第百二時限目
言われて当たり前の返事。
「どうしてもあっちゃんと話がしたくて…もう途中まで来てるの」
「ちょ、ちょっとっ!!こんな夜中に!?」
「迷惑なのは分かってるんだけど、でもどうしても…」
「あんたバカじゃないの!?」
本当、あたしってバカ。
拓を困らせ、敦子先輩に迷惑を掛け…やってる事が幼稚園並み。
「…ごめんなさい」
「ったく…」
敦子先輩が電話越しでため息をついたのが分かる。
(今回はへこたれないつもりだったのになぁ…)
時刻はもうすぐ夜中の1時。
(出直そう…拓にもこれ以上迷惑掛けらんない)
「今日はおとなしく帰ります…」
「帰るってどーやって帰んの?」
「歩いて帰る」
「本気で言ってんの!?」
「別に寒くないし、車通り多い道歩けば怖くないし…」
「……」
敦子先輩の反応が無い。
(あれ…?もしかして寝ちゃったのかな…)
「もしもし?あっちゃん?」
「……」
電話を切るにも切れず、横目で少し離れた場所にいる拓を見ると、拓も誰かと電話をしていた。
(どうしよ…切っていいかな)
「あっちゃーん…?」
「……」
「ダメだこりゃ」
あたしはとりあえず
1度電話を切り、後でメールを送る事にした。
「さてと…」
あたしは携帯をバックの中にしまい、拓の元へと歩く。
「お待たせっ」
「あ、はいはい了解っす。あ、結芽来たんで、じゃぁ…」
拓が電話を切り、大きく背伸びをした。
「誰?」
「ん?敦子先輩」
「敦子先輩か…」
「うん」
「…え゛っ!?あっちゃん!?」
予想外の相手に、あたしは思わず大声を出してしまった。
「お前声デカい」
「え?は?だっておかしくない?」
「何で?」
「何でって…だってあたしもあっちゃんと電話してたんだよ?」
状況が把握出来ず、パニクるあたしに拓はニヤニヤしながらこう言った。
「敦子先輩からの命令だ」
「命令?」
「そ、絶対命令」
(何だろ…ってか何で拓に言うの?)
「何?命令って…」
すると、拓はとんでもない事を口にした。
「今夜は俺ん家にお泊まりざます」
「…誰が?」
「YOUだよ」
「………あたしっ!?無理無理無理っ!!」
慌てて顔を横に振りまくるあたしに、拓がポケットから何かを取り出す。
「そう興奮すんなって、これあげる」
あたしの左手にギュッと何かを押し込んだ。
「何これ?」
「溶けかけのチョコ」
「いらんわっ!!」
どんな形をしていたのかさえ分からないチョコ。
「食べ物粗末にしちゃダメなんだぞ~」
「じゃ拓食べなよ!」
「あ゛ー、それいつのチョコか分かんないから…」
「うっわ、あんた最低っ!!」
拓が『イシシ』と笑い、被っていたキャップをあたしに深く被せた。
「わっ…前見えないじゃん!」
「なぁなぁ」
「何!?」
「明日一緒に学校行こうぜ」
あたしは頭を軽くチョップされる。
「敦子先輩さ、お前の事大嫌いだけどこんな時間に1人で帰すのは心配なんだとさ」
あたしはうつ向いたまま拓の話しを聞く。
「わざわざ家電から俺に電話して来たんだぜ?『結芽に今すぐ電話して』って」
(あっちゃんが…?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます