Babel 特別短編②/隠されたレシピ


 1


 子供の頃、異世界に迷いこむ少年の映画を見たことがある。

 ぼんやりとした記憶だが、確か古い本をきっかけにファンタジーの世界に入りこむという話だった。美しい王女やドラゴンと出会い、剣を持って邪悪な敵と戦う――そんな異世界の話を、雫はまさに「遠い話」として眺めていた。

「……遠いと思ってたんですけど、まさか自分が異世界に来てしまうとは……」

 食堂のテーブルに頬杖をついて、雫はそんなぼやきを漏らす。

 大学に入って初めての夏休み、なぜか異世界に飛ばされてしまった彼女は、現在、元の世界へ帰る方法を探す旅の真っ最中だ。連れの魔法士の青年が、呟きを聞いて顔を上げる。

「急にどうしたの。集中力が切れた?」

 中性的に整った顔立ちは、中身を知らなければ彫刻のような綺麗さに感心できる。だが、雫にとっては既に見慣れた顔だ。旅につきあってくれている引率者の彼に、彼女はあっさりと返した。

「切れました。休憩です」

 旅の最中、二人は小さな町に立ち寄って宿を取ったのだ。だが夕飯には早い時間だったため、お互い本を開いて自習をしていた。

 雫は開いたままのページを見て溜息をつく。

「レポートが進まなくて……いや、進んでも日本に帰れなきゃ提出できないんですけど」

 本来ならば、夏休みの課題のレポートだが、今となっては出すあてのないものだ。もし完成しても日本に戻れなかったら、こちらの世界に怪奇文書として残ってしまうのかもしれない。

 エリクが本を見たまま返す。

「できる時にできることをやった方がいいよ。研究は、長い間離れると思考が鈍るし」

「た、確かに……」

 異世界に慣れ過ぎて、戻った時社会復帰できなくなっても困る。雫は気を取り直して、手元の本をめくった。エリクがそのページを見て軽く目を瞠る。

「その文字、何? 初めて見る」

「あー、これはギリシア語です」

 ページの半ばに、引用として書かれているギリシア語をエリクは見つけてしまったらしい。日本語ともアルファベットとも違う文字に、青年は半ば身を乗り出して本を覗きこんできた。

 雫は近すぎる距離にのけぞりながら、先手を打って言う。

「ちなみに私、これ読めませんからね」

「え? 君の本なのに読めないの? 不思議なこと言うね」

「さらっと煽って来ないでください。本にあるからって全部読めるわけじゃないですから。こっちの世界と違って、私の方では文字の種類多いですからね……。あとこの本、私の本というより図書館からの借り物です」

 だからギリシア語の部分も、ちゃんと読めるように後ろに翻訳がつけられている。引用されているのは古典テキストだ。

「大学に戻れたら、ギリシア語とラテン語は取ろうって思ってますけど、今はさっぱりです」

「君の世界は、前提として文字を何種類も学ばなきゃいけないのがすごいね。面白そうだ」

「そこは大変だね、って思って欲しいです」

「面白そう。君、元の世界に戻ってその文字を身につけたら、またこっちの世界に戻って来られないかな?」

「それ、完全に私を異世界言語の配達人にしようとしてますよね。エリクが自分で行くって選択肢はないんですか」

 雫の旅の保護者をする代わりに、異世界の文字を彼女から学んでいるエリクは、数多の言語に興味が尽きないらしい。

 雫は彼が「じゃあ僕も君の世界に行く」などと言い出さないうちに話をまとめた。

「実際、言語がいっぱいあるから翻訳ってものがあるんですけどね。翻訳文化のおかげで、古典もかなりの数残ったわけですし」

 その言語を知る者がいなくなれば、積み重ねれられた思考の歴史もまた失われてしまう。実際、古代ギリシアの知識は一度、そうして中世を前に忘れ去られかけたのだ。この断絶が回避されたのは、アラビア語に翻訳されていたテキストが、回り回ってヨーロッパにもたらされたからだと言われている。

 言語を渡り歩き、伝えられてきたとも言える知識の集合――本来なら、その一端を担う学生だった雫は、魔法士の青年に聞き返す。

「こっちの世界は、翻訳ってないんですか?」

 この大陸で使われている文字は、共通文字だけだ。これでは翻訳という概念自体ないかもしれない。エリクは小さな砂糖菓子を手に取る。

「あるよ。魔法系の書物は、注釈記号が独特だったり国や時代で変わるから。そういうのを読み解く作業は必要だ」

「技術書読解ですか……近いような違うような」

 文化の摺り寄せはなかなか難しい。

 冷めたお茶を飲みきった雫は、食堂に宿の人間が入ってくるのに気づいて顔を上げた。十歳そこそこの少年は、最初に受付をした時の快活さもなく、二人の前まで来て頭を下げる。

