メリと毛
メリの毛をよいものだとほめてくれたのは友人だ。友人のかぶっていた帽子をほめたのはメリだ。友人は帽子をぬいでメリの頭にかぶせてくれた。メリの耳と角の間で帽子は毛にはじかれてゆれた。友人の毛はつやつやと日の光をはじいていた。私の頭にはあなたの帽子はあわないのねえ。メリが帽子を返しながら呟くのを友人はにこにことした顔で聞いていた。同じ毛には違いないのにねえ。メリの言葉をすくい返すように友人が言う。髪と、毛は、違うかもね。自分の頭を刈っても髪は生えないな、とメリは思った。メリの視線を友人がどうとったのかはわからない。メリの毛は、よいものだよ。きっとこういう帽子になってもすてき。
私の毛を使ってこういう帽子になるの? メリは友人の睫毛を見ながら訊いた。友人の目はまぶたに隠れていたから。なるわよ。友人がうれしそうに言って、メリは自分の毛のことを考えすぎるようになった。
メリのウール 塒之 @neguran0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます