第81話 譲の願い
光希「光希へ・・・。」
光希へ。
光希、お前がこの手紙を手にしたという事は、柚月ちゃんがちゃんと約束を守ってくれたんだね。
『一緒に教師を目指そう』
約束、守れなくてごめん。
そして、今まで沢山面倒ばかりかけて本当に悪かった。
病気が発覚してすぐの頃、俺は明日が見えなくなり、何も信じる事が出来ずに病に負けてしまっていた。
「何で俺が」って悔やんでは落ち込んでばかりの俺に、光希、お前が言ってくれた言葉覚えてるか?
『人は何度も生まれ変わって行くんだ。』
『くじけたら、思いっきりくじけてみればいい』
そして。
『俺が何度でも譲を立ち直らせてやるよ』
そう言って励ましてくれたよな。
今思うと、お前ほど教師に向いてる奴はいないって心からそう思ってる。
話は変わるが、まこちゃんにも謝ってて欲しい。
光希との大切な時間を、俺のせいで削らせてしまっていた事、おこがましいかもしれないけれど、今、光希を悲しませてしまった事。
まこちゃん、ごめんね。
これから先、もし光希が悩んだりくじけそうになった時は、まこちゃんが支えてあげて下さい。
ただ側にいるだけでいい。ずっと一緒にいてあげて下さい。
まこちゃんの笑顔で、きっと光希は立ち直れるはずだから。
最後に。
俺から光希に託したい事があります。
どうか、いじめの無い生活を。
どうか、差別のない生活を。
どうか、これ以上自殺を考える人達が増える事の無い生活を。
これから育って行く子供達に『命の大切さ』を教えてあげて下さい。
光希、今まで本当にありがとう。
お前は俺にとって大切な家族でした。
光希「またいつか、出逢える事を願って・・・譲。」
廉 「光希君、教師目指してたの?」
光希「そうだよ。親父みたいな教師を目指してる。」
柚月「譲さん、ちゃんとまこの事を考えてたんですね・・・。」
まこ「ずるいよ、譲さん。今更こんな・・・」
光希「あいつらしいよ。優しくて気配りができて。俺からすれば、あいつこそ教師に向いてる奴はいないと思う。」
柚月「それに、譲さんも光希さんを「家族」だと思っていたんですね。」
廉 「光希君、絶対教師になれよ。譲さんのためにも、絶対。」
光希「必ずなるよ。だから、落ち込んでる暇はないんだよな。・・・なるよ、絶対に。」
『俺の心の中にいる、譲と一緒に』
いじめられている生徒を知っていながら、己の立場を守る為に見て見ぬふりをする教師。
SOSのサインを面倒だと耳を塞ぎ、生徒の命を救おうとしない教師。
生徒の親とのトラブルを避けるのに必死で、生徒の言いなりになってしまう教師。
この先、「教師」ではなく「生徒」が自分らしく過ごせる環境を、光希さんなら必ず作って行けるはず。
桂太先生に様に・・・。
光希「そうだ。柚月ちゃんも譲から手紙をもらってたんだよね?」
柚月「はい。」
光希「じゃぁ、俺達はリビングに戻るよ。」
柚月「いえ、あたしもみんなに聞いて欲しいです。」
まこ「でも、柚月に宛てた手紙でしょ?」
柚月「うん。でも、この手紙はきっと・・・」
『あたしに宛てた、仲間への手紙』
あたしの中で、譲さんは既に友達から教師に変わっていた。
きっと、あたし宛に綴られている手紙にの内容も、必ず「未来への希望」に繋がる文字が並んでいるはず・・・。
廉 「わかった。」
まこ「聞くよ、ちゃんと。」
光希「ありがとう、柚月ちゃん。」
『柚月ちゃんへ。』
岩間譲先生。
最後の授業が始まった。
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