ヘイレルム

上代

異世界ヘイレルム

 雪が降り積もる山々に囲まれた小さな村。


 そこに古びた服を着た小さな二人の女の子が居た。


「私ね、大きくなったら仕立て屋になりたいの」


 金髪の女の子は隣に立つ白髪で耳の尖った褐色の女の子に夢を語りだした。


「どうしたの突然」


 当然、言われた方は疑問を思い口にした。


「だって私達、いつも、いつも同じ服を着ているでしょ?」


「それは仕方がないでしょ聖服せいふくは、お高いんだし、お古を着まわすしか他に方法はないんだから」


「だ か ら ! 自分で作ろうってことなの! そうすれば市販で買うより安く好きな服を着てオシャレが出来るでしょ? それに私ってキルシーっていう絹の精霊の末裔だから仕立て屋さんは向いていると思うの!」


 褐色の女の子は、楽観的だなと思いながらも明るく元気よく話す彼女の言葉を聞き続けた。


「ねぇレミテレーゼ。もし私が大きくなって仕立て屋さんに成れたら、私の作った聖服せいふく着てくれるかな?」


 彼女は緑色の瞳を輝かせ褐色の子…レミテレーゼにそう言った。すると…


「は? 絶対に嫌だし」


 と何の気兼ねもなく拒絶した。


 それから十年ほどの月日が流れ、村の広場で成長した二人が対峙する。


「レミテレーゼ! 今日こそは勝たせて貰うわよ!!」


 金髪の女の子は十年の間で少し背丈が伸びたがそれでもレミテレーゼより小柄で小さかった。


 しかし対照的な所があった。


 まず、服装だがレミテレーゼの方は厚着で服と同じ黒色のコサック帽を被り反対に金髪の女性は、おへそを見せ、腕も肩からわきまで露出させていて薄着であった。

 そして、胸元はレミテレーゼとは真逆で大きく、上着がテントのように張っていた。


「相変わらず、すごい恰好…寒くないの?」


「オシャレはガマンっ!!」


 レミテレーゼが聞くと彼女はそう答えたが本音は違う。彼女たち精霊の系譜に連なる者は精霊の力をそのまま使うと肉体に負荷が掛かる。

 それを聖服せいふくという特殊な服によって力を抑え肉体への負担を減らし

ている。


 しかし、この聖服せいふく。布面積…というよりも肌の露出が減れば減る程、力が抑えられてしまう。だから精霊の力をより出すためには露出を増やさなければならないのである。

 無論、露出した分だけ肉体への負担も大きくなるがそれでも彼女は露出することを選びレミテレーズとの勝負に挑む。


「今度こそ勝利を収め、私の作った聖服せいふくを着て貰うわよ。レミテレーゼ!」


「はいはい」


 お互いの決闘が始まろうとすると村人たちが観戦の為に広場へと集まり賑やかになっていった。


「また、エリスちゃんがレミテレーゼちゃんに勝負を仕掛けたのか」


「もう何度も負けてるのに挫けないねぇ」


「頑張れよー!」


 もはや、この村のある種の風物と化していた戦いに声援が送られるとエリスは笑顔で手を振るうと彼女はズボンに手を掛け下に下ろした。


 その瞬間。一気に男どもの興奮の声が上がると女性陣から後頭部を叩かれる人たちがいた。


 ズボンを下ろしスパッツ姿になるとエリスは勝利を確信した。


〈イケる! これだけ露出しているのなら絶対に勝てる!〉


敗 北 し ま し た 。



 その勝負が終わるとレミテレーゼはお仕置きと称し、彼女の白く美しい肌に指を這わせた。


「ふぁぁ……」


 皮膚から鈍足に流れる刺激に笑いが出てしまいそうになるが羞恥心が思うままの感情を抑え苦悶の快感を作り出し紅潮した表情になっていきレミテレーゼはエリス言った。


「いや~絹の精霊の系譜とあって本当にきめ細やかな上質なシルクのような肌触りだわ」


「ゃめっ!…くすぐったい……ッ!!」


「だったら、もう挑むのは諦めなさい」


「いゃだ!!」


「そう……ま、私は別に良いけど」


 そこからレミテレーゼは彼女の豊満な胸を揉みしだいた。


「だって、こうしてイタズラし放題なんだもん」


「ぃゃあ…っ!!」


 エリスは体に負荷を掛けて戦ったせいで上手く身動きもできずに張りのあるその柔肌をレミテレーズの指に蹂躙され顔を赤くし色のある声と吐息を空気中に白く吐き出すと観客の男たちが大いに盛り上がり言うまでもなく女性からの制裁を受けた。


 その中でエリスは揉みくちゃされることで煽られる赤い感情を処理しきれずに沸騰したヤカンのように湯気を頭から吹き上げ、そして…



爆発した!!



