第89話 実習生

まこ「教室に戻らなきゃ、またね、柚月。」

柚月「うん。またね。」

大地「廉君、二時間目は体育だよ!一緒に着替えようっ!?」

廉 「えー。」

大地「じゃぁ、一緒にストレッチしようね!!」

廉 「えー。」

柚月「すんごい雑な返事(笑)」


一時間目が終わり、大地君の待ちに待った二時間目、体育の授業。

まこがご機嫌だった理由が、ようやく理解出来た。


大地「廉君のジャージ、いい匂いーっ!!」

廉 「何でお前は授業が始まる前から汗だくなんだよ。」

柚月「無駄に新陳代謝が活発なんじゃない?」

大地「うわ。下ネタ発言キモい。」

柚月「は?新陳代謝・・・」

廉 「下ネタに聞こえるお前がキモいわ。」


チャイムが鳴り、体育の授業が始まる。

『授業の前に、実習生を紹介します。』

先生の後方から姿を現した実習生に、あたしと廉は度肝を抜かれた。


光希「皆さん、初めまして。中山光希と言います。三週間という短い期間ではありますが、どうぞ宜しくお願い致します。」

柚月「・・・光希さんだ。」

廉 「陣内の機嫌の良さはこれか。」


『実は桂太先生の息子』

これは、あたし達三人の秘密。

そして、「まこの恋人」であるというい事も、決して公になってはならない。


廉 「光希君、ちゃんと約束通り頑張ってんだな。」

柚月「そうだね・・・。譲さんの想いをちゃんと引き継いでいるんだね。」


あたし達に出来る事は、実習期間が終えた時、

『最高の実習生だった』という太鼓判を押してあげる事位しか出来ない。


最愛なる親友の死を心に刻み、夢を追い続け。ここまで辿り着いた光希さんは、きっと計り知れない努力をして来たのだろうと素直に思えた。


光希「では、今から準備運動をします。前後でペアになって下さい!」

大地「えー?前後?別にそこまで指示出さなくてもよくない?」

光希「お?中に威勢の良い生徒がいるなぁ。誰かペアになりたい人がいるの?」

大地「廉君!!ねー、廉君!!」

光希「・・・へ?」

柚月「ぷっ(笑)」

廉 「何でもいいから早く進めて下さい・・・。」


光希さんの粋な計らいで、廉は特別だいち君とストレッチを行い、その光景を見ている光希さんは、笑いを堪えるのに必死な様子。


大地「廉君、僕の身体を優しく受け止めてぇ!」

廉 「・・・重い。」

大地「あっ、ちょっとそこはダメ!!」

光希「これは・・・面白すぎる(笑)」

柚月「光希さん、頑張って耐えて下さい(笑)」


廉のスマートな体型に対し、全体的に大きい大地君とのストレッチは、他のクラスメイトですら手を止めて笑ってしまう光景。


廉 「光希先生・・・、助けて。押し潰される・・・。」

大地「廉君、気持ちいい!!もっとして!!」

光希「あははっ・・・ヤバイ。今はダメだ。」

柚月「夢に出てきそう・・・。」


廉を哀れに思ったのか、それとも笑いを堪えきれなくなってしまったのか。

光希さんは早めに準備運動を切り上げ、次のステージへと進んだ。




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