね。」




俺は自分の腕に89式小銃を取り出す。




「はは! すごいです! 私が思ってたより凄かったです! せいぜい銃くらいが出せるのかと思ってましたがその口ぶりですと、戦車やヘリなんかも出せるんですね!」




この子鋭いな。まぁこの言い方だと、誰でもそう汲み取ってくれるか。




「まぁそういうことだね」




「なら私を貴方の派閥に入れてください!」




やっぱりこの子は知らないんだ。追放されてるなんて言ったらどうするんだろうか。


好意があると言っても、俺の力に対してくるものだから少し怖いな。




「いや、でもな」




「私、なんでもしますよ! 私が生きていられるなら私は貴方のいう通りにしますから!」




やっぱり言ってあげるべきだよな。


俺は覚悟を決めて、さっき言われたことを伝えた。




「君は一つだけ思い違いをしてるよ。まぁ知らなくても当然かもしれないけどさ。根本的に俺に派閥とか関係ないんだ」




彼女は不思議そうにこっちを向いて首を傾げる。




「俺はね、追放されるんだ。この国から」




本当は帝都からなのだけれど、あながち間違いではないだろう。




「え? そんなにすごいスキルを持っているのに追放されるんですか?」




「そうだよ。だから俺には派閥なんてもの関係ないんだ。」




彼女は少し考える素振りを見せる。考えが纏まったのか決意した表情になり口を開く。




「いつですか?朝霧さんがこの国を出るのは」




「えーと明日の早朝だけど、なんでこんなこと聞くの……まさか!」




簡単なことかもしれないが彼女がそうまでする理由がわからない。俺のスキルがそんなに魅力的なのだろうか?




「はい。そのまさかだと思います。私も一緒に追放されてあげます。」




やっぱり、ついてくる気なんだ。




「一応なんで付いてくるか聞いても?」




「打算なんです。ここに残るか貴方について行くか考えた時、私のスキルと貴方のスキルで作り出す異世界自衛隊を作り出せば最強なんじゃないかって、つまり私は生き残れるってそう思ったんです」




そんなところだろう。確かにこの世界で自衛隊の総戦力を生み出せるのはかなり強い。戦闘でもホムンクルスと自衛隊装備によりかなり有利に立ち回れるだろう。そうなれば生き残る確率も上がるかもしれない。彼女はそう考えて俺についてくることを決めたのだろう。




「わかった。じゃあ明日の早朝に出るから。作戦を伝えるからちょっと近づいて」




俺は彼女の耳元で作戦内容を告げ終え、最後に作戦名を決めた。




「その名も、誘拐高飛び作戦!」




「なんか、そのままですね」




そうして俺と彼女は異世界自衛隊を組織することを決め、明日早朝に作戦を実行する為その日は休むこととなった。

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