「ごめん、お客さん、夕飯なんだけどさ……。実は、ちょっと前から姉ちゃんが怪我してて、やっぱちゃんとしたもの作れそうになくて……」

「あ、了解。厨房貸してくれれば自分たちでやりますよ」

 あっさりした返事に、少年は目を丸くする。苦情を言われると思っていたのだろう。確かに夕食が出ないなら他の宿にする、という人もいるだろうが、雫は普通に自炊できる。

 彼女は壁時計を一瞥して立ち上がった。

「じゃあ、ちょうどいい時間なんで、そろそろ作り出しますか。材料は――」

「あ、それはうちにあるもの使って! 色々あるから……!」

 ぱっと顔を上げた少年は、途端に安堵の表情を見せる。雫はそんな彼に笑い返して、厨房に入った。


 2


 元の世界では、一人暮らしとあって平均以上の料理スキルを持っていた雫だが、異世界に来てからは、一進一退の毎日だ。

 見覚えのない食材を、限られた調理器具で料理する――そんな手探りの毎日だが、これはこれで楽しい。思いもよらない驚きもある。

 ただ雫は信条として、失敗した料理でも完食することを常としていた。

「……なんか、微妙ですね」

「そう? 美味しいと思うけど」

 根菜と肉のスープを一口飲んで、雫は眉を寄せる。テーブルの向かいでエリクが食べているのは、石窯で作ったグラタン(らしきもの)だ。

 雫としては、グラタンは味が濃いので粗が分かりにくいが、スープになると微妙なえぐみが口の中に残る。

 それは、雫の隣で食べている少年も同感のようで、彼は匙を持ったまま難しい顔で黙りこんでいた。雫は少年を覗きこむ。

「ね、ちょっと苦味があるよね」

「あ……うん、でも全然平気だよ」

 歯切れが悪いのは、客の立場を慮ってのものだろう。エリクの隣で少年の父親が苦笑した。

「すみません、お客さんに夕飯まで作ってもらって……」

「あ、いえいえ。私も普段二人分しか作らないんで、家族単位で作るの楽しかったです。むしろ微妙な味になっちゃってすみません」

 今、この宿に泊まっているのは、雫たちだけらしい。それを聞いて雫はついでだから、と宿の家族の分も作ったのだ。少年の斜め向かいに座っている姉が、あわててかぶりを振る。

「微妙だなんて、おいしいです。この平たいパンに具をのせて焼いたものとか……」

「実は無性にピザが食べたくて」

「ぴざ?」

 切り分けたピザは、見た目の再現度は七割だが、味の再現は三割ほどだ。敗因としては、トマト、もしくはそれに類する野菜が見つけられていないことだろう。代わりに赤い葉菜を煮詰めてソースにしてみたが、風味がまったく違う。どちらかと言えばシソの味に近い。

 雫はピザ(もどき)を自分の皿に取り、敗北の味を噛みしめた。

「味見はしたんですけど、力及ばず……。最初から助言を仰げばよかったです」

「君の作るものって、充分美味しいと思うけど」

「エリクは基本不味いって言いませんからね。味の許容範囲が大海並です」

 余程のことがなければ、エリクが雫の作ったものに苦情を言うことはない。彼自身も料理ができるが、味にあまり頓着しない方なのだ。雫は、探求心の産物である激辛ペーストを、エリクが平然とパンにつけて食べているのを見て、彼の賛辞をほぼ空気として受け取った。

 少年の姉が、スープカップを手に言う。

「この辺りって、水か土が違うのか、同じ野菜でもよそとちょっと違うらしくて……。同じように作っても味が変わっちゃうんです」

「え、それってこの辺だけなんですか?」

 土壌に関係して野菜の味が変わるのだろうか。

 少年の姉は、包帯を巻いた右手を膝に置く。

「はい。だから隠し味に香草を入れることが多いんです。一ヵ月前に亡くなった母は、この香草が苦手であまり使いませんでしたけど……」

 母親の話を聞いて少年の表情が変わる。怒っているような、悔しそうな顔。雫はそれに気づいて目を丸くした。彼女の驚きに気づいた父親が申し訳なさそうに小さく頭を下げる。

 ――母親が亡くなって、まだ一ヵ月だ。

 幼い少年にとっては、そして他の家族にとっても、その不在はまだうまく飲みこめないものだろう。

 雫は、今は遠い家族のことを思いだす。会いたくとも会えない現実が喉の奥につかえ、焦燥がちりちりと胸を焼いた。思わず溜息をつきかけたその時――食堂の扉が軽く叩かれる。

