第14話 想い
柚月「ごめんね、廉。やっぱり少し考える時間が欲しいの。」
廉 「考えて答えが出んの?」
柚月「中途半端な気持ちで付き合いたく無いの。こんな経験初めてだし、自分としっかり向き合いたいの。」
廉 「・・・そっか。だよな、ごめん。俺も桂君にお前が取られるんじゃ無いかと思って焦ってたかもしれない。」
柚月「廉が謝る事ないよ。ちゃんと考えて、答えが出たら今度はあたしから告白させて?」
廉 「分かった。」
廉への想い。桂太先生への想い。
二人の想いを天秤に掛けたとしたら、どう動くのだろう?
廉に対する気持ちと、桂太先生に対する気持ちは何が違うのだろう?
あたしの課題は、そこからなのかもしれない。
廉 「もうこんな時間か。送るよ。」
柚月「え?今何時?」
廉 「六時。それとも、まだい・・・」
「へっきしょい!!」
廉の部屋の外から、おっさんくさい不気味な音が聞こえて来た。
柚月「え!?何!?」
廉 「・・・いつからいたんだよ。」
結芽「辺りがピンク色に染まり出した頃から?かなかな?」
廉「どんな頃だよ!!ふざけんなっ!」
顔どころか、耳まで真っ赤な廉。
それに比べて、結芽さんはというと、満面の笑みでうんうんと頷きながらあたしに乾いた制服を差し出してくれた。
結芽「あー、安心したわ。」
廉 「何がだよ!?」
結芽「あんた、お父さんがいなくってからまるで別人みたいに変わったじゃない?笑わないし、素っ気無いし。冷酷人間みたいに。」
柚月(結芽さんも、ちゃんと気付いてたんだ・・・。)
結芽「でも、良かった。あんたにも人間らしい感情残ってたのね。」
廉 「人を人形扱いすんな。余計なお世話だっつーの。」
結芽「あんたの恋の相手が男だろうが女だろうが、母は応援する!・・・でも、やっぱり相手は柚月ちゃんだったのねぇ(笑)」
柚月「あ、あの結芽さん。まだ決まった訳じゃ・・・。」
廉 「こいつ、他に好きな奴いるもん。」
結芽「えっ、そうなの!?あんた片想い?ウケるんだけどっ!今日はお祝いだわ。」
世代を超えてはしゃぎまくる自分の母親に呆れたのか、廉は溜息をつきながらあたしの手を取り、立ち上がらせた。
廉 「トイレで着替えて来いよ。送るから。」
柚月「あ、うん。でも、一人でも帰れるよ?」
廉 「家に居たくねぇんだよ。察しろ。」
結芽「ねぇ、廉。」
廉 「何だよ?」
結芽「この雑誌、写メってもいい?えーっと、抜いて抜いて・・・」
廉 「勝手に引き出し漁んじゃねぇよっ!!」
大人の本を舐め回す様に眺める結芽さんの横を通り、あたしは急いで制服に着替えた。そして、廉の部屋に戻ろうとした時、部屋の前に結芽さんが立っていた。
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