 感情の昂りで精霊の力が暴走したのだ。


 爆心地のレミテーズは何処かに吹き飛ばされ村人も爆発の余波で巻き上げられた雪の下敷きとなったが


「ふー。俺たちじゃ無かったら死んでたぜ」


 村人たちは雪の中から何事もなかったように出てきた。


 異常でありながらも、この村にとっての日常がそうして流れていく…



 一悶着が過ぎると村人たちは巻き上げられた雪山を退かそうと雪かきを始める。

 その中にはさっきまで吹き飛ばされて居なくなっていたハズのレミテレーゼも一緒に作業に参加していた。


「しかし、レミテレーゼ。彼女が作った聖服せいふくくらい着てあげたらどうだ」


 作業をしながら村人が話しかけてきた。


「嫌だよ。エリスって露出の多めな服ばっか好むんだもん」



「へっくしっ!!」


 レミテレーゼが村人たちと話していた頃、エリスは自分の自宅兼仕立て屋工房の一室で暖房にあたりながらくしゃみをした。


「うー…風邪ひいたかなぁ…」


 薄着で外に居たためにそんなことを心配しながら彼女は戦いの敗北を思い出しブツブツと独り言を呟き始めた。


「それにしても容赦ないんだから…そりゃレミテレーゼはイタズラ好きな精霊であるスヴァルタルファの系譜だから仕方がないんけど……あんな…」


 そこまで言って自分にされたお仕置きを思い出し言葉尻を小さくしながら頬を赤くした。


「あーーもう!! ともかく今度こそ勝って私の作った服を着させて見返してやる!!」


 そうやって気合を入れ直して彼女は再戦に燃えた。



――数日後。


「レミテレーゼ! 今日こそは勝たせて貰うわよ!!」


 全く同じ流れでエリスはレミテレーゼに再戦を申し込んだ。


「今日は、ちゃんと服を着てるんだな」


 エリスの格好が普段より露出が少なかったためにレミテレーゼは言った。

 すると彼女は笑いながら服のボタンを外していき一気に上着を脱ぐと一変。黒のマイクロビキニ姿となった。


 コレには観客も男も女も関係なく目を丸くしたり目を逸らしたりと様々な反応が現れ中には「若いわね…」と羨ましがる声すら女性から上がる程であった。対してレミテレーゼは大声を上げて言った。


「アンタ! バカなの!! いくら私に勝ちたいからってそんな恰好する!!?」


「なに大声出してんの。負けるのが怖くなったの?」


「違う! 幼馴染が痴女姿になってて恥ずかしいって言ってんの!!」


「ふん! 何よ! 私に、いっっっっっつも! エッチなことしておいてコレくらいで騒ぐの!!」


「それは、アンタの反応が面白いからしてるのであって…というか違う! そんな布面積が低い服で戦ったら負荷がとんでもないことになる上に暴走する危険すらあるのよ解ってるの⁉」


 聖服せいふくは露出度70%を超えると肉体の負荷が大きくなり暴走の危険が出てくるのだ。今の彼女は70%どころか9割近い露出状態である。そんな危険な状態をレミテレーゼは放置できずに指摘するとエリスは得意げな顔で答えた。


「ふふん。そんな心配はご無用。私の開発した聖服せいふくであれば従来の聖服せいふくより布面積が少なくとも暴走の危険性も肉体への負担も軽減され安全に運用できるわ! 正にこれぞ理想の聖服せいふく!!」


「いや、もはや服の原型留めてない…」


 そうツッコミを入れられてもエリスは気にも留めずに目にも止まらぬ速さで間合いを詰め、蹴りを入れるきた。


 レミテレーゼはそれを防ぐも吹き飛ばされ、観客もエリスの力に素直に驚嘆していた。


「どう、私の聖服せいふくは? スゴイでしょ ちょっとは見直したかしら」


「いや…そりゃ、そんだけ脱いでたら強いのは当然でしょ…」


 そう言い返されるとエリスはふくれっ面になって言った。


「ちがうもん! これだけ露出してても負担が少ないから私はスゴイんだもん!」


「その才能を別の方向に向けて欲しかったよ…例えば露出が少なくても精霊の力を従来以上に引き出せる聖服せいふくとか…」


 そんな事を話しながらも二人の戦いは続いた。


「おやおや、全然。追いついていませんなぁ~」


 ついには煽り始めるエリスに後ろから抱き着かれた。


「いつまでも厚着してて大丈夫なのかな~」


 そう言いながらエリスはレミテレーゼの服のボタンを外し始めた。


「調子に乗んな! バカエリス!!」


 レミテレーゼは体を前に屈め、後ろで抱き着くエリスを振りほどこうとする。

 その結果エリスの脚が浮き、そのまま投げ飛ばされた。


 しかし、その程度 余裕と言った様子で彼女は笑みを浮かべる。


「苦戦していますね。そんなアナタに朗報です。なんと露出が多くても負荷が掛からない聖服せいふくが誕生! 従来より動きやすく! アナタのセクシーさもアップ! 聖服せいふくで厚着するのは昔の話! これからは薄着でオシャレ! そんなエリス仕立て屋工房の聖服せいふくが今なら、なんとなんと無料タダ!【レミテレーゼ限定】」