「あれ、お客さん?」

 扉を押し開けて、一人の男が入ってくる。恰幅の良い中年の男は、彼女とエリクを見て首を傾げた。

「おや、新しい下働きを雇ったのかね」

「この方たちはお客さんだよ。突然どうしたんだい、町長」

 立ち上がって来客に応じたのは少年の父親だ。

 客である雫は、下働き呼ばわりに憤ることもなく、料理の取り分けに戻る。彼女はエリクの皿にさりげなくピザもどきを重ねた。

 町長と呼ばれた男は、鼻を鳴らす。

「まだこの宿に泊まる奇特な客がいるとはね。……まぁそれより、一週間後の町の記念祭だが、出店辞退はしなくていいのかね。その子の怪我じゃ、ろくに料理なんて出来ないだろう?」

 男は、少女が手に巻いた包帯を一瞥する。それを聞いて、弟の方が立ち上がった。

「辞退って、そんなことしたら宿が立ち行かなくなっちまだろ!」

「今でも充分立ち行かない状況だと思うがね」

 がらんとした食堂を、町長は見回す。その視線が最後に、テーブルの上の料理を捉えた。

「随分おかしな料理だ。そんなものを記念祭に出されても困るしな」

「おかしくてすみません。異邦人なもので」

「えっ?」

 雫の言葉に、町長は思わず声を上げる。だがすぐに彼は、何も聞かなかったように続けた。

「……とにかく、色々あるだろうが、そろそろ宿を畳むことも考えた方がいいんじゃないか? 元々奥さんの料理だけが売りの宿だったろう?」

「……っ、そんなこと――」

 憤って飛び出そうとした少年の肩を、テーブルを回ってきていた父親が掴む。父親は苦い顔で町長に返した。

「忠告ありがとう。また家族で相談するよ」

「父さん!」

「相談しても答えは一つだと思うがね。あんたはともかく、子供二人で母親の代わりができるわけがないだろうに。特に、そこにいるみたいな悪童にはな」

 じろりと、町長の目が少年を睨む。少年は息を飲んでその視線に返した。

「……なんだよ。またお得意の言いがかりかよ」

「やめなさい、テノア」

 いきり立つ少年と、それを止める父親。姉の少女は青ざめて硬直し、町長は嘲笑を浮かべてそれを見ている。

 部外者には口出しできない空気に、だが雫はまだ眉を顰めただけで、ピザを手に取った。

 町長は侮蔑を滲ませて少年に吐き捨てる。

「子供は子供らしく分を弁えるんだな。余計なことをして、今度は父親に心労をかけて倒れさせたくはないだろう?」

「心労なんて、俺はただ手伝いを……」

「どうせ大した手伝いもできないんだろう。何をしても無駄だ。お前のようなやつは、何にもなれん。ずっと変わらんままだよ」

 冷やかな断言に、険悪だった場の空気が凍りつく。少年が反駁しようと口を開き……だが言葉が見つからない。

 代わりに響いたのは、芯のある女の声だ。

「――そこまでにしましょうよ」

 今まで黙っていた雫は、小皿を手に立ち上がる。彼女は町長を真っ直ぐに見据えて言った。

「事情は存じ上げませんけど、子供に言うにしてはいささか度が過ぎると思います。用件が済んだなら、もういいんじゃないですか? ご飯がまずくなっちゃいますし」

 客からの苦言に、町長は気まずげに顔を顰める。だが相手が童顔の少女とあって、引き下がれないのだろう。すぐにぶっきらぼうに返した。

「まずくなりようもないだろう。どうせこの宿の食事などたかがしれてる。さっさと別の宿に移ることをお勧めするが」

「だから、これを作ったのは私です」

「郷土料理自慢の宿なら、他にも――え?」

「いまいちだっていう自覚はあるんですが、食べてもいない人間に言われるのはちょっと」

「え、いや……それは」

「とりあえず味見どうぞ」

 言いながら町長に歩み寄った雫は、激辛ペーストを盛った匙を手渡す。それを受け取った町長は、困惑しながらも匙を口に運んだ。

「――! ‼」

「雫、それ僕まだ食べたいんだけど」

「エリクは本当、どんな味でも気にしませんよね……」

 手にした小鉢を、雫はテーブルに戻す。少年はすっかり気が抜けてしまったようで、ぽかんとした顔を雫に向けた。父親が苦味を飲みこんだ顔で頭を下げる。

「すみません、ご迷惑をかけてしまいまして」

「いえ。私が自分で首を突っ込んでるんで。むしろ、これからご迷惑をおかけしそうです。すみません」

「……これから?」

 その時、悶絶しながら激辛の波を乗り切ったらしい町長が叫ぶ。

「っ、この……! 宿が宿なら客も客だ! せっかく忠告しに来てやったのに……。ろくな料理も出せないやつらめ! 記念祭でせいぜい恥をかけばいい!」

 唾を吐き散らす男は、もはや体面を取り繕う気もないようだ。雫は能面に似た表情で町長を振り返った。

「記念祭って一週間後でしたか」

「そ、そうだ。町の人間に郷土料理をふるまって、評価を――」

「分かりました。じゃあ一週間後にまた来てください! 今度こそ本当の郷土料理を味わわせてやりますよ!」

「な、なんだと……!?」

「雫。君、割と変なこと言ってるよ」

 マイペースに食事を続けるエリクがどうでもいい指摘をしてくるが、雫はあえて黙殺する。

 町長はうろたえて、雫と父親を交互に眺めた。その視線を雫は怯まず見返し、父親は状況についていけないまま唖然としている。

 埒があかないと分かったのか、町長は舌打ちすると食堂を出ていった。静けさが戻ってくると、少年が雫を振り返る。

「お客さん……今の、いいの?」

「いいです!」

 正確にはよくない気がするが、割って入って「よくなかった」では少年の立場がない。

 それに、癇に障る物言いに黙っていられなくなったのだ。どんな事情があっても、子供に向かって「努力しても何者にもなれない」とは言い過ぎだ。あんな言葉を少年に聞かせたままでいたくなかった。――雫自身、姉妹に比べて何者でもない自分を何とかしようと、あがいているのだから。

 熱くなってしまった頭を、雫は深呼吸して落ち着かせる。そうして彼女は少年の父親を振り返った。

「すみません、ご迷惑をおかけしてます」

「いや……うちはいいんだが、お客さんは困るんじゃないか?」

「全力で乗りこんだ船ですから。困るなんてことはないです。――というわけで」

 雫は呆然としている姉の少女に言う。

「私に郷土料理の作り方を教えてください」

 にっこり笑う雫は、エリクが激辛ペーストをパンにつけながら「君、結構怒ってるよね」と言うのを聞いて――それもまた黙殺した。


 3


「うちのことに巻きこんですみません……」

 片づけを終え、早速レシピを教えてもらおうとした雫に、姉の少女は開口一番頭を下げた。

 そんなことを言われると思っていなかった雫は、あわてて顔の前で手を振る。

「こ、こちらこそごめんなさい。勝手なことを言って……」

「いえ、あれはあれでありがたかったんです。記念祭に出られないと、どうしても大きな収入減になっちゃいますし……。宿としても、『まともに客がもてなせる状態じゃない』って周りに思われちゃうんです」

「ああ……お店の面子がかかってる行事なんですね。なるほど」

 そんな時期に怪我をしてしまうとはついていない。少女は苦笑して厨房を見回した。

「だから本当は、ちょっと無理してでも簡単なもの作るつもりだったんです。多分その頃には怪我もちょっとはよくなってるだろうからって」

「ちゃんと治るまで安静にした方がいいですよ。教えてくれれば私がやりますから。今度はちゃんと助言を仰ぎます!」

 失敗したのは、自力でやろうとしたからだ。レシピが分かるならその通りに作ればいいだけだ。胸を張る雫に、少女はくすくすと笑う。

「じゃあ、基本的なものから教えてきますね」

 ――そう言って少女が教えてくれたのは、パシャという香草を使うレシピのいくつかだった。

 清涼系の香りがする葉は、人によって好き嫌いが出そうだが、雫は嫌いな風味ではない。

 最初に作ったスープとはまったく違う味に、雫は味見をして感嘆の声を上げた。

「おお……こうやって作るものなんですね」

「口で伝えただけですぐ再現できるなんて、すごいですね……。よその人には結構難しいって聞きますけど」

「つきっきりで教えて頂いてるからです」

 元の世界では、書かれたレシピを見て作ることが多かったのだ。それに比べて、隣でタイミングを指示してもらえるのは段違いの楽さだ。

 いくつか作った皿を指して、少女は説明する。

「これらが代表的な郷土料理です。この町の店が出す料理って大抵パシャが入ります」

「なるほど。記念祭に来るお客さんって、町の人ばっかりなんですか?」

「いえ。半分くらいはよそからの人です。だからかもしれませんけど、うちの宿は、毎年そう言った人たちに評判がよかったんです。母の作る料理は、パシャを入れないで苦味を抜いてましたから……」

 少女の目に、母の面影を追う光がよぎる。それはほろ苦い感傷に満ちていたが、雫はむしろ言われた内容の方に引っかかった。

「え……じゃあひょっとして、今回もそういう料理が期待されてるってことですか」

「ええ。でも町長さんはそれが嫌みたいで……。昔からうちには風当りが強かったんです。テノアもそれで町長さんを嫌ってて……子供達が何か悪戯すると、テノアの仕業だろうって。あの子、そんなに友達多くないんですけどね」

「おおう……目をつけられちゃってるんですね」

 友達についてはさておき、テノアと町長は犬猿の中ということだろう。

「でも、だからって料理を変える必要はないと思うんですけど」

 町長の私情に障ってしまうのは面倒だが、客が求めているならそっちを出した方がいいのではないか。

 しかし少女は苦笑して首を横に振った。

「私には母の味付けのやり方が分からないんです。作り方を書いた書き付けがあるんですけど、全然違うことが書かれてるばっかりで。あれでテノアに似て、結構悪戯好きなところがある母でしたから……」

「なんと」

 ひょっとして、町長がああも強気に出られるのもレシピが途絶えていると知っているからだろうか。だとしたら、うまく普通の郷土料理を出せたとしても、それでは成功したとは言えない。求められているのは去年と同じ料理なのだ。

「ちょっと想定したより難しくなってきましたね……」

 雫は真剣な顔で考えこむ。それを聞いて、少女があわてて言い繕った。

「で、でも、今作ったみたいな料理を出せれば記念祭としては充分ですから……」

「でも、それじゃ町長をぎゃふんとは言わせられないですよね。吠え面をかかせたいですよね」

「ギャフンって何ですか……?」

 不安げな少女はさておき、あと一週間もあるのだ。ここですぐには退けない。雫は一息でスープを飲み干すと、少女に言った。

「分かりました。じゃあまず、その書き付け見せてください」


 4


「これがその書き付けか」

 宿の部屋にて、二人はテーブルにおいた書き付けを前に向き合って座っていた。

 エリクは小さな紙束をぱらぱらと捲る。そこに書かれているのは、いくつかの図解も含んだレシピだ。雫には読めない大陸共通語だが、「水」「猫」「穴」などいくつか勉強した単語もある。

 書き付けに描かれた皿料理を雫は指さした。

「これ、材料に猫が使われてるってことですか? 結構アグレッシブな料理ですね」

「アグレッシブって何。違うよ。というか、ここに書かれてるのは料理の作り方じゃないね」

「え!? 料理じゃないって……猫の飼い方とかですか!?」

「猫から離れよう。猫は関係ない。これ、童話だよ。子供が森を探検する話。料理の絵は描かれてるけど、内容とはまったく関係ない」

「絵は内容に関係ないって……それむしろ話が内容に関係ないんじゃ」

 全然違うことが書かれているとは聞いていたが、子供が森を探検する物語とはさすがに予想外だ。混乱しかけた雫は、昔に読んだ絵本を思い出して食い下がった。

「それ、お話の中で料理してるとかじゃないですか。巨大なホットケーキ焼いてるとか」

「特にそういうことはないけど。……あ、ひょっとしてこれ、個人的な注釈記号が使われてるとかじゃないかな」

「個人的な注釈記号?」

「うん。注釈記号って単語の後ろにつけて、その単語の情報を補足したり、どの単語にかかってるか示したり、意味を補完したりするものなんだけど、それをこの人は独自の法則で作って使ってるのかもしれない」

「それって、完全に暗号じゃないですか……」

 どの単語にかかっているか、くらいならともかく、独自の法則で意味を補完するなら、それはもう暗号だ。エリクはあっさりと頷く。

「そうだね。だとしたら、法則表がなければ読解は無理だ。何か手がかりはないの?」

「私と同じこと言ってますね。けど残されてるのはその書き付けだけなんだそうですよ」

 それを聞いたエリクは思案顔になる。

「ちなみに、母親の死因については聞いた?」

「話題にしにくいところを、さらっと突っ込んできますね……。病死だそうですよ。もともと体の弱い人だったみたいで、若い頃から長くは生きられないって言われてたそうです」

 それは書き付けを預かった時に、父親から聞いたことだ。子供たちは知らないことだが、「出産は命がけになるからやめたほうがいい」とも言われていたらしい。それが二人も子供を産んで今まで生きてこられたのだから、「幸運な方だった」と父親は言っていた。町長の言う「心労をかけたから母親が衰弱した」などというのは、ただの言いがかりだとも。

