第百一時限目

「駅着くちょい前にメールよこせ。じゃぁな」






電話を切り、駅は目前




すると、最終と思われる電車がホームに入って来た。





「の…っ、乗れるか…っ」





あたしは猛ダッシュで駅内に入り、切符を買ってコケながらも何とか最終電車に間に合う事が出来た。






《乗れたよ》




一応拓にメールを入れて見る。




《ゲロ吐くなよ(笑)》



「コノヤロ~」








電車の中はガラガラ。




「あっちゃん…いきなり行ったらキレるかな…」




こんな時間から行くなんて非常識なのは百も承知。




でも、どうしても今すぐ話しがしたかった。





もうすぐ、電車は拓のいる駅へと停まる。



(拓にメールしなきゃ)




《もうすぐ着くよ》




《俺、もう駅にいるんだもんね》





「早っ!!」





そうしてる間に、電車はゆっくりとブレーキを掛け始める。





(拓に…会えるんだ…)




こんな状況の中でも、あたしの胸は素直に高鳴る




電車が停まり、あたしは掛け足で拓の元へと向かった。





「拓っ!」




改札口の横でキャップを深く被り、壁にもたれ掛かっていた拓を発見。




「おっす」




「何だか迷惑掛けてごめん…」




「別に?こんな夜中に女1人で歩くの不用心だしな」




話しをしながら駅の外へ出て、拓の自転車が置いてある所まで向かう。




「ほんで?こんな夜遅くに何故敦子先輩?」



「…まだ言えない」




「お前はどうして自分から事を荒立て様とすんだよ?」




「別にそんなつもりじゃないよ…ただちょっと話しがしたくて…」



拓が呆れた様にため息をつき、タバコに火を付けた。





「ま、とりあえず後ろ乗って。マッハでこげば30分位で着くから」



「結構遠いんだね」




「隣町との中間辺りにあっからな。敦子先輩には連絡したんだろ?」




「……」




「…マジかよ~」




拓がへなへなとハンドルに顔を伏せた。




「だって、あっちゃんに言ったら絶対会ってくれなさそうだったんだもん」




「お前メチャクチャ過ぎるって…」




駅の時計に目をやると、時刻は0時を過ぎている。




「先輩寝てたらどーすんの?」




「帰る」




「どうやって?」




「…歩いて」




「お前の短けー足で帰ったらどん位かかっと思ってんだよっ!!」




拓に急に怒鳴られ、自転車の後ろにまたがっていたあたしはビクついてしまった。





「帰れ」




「えっ」




「家までチャリで送ってやるから」




「それはダメっ」




「明日学校で話せばいーだろ?」




学校なんかじゃ落ち着いて話が出来ない。




ましてや『妊娠』なんて言葉が誰かの耳に入って変に噂が広がったりでもしたら…





「あっちゃんに電話してみる」




「お前頑固だな」




「寝てたら諦めるから!」



敦子先輩は結構夜更かしタイプ




仲良かった頃は、夜中だろうが普通にメールや電話が来ていた。





(起きてます様に…)




あたしはリダイヤルから敦子先輩の番号を探し、通話ボタンを押した。





コール音が5回、6回と鳴り続く。




「やっぱ寝てんじゃねーの?」




「いや、絶対起きてるはず」




そして8回目のコール音の時、





「何?」




かなり面倒くさい雰囲気を、たっぷりとかもしだした声で敦子先輩が電話に出た。





「お、起きてた?」




「寝てたら電話に出れなくない?」




「あ、だよね…」





案の定、初っぱなから敦子先輩のペースに追い込まれるあたし。




(結芽っ、しっかりしろっ!)




「あのっ、話があるんだけどっ!」




「何、急に?何か因縁でも付けたい訳?」




「違う!あ、あの~…今からあっちゃん家まで行ってもいい?」




「はぁ!?今から?何考えてんのあんた!」






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