迷える子羊に救いの手を

 迷える子羊に救いの手を。

 知らない家のブロック塀にはられたそのポスターを目にしたとき、僕のこころはひどく激しく揺さぶられた。なぜなら、困りに困って、あまりにも困り果ててこころが弱った僕に、その言葉はとても魅力的に見えたからだ。とてもあやしくて、普段なら気にもとめないであろうそのポスターのもとへ言ってみたいと思うくらい、僕は途方に暮れていたのだ。

 宗教法人しろいひかり、と印刷された文字の下に、簡単な地図があった。助かった。ここからでも歩いて行ける距離だった。

 まっすぐの道を進んで、たばこ屋を左に曲がる。細い路地を道なりに移動し、ゆるいカーブの上り坂をあがり、やや進んだところの下り坂の途中に、それはあった。緑に囲まれた建物。しろいひかりの名前通り、真っ白な二階建ての建物の正面玄関、全面ガラス張りの入り口をノックする。僕の困りごとを解決してくれることを祈って。


 宗教法人しろいひかりの若いスタッフは非常に困惑していた。こんな出来事ははじめてだった。お客様対応マニュアルにも載っていない。なぜなら、彼女の目のまえには一匹の子羊がいて、メェー、と鳴いているからだった。

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