第九十三時限目
「お前、金いくらある?」
駅に着き、拓があたしの服を探る。
「財布無いもん…全部学校。しかもさっき着替えちゃったから小銭も無いし…」
「お前無一文かよ…ま、俺財布持ってるけどね」
「何処行くつもりなの!?」
「何処行きたい?」
「何処って…だってまだ話の続きが…」
敦子先輩から聞いた話
浮気症の父親ならやりかねない事なのかもしれない
でも…
敦子先輩から聞いただけじゃ100%信じる事が出来ない
拓の口から聞きたい
拓が知ってる事を全部…
「お前さぁ、昔の話聞いてどーすんだよ?」
拓が軽くあたしにデコピンをした。
「痛っ…」
「忘れろ、無理矢理にでも忘れろ。」
「何言ってんの?無理に決まってんじゃん!大変な事したんだよ?家のお父さんが拓ん家壊したんだよっ!?」
まだまだ下校の時間
駅の中に入って行く人の中には、同じクラスの生徒の顔もちらほら見える。
「別に俺は気にしてねーって…」
「拓が気にしなくたって、あたしが気にするっ!」
「じゃぁ、お前も気にすんな」
「絶対無理っ!!」
頑固なあたしに呆れたのか、拓は自分の髪を掻きながら言った。
「お前、泣かないで俺の話聞いてられるか?」
そう言われ、あたしはギュッと下唇を噛んだ。
「…何であたしが泣くのよ…」
「だって君、泣き虫じゃん(笑)」
「別に泣いてないもん…泣いたと見せかけて笑ってんのっ!」
「すげー笑い方だな(笑)俺にも教えろよ」
「うるさいっ!とにかく泣かないから話聞かせろっ!」
きっと声を張り上げて言ってたんだろう
周りの人達の視線が一斉にあたしと拓に集中した。
「お前…恥ずかしいだろ…」
「ご、ごめん…」
「…ったく…ホラ、行くぞ」
「何処に?」
「俺ん家しかねーだろ。」
「え…っ、拓ん家!?」
「嫌なんかよ!?」
「だって…」
ついさっきあんな話を聞いたばっかりで拓の家に行くなんて
そんな度胸、あたしには無い。
「…誰か家にいる?」
「は?」
「だから、誰か家にいるかって…っ!」
ニヤリと笑う拓。
「何だよお前…エロイな(笑)」
「はぁ!?」
「俺今日はちょっと疲れてるから…」
「何言ってんの?」
キョトンとするあたし。
「え!?お前こそ何の話??」
そこで、あたしはやっと拓の言っていた意味を理解した。
「お前の頭ん中はエロイ事しかないのかっ!」
「何言ってんだお前…当たり前だろーが。」
「頬染めてんじゃないわよっ、気持ち悪い…」
「あ、気持ち悪いはさすがに傷付くんですけど…」
拓と一緒にいると本当にこっちまで調子が狂ってしまう。
(黙ってれば男前なのに…)
すると突然、ため息をつくあたしの手を拓が引っ張った。
「冗談だっつーの!家は誰もいねーよ、行くぞ。」
「…本当に?」
「マジだよ。」
「はち合わせとか無いよね?」
「ねーよ。ってかあの家、親父の兄貴ん家だし。」
「……へ?」
あたしは拓が言った事の意味が理解出来ず、立ち止まってしまった。
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