第108話 去年とは一味違う遊園地。

廉 「・・・月、柚月!」

柚月「はい!?え?あたし寝てた!?」

廉 「白目向いて寝てた(笑)初めて見たわ。」

大地「写メ撮ったから、神社で拝んでもらうね。」

柚月「心霊写真扱いすんな。」


いつの間に寝てしまっていたのだろう!?暗闇に覆われていた空は、少しだけ明るい空へと切り替わっており、廉の優しい表情に思わずあたしも笑顔になった。


廉 「で?今日の夕方までの予定は?」

大地「予定は無いんだけど・・・高校生らしい事したい!」

柚月「らしい事・・・って、例えば?」

大地「海での花火は制覇したから・・・次は遊園地行きたい!!」

柚月「遊園地・・・」

廉 「俺、無理。」


絶叫系が大の苦手な廉は、当たり前の如く全力拒否。でも、大地君は『どうしても行きたい』と身体をくねらせながら駄々をこねている。


柚月「廉、今回は絶叫系無しでいいから行かない?」

廉 「絶対乗らねーぞ、俺は。」

大地「目的はお化け屋敷なりぃー!」

柚月「えっ!無理!!」

大地「あ、ブスは既にお化け屋敷レベルだから大丈夫。」

柚月「また海に沈められたいの?」


約束。『絶叫系は乗りたい奴だけ乗れ。』このルールのもと、あたし達は全財産を昨日と今日で破産するべく、電車とバスを使い遊園地へと向かった。


廉 「大地。」

大地「何!?」

柚月「ちゃんと座って、恥ずかしい。」


まだ早朝に近い為、電車の中が混雑していないと言えども、幼稚園児が初めて電車に乗った時の座席に両膝をついて窓にかじりつく仕草・・・。

久しぶりにこの光栄を目の当たりに・・・、しかも同級生がしているとなると、他の車両に移りたくなる気持ちをみんなは理解してくれるだろう。


大地「ワクワクするね!!楽しいね!!最高だね!!」

廉 「落ち着け。」

柚月「せっかくだから、楽しもうね!廉。」

廉 「また一緒に観覧車乗りたい。」

大地「大ちゃんも一緒に乗るのっ!!」

柚月「・・・今日は三人で乗ろっか。」


夏休みの遊園地は、カップルや友達の団体は勿論、家族連れの光景で朝から賑やか。

絶叫系が大好きな大地君は、一人でキャピキャピしながら制覇し続け、あたしと廉はソフトクリームを食べながらベンチに座り、大地君のタフさに完敗していた。


大地「あー、楽しかった!!」

廉 「お前の声しか聞こえて来ねぇ。うるさい。」

大地「気持ちいい時は声出さないと相手に伝わらないでしょ!?」

柚月「誰得なの。その意見。」

大地「次はぁー、いよいよお化け屋敷ですぅ。」

廉 「大地、騒ぐなよ。」

大地「大ちゃん、お化け屋敷得意だもん!!」


さすがお化け屋敷。見た目からして不気味さを感じる。

去年、まこ達と来た時は廉が憔悴しきっていてお化け屋敷どころではなかった。


柚月「人間と分かっていても怖いよね。」

廉 「俺のシャツ、掴んでろよ。」

柚月「うん。ありがとう。」

大地「大ちゃんも廉君の握る!!」

廉 「・・・お前いい加減にしろ。」


いざ、入館。あたしは怖さのあまり、目を瞑りながら廉のシャツを掴み、先頭が廉、真ん中があたし、そして後ろに大地君と言うポジションでお化け屋敷へと入った。

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