メリのウール

塒之

メリと服

 メリは服を着ることにした。そっくり毛を刈り取った肌に譲り受けた色とりどりの目を編んだ着物はなじんだ。下着をそろえるのを断ったのは何らかの矜持かもしれない。自分の毛がどうなるのか見届けようと訪ねた先でこんもりとした毛の山を紹介されて、それ以上を知る気はなくした。メリには自分の一部だったものが山の中のどこにあるかわからなかった。もしこれまでに抜けた毛を土草の上から探してごらんと問われても、そんなことに自分は時間を使えないと思った。じゃあ何故毛を刈られて毎日服を着る時間を選んだのだろう。それもわからない。でも決めてしまった。メリはぼんやりと肌を包んで這う茶色い糸の目を数えた。こういうことにならいくらでも時間を使うのに、と思った。

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