 エリクはその話を聞くと頷く。

「病死なら、やっぱり読みとく鍵が何処かにあ

ると思う。突然亡くなったなら、準備できなかったって可能性もあるだろうけど、そうでないなら自分が死んだ後のことを考えてたはずだ」

「ああ……確かにそうですよね」

 何を思って暗号仕立てにしたのかは分からないが、家族に何かは伝えようとしているはずだ。

 雫はエリクの意見を飲みこんで立ち上がる。

「分かりました! 探索調査してきます! 箪笥をあけ壺を覗いてきますよ!」

「迷惑にも程があるからやめよう」

「失礼しました。物の喩えです。普通に調べてきます」

 父と姉にはもう聞いたが、少年も何か知っているかもしれない。意気込む雫にエリクは言う。

「僕はちょっと規則性が見つからないか考えてみるよ。君はあんまり無茶苦茶しないように」

「肝に銘じます」

 無茶を心配されているのではなく、無茶苦茶を注意されているのが気になるが、やれることはやるしかない。部屋を出ていこうとする雫に、エリクは付け足した。

「鍵はあの少年だと思うよ。聞いてみるといい」

「え、そうなんですか? なんか手がかりがあったんですか?」

「簡単なことだよ。ここに書かれてるのは――少年が、神秘の泉を探す物語なんだ」

 エリクは書き付けの最後のページを示す。

 そこに描かれているものは、料理の絵ではなく、家に駆け戻る少年の背中だった。


 5


 二階建ての宿には五つの客室と二つの家族部屋があるが、そのどこにも少年の姿は見つからなかった。

 雫が彼を見つけたのは、外にある小さな納屋の中だ。暗い隅で膝を抱えている彼に、雫はそっと声をかける。

「テノア」

 名を呼ぶと、彼は僅かに顔を上げる。だがそのまま動こうとしない少年に、雫は自分も中に入ると隣の箱に腰かけた。

 そのまま何も言わない彼女を、ややあってテノアは窺うように見上げる。

「……お客さん、何も聞かないの?」

「んー、聞きたいことはあるんだけど、聞かれたくない時もあるから、どうしようかなって」

 傷ついた時、人には触れてほしい場合と放っておいてほしい場合があるのだ。今がそのどちらかを見抜けないのは雫の未熟だが、だからと言って、相手の気持ちに無頓着でいるのも嫌だ。

 雫の答えに、テノアは不思議そうな顔になる。

「お客さん、変な人だね」

「これでも平均的に地味な人間なんだけどね」

 自分を見つけたい、変わりたいと思っていたのは、他でもない雫だ。異世界に来てしまった今でも、時折思う。――こうして毎日を足掻いて、自分はどんな自分になるのだろうかと。

 雫は苦笑してテノアを見た。

「頑張ってても頑張ってなくてもさ、誰かは何か言ってくるんだ。だから、適度に聞いて、適度に聞き流せばいいよ。その人は自分じゃないんだから」

 よくも悪くも、自分の道を決めるのは自分だ。だから、人の言葉に必要以上に折られないようにしなければならない。雫自身、姉妹と自分を比べるよそからの言葉に散々悩んできたのだ。

 それでも――振り返ってみれば、家族である姉と妹自身の言葉は、いつでも雫を支えるものだった。その記憶が、眼差しが、異世界にあっても雫の背を押してくれるのだ。

 テノアの母親も、それはきっと同じだろう。

 雫は少年を見つめる。

「お母さんは、テノアのこと何て言ってた?」

「…………」

「あの書き付け読んだ? 男の子が何かを探す話らしいけど。料理を探すんだっけ?」

「……隠された泉だよ。その水は珍しい薬になるから、高く売れるんだ」

「ああ、じゃあそれを見つけたから男の子は家に帰ったの?」

「違うよ。お客さんちゃんと読んでないだろ。――泉は見つけた。でも主人公は、泉に映った家族の姿を見て……家に帰るんだ」


 少年が語ったのは、どこか「青い鳥」にも似ている話だ。

 家族の中で、一番何も出来ないと思っている少年が、ある日家族を見返すために、森の中へ隠された泉を探しに行く。少年はその過程で穴の中に潜ったり、猫と出会ったりの冒険をし、ついに目的の泉を見つける。

 だがその泉を覗きこんだ少年は、水面に浮かび上がった家族の姿を見て、何が自分にとって本当に大切なのかを知るのだ。

 そして一目散に家に駆けていく。そんな話だ。


 語り終わったセノアは、傷ついた目を伏せる。

 それは物語と違って、少年の大事な家族の一人が既に喪われてしまっているからだろう。

 雫は遠い己の家族を思い出し、眉を曇らせた。今頃、皆がどんな思いで自分を探しているか、容易に想像できるだけに胸が痛む。姉のやつれきった顔と、妹の気丈に振る舞う姿が脳裏に浮かんで、雫は無意識のうちに胸を押さえた。

