自衛官異世界へ行く3

ベット上に座って早速スキルを使ってみることにする。俺のスキルは物資等を召喚する力で直接的戦闘のスキルではない。




なので剣を振るうにしても自分の身体能力である為、俺は何かを召喚して護身するしかなかった。


今の状況では護身することもできない為、スキルの練習を兼ねて自衛隊で使われている、自動拳銃のP220(ハンドガン)を出してみる。




スキルの使い方は鑑定した時の紙に書いてあった。


欲しいものを頭に浮かべる。そして出したいと思うことで取り出せるようだ。




実際頭に思い浮かべてみるとあら不思議、手にP220が握られた。




弾倉も見て弾が入っていることを確認する。


これで多少なりとも自衛はできるだろう。


必要になれば日本の自衛隊や警察の特殊部隊でも使われているアサルトライフル、89式小銃を出すだけだ。


それに他にももっと強力なものは多いからな。


そして、さっきP220を召喚した時、頭の中にリストのようなものが構築された。


どうやら自衛隊の戦力をリスト化したもののようで、何を取り出すことが出来るのか簡単に判るようになった。


これは本当に便利だ。


自衛隊の全てを知っているとは言えないからありがたい。




次にナイフがわりの銃剣を取りだして弾帯につけ腰にぶら下げ、P220は後ろ腰辺りでスボン中に挟み周りからは見えないようにした。




しばらく頭の中の戦力のリスト確認をおこない、ふと腕時計に目を落とすと部屋に入ってから既に50分ほどが経過している。


時計の時刻自体はこの世界の時刻とはおそらくあって無いだろうが、針の動きから時間の経過を知ることは出来る。


そろそろ迎えが来るのではないかと思っていると。




コンコンコン




どうやら思った通りに迎えが来たようだ。




俺は返事をして扉を開ける。




「お迎えにあがりました。これから大食堂に移動致します。ではご案内します」




そういう彼女の後ろについて行く。場内はやはりとても広く、目的地に行くだけで5分も掛かった。




「では、こちらです。」




大食堂の扉が開かれ、席にはちらほら座ってる人たちが見える。




「お好きな席にお座りください」




そう言われるので一番近くにあった席に向かって歩き出す。




「すいません。私橘っていいます。これからよろしくお願いしますね」




突然は話しかけられてびっくりしていると、彼女は右手を差し出し握手を求めてくる。




「えーとよろしく橘さん。俺は朝霧です」




出された手を握り返して握手する。




よろしくと握手をし、手を離すと彼女はまた今入ってきた人に挨拶しに行った。


どうやら彼女は一人一人に挨拶をしているようだ。


なかなかアクティブではないか。




そう思いつつ席に座る。




すぐに全員が揃い間もなく、メイドたちが料理を運んできた。




高級レストランで提供されるような美味しそうな料理が机に並んでいき、ただよう香りがなんとも胃袋を揺すり食欲がそそられる。




料理が運び終わった段階で鎧を来た逞しい肉体の中年男性が現れた。




その男は中央に立ち、挨拶をするようだ。




「皆様の初めまして、これから皆様の教育係になりました。帝国騎士長のザクレスと申します。本日は訓練開始前の親睦会ということで帝宮でも珍しい料理の数々を作られて頂きました。明日からは訓練が始まりますので、今のうちに存分にお召し上がりください。では大地の神ラーチに祈りを捧げましょう……」




騎士が祈りを捧げるように手を体の前で組み目を瞑る。


他のメイドたちも同じようにいている。これは俺たちでいう頂きますということなのだろう。




みんな見よう見まねで祈りを捧げた。




「では、召し上がってください」




その言葉で食事はスタートした。




同じ召喚された者同士、親睦を深めるといっても赤の他人である為、すぐに会話が始まる訳ではなく。どうやら周りも同じような状況のようだ。




だが食事が進んでいくにつれて、異世界である緊張もとけ、会話を始める者もあらわれはじめた。




俺に対してもスーツ姿のいかにもサラリーマンと思わしき人物が話しかけてくる。




「この食事は美味しいですね。日本でサラリーマンをしていた時には一生食べれませんでしたよ」




そのサラリーマンは苦笑いをしながら話しかけてくる。




「そうですね。自分もそう思います。」




「はは、ですよね。ところで貴方は自衛隊の方なんですか?それとも趣味で?」




あー、やっぱり気になっているんだろうか。その質問が聞こえていただろう人たちはこっちを盗み見ている。




「趣味ですよ趣味、自分はザバゲーを仲間と楽しんでいたところに急にこんなところに呼ばれましてね。それでこんな格好なんですよ。呼ばれるってわかってたらこんな格好しなかったんですがね」




「そうなんですね。自衛隊の方だと思っていましたよ」




「ははは、勘違いさせたなら申し訳ないです」




この返しが正解かは分からないが、盗み見ていた人たちは興味をなくしたのか、自分たちの会話に戻っていた。




その後も後藤と名乗るサラリーマンとの会話は続いた。




親睦会は順調に進み、開始から2時間ほど経過したころでお開きとなる。各メイドの元へ行くように案内を受け後藤さんとは暫しの別れを告げて席を立った。




メイドのオリシアのものへと向かう途中、扉のところで声をかけてきた少女にまた声をかけられた。




確か橘さんといったろうか?




彼女は自分に駆け寄ると、耳元に顔を近づけて




「後で部屋へお伺いします」




そう言うと彼女も専属のメイドの元へかけて行った。




理解が追いつかずその場に立ち尽くしていると、オリシアの方から声を掛けてきた。




「どうかなさいましたか?」




その言葉で我に返り、オリシアの方を向く。




「いや、なんでもないよ」




「そうでございますか。ではお部屋までお送りいたします。」




そう言って歩き出す。




「お部屋に戻りましたらあとは自由時間となります。消灯時間までは好きにして貰っても構いません。それと……」




彼女は続ける。




「朝霧様にお伝えする事があります。明日の早朝に朝霧様の王都追放が決定なされました。これは王の決断ですので変更はございません」




突然の言葉に俺は唖然とする。追放?いきなりか?まだ何もしてないのだけど何故だろうか?




「理由なのですが、王の言葉をそのままお伝えいたします」




「ジエイタイは意味が分からないから追放する」




「とのことです。では明日の早朝にまたお迎えに上がりますので、それまでおやすみになってください。それでは失礼いたします」




そういうと彼女は部屋を去っていった。

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