 そんな調子で彼女は上機嫌にもう一着のマイクロビキニを取り出しレミテレーゼに売り込んだ。


無料タダでもいらねぇえ!!!!」


「フッフッフッ…いつまでそんな強情な事を言っていられるかな? さぁこのまま本気を出して拉致って無理やりでも着せてやろう」


「クソッ! これだから露出狂はタチが悪い!!」


 ついに本気を出そうとエリスが気合を入れ始めた。

 その溢れ出る力で風が吹き荒れるとビキニの紐がチリチリと細くなっていくのが見えた。


「え?」


 おかしいと思いエリスは力を抑えようとしたが思い通りに制御できずに次々と力が溢れていった。


「い、いや!」


 そこから彼女の悲鳴と共に異常事態が発生したことが伝わるとレミテレーゼは精一杯 声を掛けた。


「エリスッ!!」


「嫌ぁ!! 助けてレミテレーゼ!!」


 このままではマズい。暴走によって死んでしまうかもしれない。だが荒れ狂う力の奔流に近づくこともできなかった。


 レミテレーゼは袖を捲り露出を少しでも増やしてこの流れを突っ切ろうともしたがその程度では前に進むことも叶わなかった。


 どうすれば良いか思案していると村人がさっきエリスが見せてきたマイクロビキニ型の聖服せいふくを持ってきた。


「レミテレーゼちゃん。コレを!!」


「イヤ! 絶対に着たくない!!」


「大丈夫。上だけ着てズボンを履いておけば暴走の心配も無いって!」


「そうかも知れないけど…」


「じゃあ! このままスッポンポンになってエリスちゃんが死んじゃってもいいの⁉」


「それは…」


 悩む間にエリスの服(?)の肩紐が一本 切れた。このままでは本当に真っ裸で死んでしまうと思いレミテレーゼはビキニを掴み手を上着の中に納めて聖服せいふくを身に着けると上着を脱いだ。


「わぁ器用」


 目の前で起きた斬新な着替え方に村人は率直な感想を送るとレミテレーゼは彼女の下へと走り出した。


 元々、実力差があったので露出を少し増やしただけでも暴風のような力の流れの中を進むことができた。


 しかし、それでも届かない。


「クッソッ! コレで私まで暴走したらアンタのせいだからねバカエリス!」


 彼女はそう言ってズボンを脱いで薄桃色のレースのあしらわれた可愛らしい下着を見せると一気にかけ進んだ。


 そして、手に持っていた自分の上着をエリスに優しく掛けると暴走が止まりレミテレーゼの腕の中で体を落とした。


「なに笑ってるのよ」


 顔を赤らめながらレミテレーゼは言った。


「えへへ…だってレミテレーゼが初めて私の服を着てくれたんだもん」


「バカエリス…二度と着ないわよ。こんな恥ずかしいもん…」


 そうやって目を逸らす彼女にエリスは身を寄せるように朗らかな笑みを浮かべながら感謝の言葉を贈った。


「助けてくれてありがとう。レミテレーゼ」




――数日後。


「レミテレーゼ! 今日こそは勝たせて貰うわよ!!」


 何事も無かったように今日もエリスはレミテレーゼに勝負を挑む。


「あんたねぇ…学習能力ってものが無いの…」


「失礼な! ちゃんと露出は減らしたもん!」


「マイクロビキニにニーソックス付け足しただけじゃねぇか!! そんなもん余計にエロイわ!!」


 周囲からは「いい…マイクロビキニニーソックス…いい…」とか何かヤバイ感想すら聞こえてくる有様であった。


 当然。彼らはお約束通り女性陣に処されていた。


「今度こそ勝利を収め、私の作った聖服せいふくを着て貰うわよ。レミテレーゼ!」


 そうして異常でありながらも、この村にとっての日常が流れていく…





「こんっの!! バカエリス」


「いやぁーーーーー!!」


 今日も彼女たちの元気な声が雪が降り積もる山々に木霊こだまする…





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ヘイレルム 上代 @RuellyKamihiro

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