 ――本当に大切なもの。

 その重みを、失って知る少年を雫は見つめる。

 自らの苦味を飲みこんで、彼女は微笑んだ。

「お母さんは、テノアの為にそれを書いたんじゃないかな」

「おれは、物語の主人公なんかじゃないよ」

「そうかな」

「そうだよ。大体、おれのために書いたんだとしたって、そんなの子供だましだろ。おれが何の役にも立てない……ガキだから」

 悔しさが滲む声。

 それは母親の不在を悲しみ、自分の無力さを嘆く声だ。変わろうと、頑張ろうと足掻いて、だがそれが空回りに思えて仕方ないのだろう。少年の肩は僅かに震えている。

 雫は深く息を吸って、言った。

「――何の役にも立てないなんてこと、ないんじゃないかな」

 母親が書いた、少年が家族のもとに戻る話。それを単なる童話でなく、料理の書き付けとして残したのは、書き付けが「読み解かなければ困るもの」だからではないのか。

「あのね、エリクが言うには、あのお話は法則表が一緒じゃないと料理の作り方にならないんだって。お母さんは悪戯好きだったって聞いたけど、テノアには何か心当たりあるかな?」

「法則表……?」

「そう。あれを書いた時、お母さんは何か言ってなかった? そこに手がかりがあるかも」

 あれは、少年を主人公にした話だった。

 料理を作る姉にではなく、テノアにそんな話を残したのは、やはり彼に読み解かせるためのものだからだろう。

 雫の問いに、テノアはだが幼い眉を寄せる。

「そんなこと言われても、母さんがおれに話すのはいつも冗談とか悪戯の話ばっかりで……」

 くしゃり、と少年の顔がまた悔しげに歪む。けれど雫は焦らず穏やかに聞き返した。

「どんな悪戯?」

「どんなって……大したことじゃないよ。父さんの服を染め変えたり、地図作って家の中で宝探しやったりさ……いつもおれくらいしか付き合わなかったけど……」

 病弱だった母親。彼女が息子に残した思い出は、温かく楽しいものだったのだろう。だから失われてしまった今、より一層物悲しい。テノアは小さく唇を噛んだ。

「あの書き付けを見せた時も別に――」

 そこでだが、少年は不意に目を瞠る。

「テノア?」

 彼は立ち上がると、そのまま納屋から飛び出していった。あわてて後を追いかける雫を連れて、彼はそのまま宿の一室に駆けこんだ。

 綺麗に整頓されたその部屋は、亡くなった母親のものだ。テノアは小さな箪笥の前に立つと、その上に置かれた鏡に手を伸ばした。

「……忘れてた。あれをおれに見せた時に、母さんは、この泉は、鏡だ』って言ってたんだ。『一番大事なものが映る鏡だ。大切なことだから、よく考えてね』って……」

 家族の姿が映ったという泉。

 そして今、少年の手にある鏡には、彼自身が映されている。

 ――一番大事な、愛する者の姿。

 テノアはじっと鏡の中の自分を見つめると、それを裏返した。鏡の裏板を外す。


 そこには、二枚の紙が入っていた。

 一枚は、単語の置き換えが書かれた法則表。

 そしてもう一枚には――


『よく見つけたね、テノア。ありがとう! ちょっと難しかったかな。でも、テノアなら絶対分かるって思ってたよ! あとは一緒の紙を持って、お話の暗号を解いてみてね。きっとお父さんも姉ちゃんも喜ぶよ!』


「……絶対分かるって無茶だろ……。こんなの、おれが見つけなかったらどうすんだよ……」

 残していく息子に贈る手紙。

 それは家族の中で、一番小さな彼に責任と自信を託していくものだ。父や姉に守られるだけでなく、役に立てるのだという実感。そんなものを、母親はテノアに残したかったのだろう。


『お母さん、もっとずっと一緒にいたかったけど、先に行くことになっちゃってごめんね。でも、大好きなみんながいつも笑顔でいることを祈ってます。今までありがとう。幸せだったよ』



 感情が触れてくるような、温かな言葉。手紙を握るテノアの指が震える。

「……母さん」

 ぽたりと涙が綺麗な文字を濡らした。顔をくしゃくしゃにして泣きだす彼を、雫は黙って見つめる。

「おれも、幸せだったよ……」

 最後の手紙に映るのは、大事な家族の姿だ。

 テノアは目を閉じて小さな嗚咽を上げる。

 喪失を飲みこむための静かな時間。

 長いそれを終え、涙を拭った彼の横顔は――

 以前よりも少しだけ大人びたものに見えたのだった。


 6


 どんどん空いていく皿は、見ているだけで小気味いい。

 小気味がいいが、ぼーっと見ているわけにいかないのは、雫自身がそれを作っているからだ。

 町の外れの広場には、長いテーブルがいくつも置かれて、酒と食事を楽しむ人で賑わっている。その賑わいの外周で、大鍋からスープを取り分けている彼女は、戻ってきたテノアに次の盆を差しだされた。

「どんどん置いていいよ! 配ってくる!」

「了解!」

 彼の母が残したレシピ。この町の水をふんだんに使ってあく抜きをしたスープは、今年も好評だ。去年を知っているらしい客が、包帯を巻いたまま配膳する姉の少女に、笑顔を向ける。

