第九十二時限目
あたしが知っている知識と先輩の話を含め、まとめると話はこうなった。
あたしのお父さんとお母さんは元々同じ地元同士での結婚。
初めはアパートを借り、まだ小さい兄貴達と4人で地元を離れお父さんの仕事場がある街で暮らしていた。
ある日、お父さんの福島への転勤が決まり引っ越したと同時にお母さんがあたしを妊娠。
見知らぬ土地での慣れない生活に、お母さんは妊娠中と言う事もあってよくお父さんと些細な事でケンカをする様になった。
お父さんは昔から女にだらしなくて、少しの浮気は見逃してきたらしい。
でも、ある日突然、お父さんがパッタリと家に帰らなくなった
お母さんは、その状況のままあたしを出産。
お父さんに報告したくても、仕事にも顔を出さずに居場所も分からない
そんな時、お父さんからの1通の手紙が届く
中身は離婚届と、1枚の写真
そこにはお父さんに寄り添う女の人が写っていた。
見覚えがある顔の女の人
その人は、お父さんが転勤する前の仕事場で事務をしていた
そう
それが拓のお母さんだった。
「嘘…でしょ?」
「嘘付くならもっといい嘘付くって」
「だって…何であっちゃんが知ってるの?」
「偶然にも拓のお父さんとあたしのお父さん、同じ高校で仲良かったみたいでさ~拓を家に呼んだ時、お父さんに拓を紹介したら教えてくれたの。」
ヘラヘラと敦子先輩が笑う。
「拓……本当なの?」
拓の顔を見ずに、あたしは返事を待った。
「……」
「だってあたしと拓同じ年だよ!?…だったら拓のお母さんは拓をどうしてたの!?」
「……」
拓の誕生日は7月5日。
お母さんに離婚届と写真が送られて来たのが12月の頭
もう拓はとっくに産まれてる
「…やっぱ嘘でしょ?(笑)」
「拓はお父さんに育てられたんだよね~?お母さんが結芽のお父さんと駈け落ちしちゃったから。」
福島に行く前にお母さん達が住んでた場所…
それは、拓が今暮らしている街。
そこでお父さんと拓のお母さんは出会い、2人は『不倫』とゆう恋に落ちてしまった。
あたしのお母さんは結局離婚届にサインをし、まだ小さいあたしと兄貴を連れて自分の親がいるここ…実家へと戻った。
「他に何か聞きたい事、ある~?」
敦子先輩がベットから立ち上がり、あたしの隣へと座る。
「あっちゃんは、あたしが嫌い…?あたしに何をしたいの?」
「キライよりも…ウザイ(笑)…何したいって…」
「噂流したのも、霧島君とあたしをくっつけようとしたのも全部あっちゃんでしょ!?」
「他に誰がいんの?(笑)」
敦子先輩がタバコに火を付ける。
「だから…っ、ダメだってばっ!」
「あ゛~マジウザイ。あんた今どーゆう立場か理解してる?」
あたしを軽蔑の目で見る敦子先輩の表情に、一瞬怯みそうになった。
(あっちゃんは嫌い…でも赤ちゃんに罪はないはず…)
そう思い、タバコを取り上げた時…
「結芽、来い。」
「わ…っ、ちょっと…っ」
拓がいきなりあたしの手を掴んで立ち上がった。
「敦子先輩」
「何よ?」
「あんた程の性悪女、初めて見たわ。…もういいっしょ?これ以上結芽いびんなよ。」
あたしを握る拓の手にギュッと力が込められる。
「結芽、行くぞ。」
「ど、何処に!?」
「2人だけで話せる場所。」
そしてあたしと拓は、敦子先輩とあっくんを部屋に残し、拓に連れられ外へ出た。
「何処行くの?」
「結芽」
「何!?」
「お前はいらない子なんかじゃねーからなっ!」
拓の言葉が嬉しくて
拓の手が温かくて…
「拓…ごめんなさい…」
あたしは泣きながら拓の大きな背中に守られ、駅へと向かった。
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