第7話 捕獲
柚月「これからどうしよう・・・。家に帰ったらお母さんに早退したのバレちゃうしな・・・。」
桂太「あれ?古川さんじゃない?何してるの?」
靴に履き替え、学校の昇降口を出ようとした時、背後からあたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
柚月「桂太先生。」
桂太「サボり?」
柚月「サボりというか、逃げたというか・・・。」
桂太「あ、分かっちゃった。」
桂太先生は、相変わらず俯いたままのあたしに笑いながらこう言った。
桂太「廉と喧嘩したんでしょ(笑)
柚月「えっ?」
ズバリ的中。まるで心を見透かされいる様に感じ、驚いたあたしは思わず顔を上げてしまった。
桂太「あのガキ、女の子を泣かせるなんて最低だな。」
柚月「これは、別に泣いてないです。」
桂太「いやいや、完全に泣いてるでしょ」
柚月「さっき、鼻うがいしたら口からじゃなくて目から出てしまって。衝撃映像です。」
桂太「あはははっ!!」
女たるもの、常に鞄の中にはハンカチやティッシュを入れておくべし。
なーんていう概念を持ち合わせていないあたしは、制服の袖で涙を拭った。
桂太「古川さん、ごめんね。俺と廉の言い合いに巻き込んじゃって。」
柚月「大丈夫じゃないけど、気にしないで下さい。」
桂太「ところで、帰るの?教室には戻らないんでしょ?」
柚月「そうだった。どうしよう・・・。」
悩んでいたあたしに、桂太先生はこう言った。
桂太「俺もサボろーっと!!」
柚月「はい?」
桂太「だって、俺基本勉強嫌いだし。あ、
そうだ!裏にある公園に行こうよ!懐かしいなぁ、まだあるよね?公園」
柚月「ありますけど・・・。どうして桂太先生が知ってるんですか?」
桂太「だって、この高校の卒業生だから」
柚月「えっ!?そうなんですか!?」
桂太「流石に知ってる先生はもういないけど、校舎は相変わらずボロだね(笑)」
校舎を見上げ、桂太先生は懐かしそうに校舎全体を見渡した。
きっと色々な思い出が沢山詰まっているのだろう。桂太先生の表情は、どことなく切なそうに見えた。
桂太「古川さん。俺ね、タイムスリップしに来たの。」
柚月「タイムストリップですか?」
桂太「古川さんって、下ネタ好きなの?(笑)とりあえず公園に行ってみよう。人生、勉強なんかよりも大事な事が沢山あるんだからさ。息抜き!」
「俺が高校の頃、よく仲間で行ってたんだ。」
桂太先生は歩きながらそうあたしに教えてくれた。
「親友」と呼び合える唯一の仲間。友達なんて沢山いなくてもいい。
上辺だけの生温い関係なんて必要ない。
必要なのは、ピンチの時に手を差し伸べてくれる人が一人いれば、それは一生の宝になる。
そして、最愛の人も同じ。
運命の相手はどんなに離れていても、いずれ必ず出逢う。ただ、あたし達はその相手に気付いて恋に落ちるか、気付かずに通り過ぎてしまうか。
「古川さんも、もしかしたら出逢っているのかもね。運命の相手に」
桂太先生は空を見上げながらそう呟いた。
そして、公園に到着したあたし達はベンチに腰を下ろし、先生から手渡されたジュースに口をつけた。
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