「今年も美味しいね! がんばってね!」

「あ、ありがとうございます!」

 その様を満足して見ていた雫は、人混みの中に目的の人物を見つけて声を上げた。

「あ、町長!」

 びくり、と壮年の男が振り返る。苦い顔の男は、既に会場の盛況ぶりで大体を察しているのだろう。逃げだしたそうな町長に、雫はスープの皿を差し出した。

「ほら、町長! 飲んでみてくださいよ! ほら! 味わわせてやるって約束したじゃないですか! 早くぎゃふんって言ってください!」

「また変なこと言ってるよ、君」

 冷静な言葉をかけてきたのは、後ろで手伝いをしてくれているエリクだ。魔法陣を書いてお湯を沸かしてくれている彼に、雫は真顔で返す。

「いやでも、町長を見返すことがモチベーションの半分だったんで。あの胃にたらふく注ぎこんでやらないと気が済まないというか」

「スープが勿体ないよ。もういないし」

「ええええ!?」

 あわてて振り返ると、確かに人の中を向こうへ逃げていく町長の背中が見える。モチベーションの半分を失って、雫は思わず唸った。

「おのれ……どこまでも追いかけて、その胃に思い知らせてやりましょうか……」

「君、時々根深く怒るよね。見てて面白いけど今回はやめよう」

「……分かりました」

 厚意で保護者をしてくれる青年にそう言われては、これ以上食い下がれない。雫は諦めてスープの取り分けに集中し直した。

「そう言えばエリク、あの書き付け、結構自力で解読できてましたよね。私の世界に来たなら、いい翻訳家になれそうですよ」

「料理の作り方だってのは分かってたから。不自然によく出てくる単語を、使いそうな単語に試しに置き換えていくって感じかな」

「それで解読できるのがすごいですよ。こっちの世界では使わなそうなスキルなのが勿体ないです。あ、昔は共通文字が違ったりとかしないんですか? 私の世界だと象形文字とか色々古代文字があったんですけど」

 期待を込めて尋ねてみると、エリクは虚を突かれた顔になった。数秒の沈黙の後に、彼は思案の表情で返す。

「……そういうのはない、はずだ。共通文字は最初からあの形だったよ」

「残念……。そう言えば昔は口伝だけでしたね」

 がっかりするほどではないが、エリクの能力を生かせないのは勿体ない。青年はまだ何か考えこんでいる様子だったが、雫はそれには気づかず微笑んだ。

「でも、手伝ってくれてありがとうございます。寄り道になっちゃいましたけど……」

「別にいいよ。面白かった」

 あっさりとそう言う青年はいつも通りの真顔だ。「人間にあまり興味がない」と言いながら、だが彼はやはり優しいのだろう。そうでなければ最初から、見ず知らずの雫と旅などしてくれないはずだ。

 大鍋からスープをよそった雫は、空いた器がもうないことに気づいて息をついた。また戻ってきたテノアが盆を上げる。

「みんな美味しいって! まだ作れる?」

「ちょっと待っててもらえれば」

 雫が笑って返すと、テノアは嬉しそうに頷く。

 生き生きと立ち働く少年の姿。

 それこそが彼の母親が見たかったものだろう。探し物の果て、もっとも大事な者の姿を見た少年は、自分の家へと帰っていく。

 雫は器を集めるために駆けていく少年の背中と、それを迎える父娘の姿を眩しそうに見つめた。そこに、姉妹と一緒に笑い合うかつての自分の姿が重なって見える。幸せそうな過去の記憶は、一瞬で今の風景へと溶け消えた。

 雫は胸の痛みを飲みこんで呟く。

「……私も、帰らないとな」

 いつか彼のように、胸を張って家族のもとへと帰れるだろうか。

 まだ雫は、探し物の途中だ。帰る方法を探して、自分を探して歩いている。

 終わりの分からぬ旅路。――けれどその先に、家族がいてくれるなら。

 遠い眼差しを向ける雫に、エリクが言う。

「ちゃんと皆、待っててくれるよ。大丈夫」

 雫の郷愁を見抜いているような青年の言葉に、彼女は驚いて顔を上げた。彼が一緒にいてくれる幸運を噛みしめて、雫は頷く。

「そうですね。エリクもついててくれますし」

「僕は出来ることしか出来ないよ」

「それが充分すぎるくらいです。ありがとうございます」

 感謝を忘れぬよう頭を下げた雫は、大匙を持った右手を高く上げた。

「目標としては家族が健在のうちに帰る感じで! 数十年とか経たないうちに!」

「君も結構気が長いね」

 先の見えぬ旅に希望をかけて、雫は微笑む。

 大陸の転換は、その先に迫っていた。

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